「フライング含め乱高下、弱気形状を維持」

著者:黒岩泰
投稿:2016/07/31 12:02

「都知事選の影響は限定的か」

 金曜日の日経平均は92.43円高の16569.27円で取引を終了した。注目の日銀金融政策決定会合は、「ETFの増額」に留まり、株価は乱高下。結局、引けにかけては買われ、プラス圏を維持した。

 日経平均の日足チャートでは、上下に長いひげをつけた陽線が出現。強弱感が対立していることを示唆しており、かなり方向感に乏しい。押し目買い、戻り売りが出やすく、株価はこの付近でのレンジ相場になりやすい。

 それでも前回の窓上限(16612.33円)を上回ることができなかったことから、チャートの弱気形状を継続。トータルでは戻り売りを浴びやすいと判断したい。基本的には下方の窓(15816.67円-15956.91円)を目指す相場であり、短期的には750円程度の下落余地がある。やや売り妙味が高まっており、ここは売りで対処しなければならない。

 金曜日の東京株式相場は大荒れであった。12時44分の政策発表を前に株価は乱高下。フライング気味で動く場面があった。12時16分には日経平均先物が一時16000円割れとなる場面もあり、「すわっ、現状維持か」との見方が急浮上した。
しかし、その時点では何も発表されておらず、恐らく高頻度取引(HFT)のアルゴが勝手に走ったのであろう。リスクを恐れた投資家が多かったことで、先物の板はスカスカ。株価が乱高下しやすかったことも、ひとつの要因になった。

 日銀の今回の金融政策は、正直「手詰まり感」を感じざるを得ない。ETFの買い付け額を年間3.3兆円から6兆円へ増額。あまりにも芸がないからだ。

 事前の予想では「50年国債の導入」「ヘリコプタ―マネー」などの観測が上がっていただけに、市場の期待は一気に剥落。日経平均の下落幅は一時300円以上に拡大した。それでもマイナス金利の拡大を回避したことで、銀行・保険セクターには追い風。全体相場の下支え役となった。

 為替市場に対する影響は、マイナス金利拡大を回避したことで、円高・ドル安方向に。1ドル=102円台に突っ込む場面もあり、ある意味、それは国内輸出関連株に逆風になっている。今後は、さらなる追加緩和を期待して、市場は「催促相場」の様相を強めるのだろう。株価が下落することによって、より大胆な金融緩和を求めることになる。

 そして、日曜日はいよいよ東京都知事選の投開票日だ。現時点では「小池氏が一歩リード」と報じられており、恐らくそのような結果に落ち着くのだろう。与党、それに隷属する大マスコミは、操作的な世論調査によって、当選者を創り上げる傾向にある。有権者の「死に票にしたくない」という心理をうまく使い、意図する候補者へと投票を誘うのだ。処分対象であるはずの小池氏が依然として自民党員である不思議がここにあり、有権者ははっきりいって煙に巻かれているということになるのだろう。「増田じゃ無理っぽいから、しょうがない、小池で行こうか」――これが本音なのかもしれない。

 したがって、東京都知事選がマーケットに与える影響は限定的であると考えたい。万が一、鳥越氏が勝つのであれば、「反安倍」ということで「株安要因」となるが、現状ではその確率は低いと考えたい。あとは、選挙に不正があるのかないのか。「猪瀬、舛添票」の選挙区別分布と、「増田・小池票」の分布がまたもや一致するようであれば、イカサマの臭いがプンプンする。それによって現政権がいきなり崩壊することはないと思われるが、「B層覚醒」の起点となるだろう。
黒岩泰
株式アナリスト
配信元: 達人の予想