イエレンFRB議長のジャクソンホールでの発言から9月相場の要点整理

著者:木村佳子
投稿:2016/08/27 13:03

9月FOMCで利上げがあるかどうか

アメリカの金融政策の動向は為替市場に大きな影響を与えます。
今、意識されているのはアメリカが金利を上げるのかどうかです。
仮に上げれば、「強いドル」、「米国債への投資の魅力」が高まる結果、他の通貨は弱くなり、ドル高円安という流れになります。
日本の株式市場の代表的な株価指数は日経平均株価ですが、構成比率上、「円安好感度」が高くなっているため、ドル高円安が実現すると、円安効果による上昇場面もあるかもしれません(ただし、経済成長という観点からその裏打ちのない状態で円安効果だけでは株高の継続性には慎重な判断が必要でしょう)。

足元の通貨水準はドル安円高。
世界市場で資金運用をしている様々な投資資金から俯瞰すると、目下、外国人投資家は日本株式を売り越しています。仮にそれを運用者がドル転換するならば、目下のドル安円高で十分、為替差益を得られているので、ここで金融政策によってドル高方向にもっていかれるとドル転時の為替差益が目減りし、歓迎できないでしょう。

アメリカの主要産業の一つに金融ビジネスがあり、イエレンFRB議長にとっても国内主要産業の立場を意識せざるを得ないので、できるだけ金利引き上げは伸ばしたいというコンセンサスを無視できないと思います。

外国人投資家にとって円安時は高いドルで日本株式をより安く買いたいわけで、今までの海外投資家の行動パターンから推定すれば、日本株式がより一層調整して、お買い得になったときに強いドル、高いドルで安い円資産を仕入れたいので、それには為替水準はもう少しドル安円高が続き、差益を得つつ、円高によって日本株式がさらに調整したほうが都合がいいわけです。

この観点から見ると株安、円高はもう少し続行する可能性があるのではないでしょうか。

しかし、これまでFRBが政策目標としてきた失業率の改善などの米国経済指標は改善しているため、「金利引き上げは考えていない」とも言えません。
そこで、「金利引き上げの機運は高まっている」という言い方になるのだろうと考えられます。


米国メディアは以下のような記事を発信しています。以下概要。
・26日のジャクソンホール(米ワイオミング州)米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長の講演について
・後数週間もしくは数カ月内の利上げに確信を強めていることを示唆。
・「フェデラルファンド(FF)金利引き上げの論拠はここ数カ月で補強されたと思う」と述べた点に注目。
・9月20・21日に開かれる連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ可能性がある
・今後数週間で経済指標が期待外れとなれば利上げを回避する余地もある。
・米労働省が9月2日に発表する雇用統計で就業者数が着実に増えるかどうか次第である。
・FRBが9月の利上げを見送った場合、年内に残るFOMCは2回で、11月の米大統領選直前か12月。
・仮に9月の利上げがなければこれら2回の会合のいずれかで利上げする見込みを示唆しているとみられる。

よって9月2日の米国雇用統計に注目ですね。

もし、FRBで利上げが実施された場合を意識して、現在は米国株式市場は調整しています。
金利引き上げは代表的な流動性マーケットである株式市場にはマイナスだからです。

金利引き上げが見送られた場合でも同時期に開催される日銀金融政策決定会合での日本の金融緩和策が増額されるかどうか、増額された場合は現在の地方銀行の苦境に影響し、日本市場にとってはネガテイブに判断される可能性があります。


●用語説明
【FOMC】Federal Open Market Committee
連邦公開市場委員会。アメリカの中央銀行の役割を果たすFRB(連邦準備制度理事会)の理事7名、地区ごとの連邦準備銀行総裁5名で構成されているアメリカの金融政策を決定する最高意思決定機関。米国内でのドル供給の大枠を決めることによって、公開市場操作に重要な役割を果たす
【FRB】Federal Reserve Board
米国の連邦準備制度理事会。大統領が任命する7人の理事で構成される。うち一人が議長として組織を統括する。中央銀行として公定歩合・FFレートの変更などを行う。
配信元: 達人の予想

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