[資源・新興国通貨3/25~29のポイント&注目通貨] 豪ドル/NZドルは一段と上昇するか!?

著者:八代和也
投稿:2024/03/25 15:07

今週のポイント

19日の日銀金融政策決定会合以降は全般的に円安が進行し、豪ドル/円は14年12月以来、カナダドル/円は08年1月以来の高値をつけました。日銀と他の主要中銀との政策金利には依然として大きな差があり、そのことが市場で引き続き意識されれば、豪ドル/円やNZドル/円などのクロス円は堅調に推移しそうです。

米ドル/円が上昇する場合、鈴木財務相や神田財務官の発言に注目です。神田財務官らが円安(米ドル/円の上昇)をけん制するトーンが強めれば、本邦当局による為替介入(米ドル売り・円買い介入)への警戒感が市場で強まりそうです。その場合には米ドル/円が伸び悩むとともに、クロス円にも影響するかもしれません。

SARB(南アフリカ中銀)の政策会合が27日に開かれます。SARBは23年5月の利上げ以降、前回1月の会合まで4回連続で8.25%に据え置きました。南アフリカの2月CPI(消費者物価指数)は前年比5.6%と、SARBのインフレ目標レンジ(3~6%)に収まったものの、上昇率は1月の5.3%から高まりました。政策金利は今回も据え置かれそうです。市場ではSARBは7-9月期中に利下げを行うとの観測があります。会合後に行われるクガニャゴSARB総裁の会見が、利下げ観測を変化させる内容になれば、南アフリカランドが反応する可能性があります。

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BOM(メキシコ中銀)は21日に政策会合を開き、0.25%の利下げを行うことを決定。政策金利を11.25%から11.00%へと引き下げました。

BOMは声明で、「次回以降の政策会合では、入手可能な情報に基づいて決定を下す」と表明し、先行きの金融政策に関するガイダンス(指針)は示しませんでした。2月の会合時は、「次回(3月)以降の会合では、入手可能な情報次第で政策金利の調整(=利下げ)を検討する」との姿勢でした。

今回の会合では利下げが行われたものの、BOMの政策金利の水準が主要国の中銀と比べて高い状況に大きな変化はありません。メキシコペソは引き続き堅調に推移する可能性があります。

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TCMB(トルコ中銀)は21日に政策会合を開き、サプライズで5.00%の利上げを行うことを決定。政策金利を45.00%から50.00%へと引き上げました。

トルコでは31日に地方選が行われることから、市場ではTCMBは今回の会合で利上げを行うのは困難との見方がありましたが、TCMBは利上げに踏み切りました。TCMBのインフレの抑制に向けての強い決意とともに、TCMBの政府からの独立性が保たれていることを示すものと言えそうです。

TCMBの利上げ発表後、トルコリラは対円や対米ドルでいったん反発しました。ただし、トルコの実質金利(政策金利からCPI上昇率を引いたもの)は依然としてマイナスであり(マイナス17.07%)、そのことに留意する必要はありそうです。

今週の注目通貨ペア(1):<豪ドル/NZドル 予想レンジ:1.08000NZドル~1.10000NZドル>

豪ドル/NZドルは3月21日に一時1.08718NZドルへと上昇し、23年11月20日以来およそ4カ月ぶりの高値をつけました。

足もとの豪ドル/NZドル上昇の主な要因として、RBNZ(NZ中銀)の政策会合やウィリスNZ財務相の発言のほか、豪州の雇用統計やNZのGDPの結果が挙げられます。

RBNZは2月28日の会合で政策金利を5.50%に据え置きました。市場の一部には利上げ観測も浮上していました。また、RBNZは政策金利の見通しを23年11月時点から全般的に引き下げました。ウィリスNZ財務相は3月15日の講演で「今後数年間の(NZの)成長率は、従来の想定よりも大幅に鈍化する可能性がある」と述べました。NZの23年10-12月期GDPは前期比マイナス0.1%と、市場予想(プラス0.1%)に反して2四半期連続でマイナス成長になりました。それらはNZドルにとってマイナスです。

一方で、豪州の2月雇用統計は失業率が3.7%、雇用者数が前月比11.65万人増と、市場予想(4.0%、4.00万人増)よりも強い結果でした(豪ドルにとってプラス)。

今週(3/25- )は、27日に豪州の2月CPI(消費者物価指数)が発表されます。市場ではRBA(豪中銀)は8月に利下げを行うとの見方が有力です(5月と6月の会合については、政策金利の据え置きを予想)。CPIが市場予想の前年比3.5%を上回る結果になれば、利下げ観測が後退するとともに、豪ドル/NZドルは一段と上昇しそうです。

今週の注目通貨ペア(2):<米ドル/カナダドル 予想レンジ:1.34500カナダドル~1.37000カナダドル>

3月19日に発表されたカナダの2月CPIは前年比2.8%と、上昇率は1月の2.9%から鈍化して、23年6月以来8カ月ぶりの低い伸びとなりました。また、BOC(カナダ中銀)がコアインフレ指標として注視する、CPIのトリム平均値は前年比3.2%、加重中央値は同3.1%と、いずれも1月(3.4%と3.3%)から上昇率が鈍化しました。CPIの結果はカナダドルにとってマイナスです。

今週は、29日発表の米国の2月PCE(個人消費支出)デフレーターが材料になりそうです。PCEデフレーターが市場予想を上回る結果になれば、FRBの利下げ観測が後退するとともに、米ドルが堅調に推移して、米ドル/カナダドルには上昇圧力が加わると考えられます。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想