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〝自分年金〟作りには国の制度的なバックアップが必要

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                シンクタンク・ソフィアバンク副代表 藤沢久美
  
藤沢久美氏は若くして日本で最初の投資信託評価会社を設立。
同社をスタンダード&プアーズに売却後、現在は経済評論家として多方面で活躍中。日本の投資事情に精通する実力派。
現在も日本証券業協会、投資信託協会の理事を務める藤沢氏は、「貯蓄から投資へ」実現のために日夜奔走する当事者だが、日本の銀行・証券の営業スタイルに対する発言は意外にも手厳しかった。

 
シンクタンク・ソフィアバンク副代表 藤沢久美氏
  
  
 
〝自分年金〟作りには国の制度的なバックアップが必要

―日本の個人金融資産1500兆円の半分以上が現預金に滞留しています。

なぜ、日本人はこんなに貯蓄志向が高いのでしょうか? 
 

日本人は従来から産業復興のために、初等教育の段階から貯蓄を奨励されてきました。そうした政府の努力の結果、日本人には貯蓄志向が高い素地があります。
 
さらにここに来て預金が増えているのは、国民の将来不安が高まっているためでしょう。将来の不安に備えて、安全な資産を確保しておこうと考えるのはある意味で当然です。
 
 

―公的年金に対する不安が膨らみ、〝自分年金〟の必要が叫ばれていますが、日本の投資信託はなぜこの受け皿になれないのでしょう? 
 
投資信託を本当に自分年金の受け皿にするには、制度的に税金の補助や優遇が必要です。今は確定拠出年金に税制優遇がありますが、この制度を利用できない人でも、誰もが優遇を受けられるようにすべきでしょう。
 
また、年金という制度にこだわらずとも、同時に長期投資をする人には優遇税制を適用するような制度も必要だと思います。日本版ISA(小口の継続的長期投資非課税制度)の恒久化も課題です。

 たとえば生命保険は年末調整の保険料控除があるために、日本人はほとんどが加入しています。投資にもこれと同じようなインセンティブが必要です。「貯蓄から投資」へと訴えるだけでなく、国が制度的にバックアップをすべきです。

 投資信託が身近に販売されるようになったのはこの15年くらいですので、まだ浸透するには歴史が浅いという面もあります。日本は投資教育がなされてこなかったのも一因でしょう。資産運用というものを感覚的に理解できない人が多いのだと思います。また、この20年間、投資信託の主要な投資対象である日本株の市場環境が悪かったことも一つの要因でしょう。
 
 
  

―証券会社の旧態然とした営業姿勢にも問題がありませんか?
 
確かに投資商品の売り方にも問題があります。顧客が長期投資をすれば報われるようなインセンティブがあり、長期投資をすれば販売側も利益がしっかり上がるような手数料体系を構築すべきです。
 
短期売買を繰り返した方が販売側は儲かる仕組みがある限り、回転売買を推奨するような営業体制は変わりにくいというのが現実です。もっと長期投資や自分年金作りのために、投信信託を使って頂くという営業姿勢が必要でしょう。


 日本で一番おカネを持っているのは60歳以上の方々ですが、この方たちが初めて投資信託に触れるのは窓販を行っている銀行です。証券会社だけでなく、銀行も長期投資を勧めるような営業姿勢に改めるべきです。
 
日本の財政リスクは非常に大きいので、海外に資産の一部を海外に持ち出すのは正当なことだと思います。財政リスクをヘッジするという意味では、有効な手段だと言えます。
 
将来、日本の財政が破たんするような事態が生じたときに、日本の金融機関に引き出しが殺到しパニックが起きる可能性もあります。海外に資産を移しておけば、資金を引き出せないというような事態に直面するリスクを避けることができます。

 リスク管理というのは、常に最悪の事態を想定することが必要です。日本には預金保険制度があるのだから、「そんなことがあるわけないじゃないか」と決めてかかるのは、理論上はその通りでもリスク管理にはなりません。
 

―海外のオフショアファンドに投資するのもリスク管理の一手段になりますか? 
  
日本の金融機関も海外オフショアファンドのマザーファンドを焼き直したものを販売しているので、オフショアファンドが特別なものだとは思いません。海外オフショアファンドの中には保険機能がついているなど複雑な商品もあるので、仕組みをよく理解することは必要ですが、日本の財政リスクを回避するための一つの投資手段になると思います。
 
日本の財政状態が最悪の事態を迎えたとき、自分は自力で生き残るという自己責任を問われます。そのためにはオフショアファンドを活用して海外に資産逃避をしておくことが、自分の身を助ける一つの道具になるでしょう。日本の財政状態は最悪です。「最後は国が助けてくれる」というのは甘い考えです。
 
 
  
―今、投資家が一番心がけなくてはいけないことは何ですか? 
  
今は本当に先が読めない時代なので、資産運用が一番難しい時です。ただ、リーマンショックの後、大企業の株は暴落する一方で、中小型株は4割上昇しています。世界でも新興国の株は上昇しています。今は大きな世代交代が起きている時代なのだと思います。次にどの市場が中心になるのかを、常に目を凝らしてみることが大切です。
 
資産運用するときにいろいろなアナリストレポートを読んで、10年、20年先に中心になる市場を研究するのも大事ですが、実際にそういう地を訪れて自分の目で見て、その地域の人たちとコミュニケーションをとり、実感を持って自分の肌と知見で投資先を選ぶことが重要でしょう。これからは国際分散投資がますます不可欠な時代になります。

 

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