テクニカル・リバウンド、改めて売り直される

著者:黒岩泰
投稿:2015/03/30 19:26

情報はオブラートに包まれており・・・

 本日の日経平均は125.77円高の19411.40円で取引を終了した。朝方はもみ合いスタートとなったものの、その後は徐々に上昇幅を拡大させる動き。後場に入ってからやや伸び悩んだが、高値圏で取引を終了した。

 日経平均の日足チャートでは短い上ひげ・下ひげをつけた陽線が出現。前日のローソク足との組み合わせでは「強気のはらみ足」となり、短期的な底入れの可能性を示唆している。

 しかし、現時点では明確な底入れのサインは出ておらず、弱気相場は継続していると認識。先週末の下落に対する単なる「テクニカル・リバウンド」という認識であり、明日以降、改めて売り直される可能性が高いと考える。日経平均は先週末から弱気相場へと突入しており、いったんは下値を探る動き。これが本格的な下落に発展するかどうか分からないが、投資家はとりあえず下方向を見ておくべきであろう。

 そのようななか、ネット上で話題になっているのが、先週末の報道ステーションでの元官僚・古賀茂明氏とキャスター古舘伊知郎氏のバトルである。このなかで古賀氏は自身の降板の理由を「官邸からの圧力」とし、「マスコミは権力に屈するべきではない」との持論を展開した。具体的に「菅官房長官から圧力があった」と名指しし、それらに関して古舘氏が発言を遮る場面もあった。結果的に「日本のマスコミは政府の支配下にある」という事実を露呈しており、多くの視聴者はそのことに気づいたことだろう。

 この事件(あえて事件と呼ばせていただく)は、我々投資家にとって決して無関係ではない。なぜならば、我々が利用している“投資情報”のなかには、このような大手マスコミを通じて発せられているものが多いからだ。つまり、我々に届く一般的なニュースは、政府の検閲を通ったものであり、いわば「大本営発表」みたいなもの。その情報はオブラートに包まれており、真実を知らないまま、我々は過ごしているかもしれないからだ。

 たとえば、先月12日の経済財政諮問会議での出来事。日銀の黒田総裁が突然挙手し、こう発言した。「これから話すことはオフレコにしてくれ」と・・・。

 内容は、「バーゼル委員会で国債をリスク資産とみなす議論が始まっており、銀行が国債を大量に売却する恐れがある」というもの。日銀総裁自身が国債暴落リスクを懸念しているという話だ。

 もちろんこんなのが公になれば、日銀総裁が国債暴落の引き金を引いてしまうかもしれない。だから「オフレコ」としたのであり、これが実態なのである。国債を買い支えている日銀が、国債暴落への危機感を、自らあらわにしたということであり、いかに今、行われている“量的緩和”が危険なものかということを露呈しているのである。

 これまで日銀はいわゆる「お上」であり、「絶対的な権力」であった。しかし、日銀の発行する「円」の裏側が脆弱な「国債」ということになれば、「円」そのもの、場合によっては「日銀の信頼性」自体が揺らぐことになる。同時に国債を大量保有している銀行の裏側にあるのは、大量の庶民の預金である。本当に国債がデフォルト・リスクに晒されたとき、真っ先に「回収対象」となるのは預金であることは間違いない。「ペイオフ」の名のもとに、一般預金者の資産が消滅することになるのだ。そういった「隠れたリスク」を投資家は常に感じていなければならない。「日銀が買うから大丈夫」「GPIFが買っているから上がる」という話ではなく、大局観をもって相場と対峙しなければならないのだ。
黒岩泰
株式アナリスト
配信元: 達人の予想