第1回TV討論会ではクリントン候補が優勢

著者:川島寛貴
投稿:2016/09/27 13:23

視聴者数は1億人

2016年のメインイベントであるアメリカの大統領選挙が、11月6日に予定されています。どちらが大統領になるかで、株式・為替市場が大きく動くことは必須。
世界中のトレーダーとアルゴリズムが結果を見守ることとなります。

さて、投票の前哨戦であるテレビ討論会が、日本時間の27日の午前中に行われました。全米の有権者が注目するこの番組は、過去に大きく支持率を逆転させた候補もおり、非常に重要となります。
報道によると、なんと1億人が視聴するともいわれており、浮遊票が20%あるといわれる票がどちらに流れるかを決めることとなりそうです。

為替相場はドル高に

さて、最初のTV討論会ではヒラリー氏が優勢となりました。
CNNの調査では、同氏が3/2の勝利を収めたと報じています。

ドル円は朝方の下げを帳消しにし、100円台後半まで上昇しました。
他の通貨を見てみると、ユーロドルの下げは僅かにとどまり、オセアニア通貨は上昇。このことから、ドル高というより円安&リスクオンにみえます。
100円割れを前に様々なオプションやオーダーが入り乱れており、タイミング的にもこれを正確に判断することは困難。

TV討論会を材料にドル高に振れたのかどうかは定かではないのですが、重要なことは『ヒラリー氏が優勢となった時にドル高に動いた』という事実。
このことから、今後はヒラリー氏が優勢=ドル高。トランプ氏が優勢=ドル安という図式が成立しそうです。

あと2回あるTV討論会をより理解するために、両候補の政策を押さえておきましょう!

■金融政策

トランプ氏は『低金利政策を重視する』と経営者らしい発言をしており、当然これはドル安材料。
以前より、イエレン議長に2期目はないとハッキリ言及していることでも有名です。

また、為替政策でも日本の円安を批判しており、中国は既に為替操作国に認定すると発言。仮に為替介入を行えば、即刻避難してくることは間違いなさそうです。

一方、ヒラリー氏も日本の為替介入には否定的。
オバマ大統領同様、ウォールストリートに厳しい為、金融機関はより厳しい状況に迫られる可能性があります。
また、同氏と親しいブレイナードFRB理事の財務長官任命が有力視され、同氏はハト派の為にドル安要因となります。

■通商政策

トランプ氏はTPPを激しく非難しており、関税を上げるとまで主張しています。討論でもクリントン元大統領が署名した北米自由貿易協定を「自由貿易を推進してきた結果、雇用が失われた」と酷評しヒラリー氏を攻撃しました。

また、TPPで大きな恩恵を受けるとされるニュージーランドドルの下落にも繋がるでしょう。今回、ヒラリー氏が優勢となってオセアニア通貨が上昇したのは、この影響があるのかもしれません。

クリントン氏もトランプ氏ほどではないですが、TPPには慎重な姿勢を見せています。

結果、日本の自動車産業など輸出株の下落に繋がりそうです。ただ、輸出企業のレパトリエーション(利益の本国送還)が減少すると、ドル売り円買いが減少するので、ドル円相場は若干の円安要因でしょうか。

※海外で稼いだ利益を本国に還流すること、レパトリとも。

■財政政策

トランプ氏は1兆ドル規模のインフラ投資を行うとされており、これは米国経済の活性化に繋がります。また、米国企業のレパトリに前向きとの見解があり、これは他通貨売りドル高要因。

しかし、同候補が勝利すると米国経済は1兆ドルの損失となるとの試算もあり、まだ未知数の部分が大きいようです。

クリントン氏は2750億ドルのインフラ投資とトランプ氏より規模が3分の1以下。
さらに、この財源は富裕層や投資家に増税をするとされていることから、米国株の頭打ちに繋がりかねません。

政策では両候補ともにドル安

これらの政策を見てみると、TV討論会後の為替動向は抜きにしてみると、両候補のどちらが当選したとしてもドル安要因となりそうです。

ただ、そもそも大統領選挙の年というだけで米ドル安が進んだことも否めず、毎回大統領選挙の年末は反動からかドル高になり易い傾向があります。

これらを踏まえてざっくりと今後の見通しを立ててみると、両候補の当選が決まった週にドル安に振れた後は、12月の利上げを織り込みにドル高へ転換。
利上げがなされると、事実売りで再びドル安に転じるのではないでしょうか。


ヒラリー候補が不利と予想されていたTV討論会で予想外の大勝となったことで、ドル円は結局100円が底になるのでしょうか。
まずは金、月曜日と軟調な米国市場が、今夜がどういった反応を見せるのか注目となります。
川島寛貴
株式会社IEYASU 代表取締役
配信元: 達人の予想