最新テクノロジーで新たな投資体験を提供
・真のグローバル・オンライン証券を目指す
・教育・啓蒙コンテンツ投入し新市場を開拓
・米個人投資家に日本株売買の機会提供も視野
ウィブル・フィナンシャルCEO
アンソニー・デニエー氏
「過去5年で最も成功した証券会社の1社」と呼ばれ、その急成長が話題を集める米ウィブル(Webull)グループのウィブル証券が日本上陸を果たした。2016年に創業し、18年からオンラインビジネスを始めた同社は、米国のリテール(個人投資家向け)で最も人気のあるオンライン取引プラットフォームにも選ばれ、世界でのダウンロード数は3500万を突破している。日本では、4月から米国株の売買をスタートさせ、6月からは日本株、7月からは米国株と同指数のオプション取引を始めた。同証券の戦略と日本上陸の意味を、ウィブル・フィナンシャルCEOのアンソニー・デニエー氏と同証券シンガポールCEOでアジア太平洋地域責任者のバーナード・テオ氏、同証券日本法人の小島和代表取締役社長の3氏に聞いた。(聞き手・岡里英幸)
若い投資家層に教育・啓蒙、コミュニティーを提供
――米国でのウィブル証券の急成長が注目を集めています。その主な特徴を教えてください。
デニエー 我々はモバイルアプリでの証券取引のソリューション提供にフォーカスしており、若い投資家が主な顧客層となっています。若い投資家に対して、教育・啓蒙、投資家コミュニティーを提供し、その知識を高める手伝いをしています。ウィブル証券がサービスを提供する前は、トレーディングプラットフォームは単なるひとつの取引の道具としか捉えられていなかった面があると思います。単純にログインして取引してログアウトしていくものだったのです。我々は、証券取引はもちろんのことユーザーの投資家同士が会話したり、投資のアイデアを共有しあったりすることでお互いが学んで成長する場を提供しています。現在、我々の投資アプリのアクティブユーザーは2000万人でダウンロード数は3500万を超えています。アメリカだけで証券口座の開設数は1000万を超えています。この5年間、我々は投資家に新しい体験を提供し、投資は社会現象となってきました。
専門知識を持った投資家層が対象、顧客の声に耳を傾ける
――投資家向け教育コンテンツやコミュニティーの形成が成長の牽引役となったのでしょうか。
デニエー 投資家の進化に伴って我々も進化してきました。成功した結果、そういうベースができてきたと言えます。我々がビジネスをスタートさせた18年に、米国の全ての証券会社は手数料を取っていました。そこに、我々は手数料ゼロでの取引を始めました。そして、手数料ゼロ以外で我々のところに来てくれるサービスを考えたのです。競合するロビンフッド証券との違いをよく聞かれるのですが、我々は専門知識をもった投資家層を対象としています。我々と違い、ロビンフッドは空売りを認めていませんし、一定の条件を満たさないとレバレッジ取引もできません。IPO銘柄の提供も行っていません。我々はロボットを使ったパッシブトレード向けのロボアドバイザーやポートフォリオをアドバイスするツールも提供しています。我々は、アメリカで最も人気のあるモバイル向けプラットフォームに選ばれていますが、最も得意とするのは顧客の声に耳を傾けることなのです。
シンガポールCEOでアジア太平洋地域責任者のバーナード・テオ氏(右)
1つのアカウントで全ての地域の取引を可能にしたい
――急展開している海外事業についても教えてください。
デニエー ロビンフッドとのもう一つの大きな違いは、我々は真のグローバル企業だということです。現在、証券ライセンスを持つのは8つの国・地域で、14の海外オフィスを構えて事業展開しています。将来的には日本株を米国の投資家にも提供することも行いたいと考えています。例えば、私がアメリカにいてもロンドンや東京、シドニーの取引所にアクセスできるということを目指しています。同じプラットフォーム上で同じアカウントで全ての地域の取引ができるようにしたいと思います。
テオ 海外では日本や香港、シンガポールなどで事業展開しており、例えば昨年12月にオーストラリア、英国は今年6月にスタートさせています。インドネシアは今年、韓国は来年に事業展開していきたいと考えています。海外展開していくうえで最も重要なことは、グローバルで統一的なビジョンを掲げて、整合性を持ってローカライズしていくことだと考えています。
日本は規模が大きく魅力があり無視できない市場
――海外展開をしていくうえで日本進出が持つ意味は何ですか。
小島 日本の市場規模は大きく、魅力がある無視できないマーケットです。我々は、現在8つの国・地域での証券事業を「2プラス1」のストラテジーで展開しています。米国株と中国・香港株の2つを全ての市場で導入し、プラス1として、その国の銘柄を扱うというものです。米国のリテール向けオンライン証券会社で外国株を扱っているところは、我々以外にはいまはありません。将来的には、当社が扱う全ての国・地域の銘柄を全てのユーザーが取引できるようにするようなメッシュ構造にすることを計画しています。その取扱銘柄のなかに日本株がないということは考えられません。
米国株売買で競争力ある手数料導入、API取引も目指す
――そのなかでの日本のウィブル証券の具体的な特徴を教えてください。
小島 現時点では、米国株はETFを含め7000銘柄ほど扱っています。手数料は他社に比べて競争力がある水準に設定しています。米ドルでの取引もできます。また、近い将来、(自動取引ができるような)API取引も導入したいと考えています。米国株と日本株をうまく組み合わせてもらうことで、良いポートフォリオが作れるでしょう。もちろん教育コンテンツや投資家コミュニティーも導入していきます。投資家コミュニティーでは、世界で110万人のユーザーがおり、彼らが述べている意見を直接みることができます。当社では、米国以外では手数料ゼロは導入していません。ただ、それぞれの国のニーズに合わせていく方針であり、将来的には日本でも導入することもあるかもしれません。
テオ 日本にもオンライン証券はたくさんありますが、我々が提供しているような投資体験は提供できていないと思います。我々は若い会社であり、クラウドベースのシステムをネイティブで作っています。我々は最新のテクノロジーを提供できることが強みです。
ベストの商品投入で日本の業界を変えていきたい
――最後に日本市場に対する期待と抱負をお聞かせください。
デニエー 我々が参入した5年前には、米国の個人投資家の市場はもう成熟し切っていて、これ以上は大きくならないと言われていました。しかし、新しい試みを提供することで関心が高まり、多くの人々が投資の世界に入ってきました。投資の体験が違ったものになれば、そこに関心を持って入ってくる人はたくさんいるのです。同じことは日本でも起きると思います。投資とは楽しいものなのです。投資を大変な作業だ、と考えないでほしいのです。我々が、これまでの経験を経て作り上げてきたベストの商品を投入することで日本の業界を変えていきたいと考えています。
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