swq*k3*8さんのブログ

最新一覧へ

« 前へ174件目 / 全415件次へ »
ブログ

米さんのポジ思考すご 借り物


【ブログ】為替と経常収支の関係は絶対ではない
Real Time Economics





 ある国の経常収支と通貨の価値の間に従来考えられているほど明確な関係はないことが、新たな経験的データで示唆されている。

 この法則は広く受け入れられており、「通貨安プラス輸出イコール貿易拡大」と言う意味に近い。 

 

 米国の昨年の輸出額は1兆2800億ドル(約104兆円)と、ドル相場の下落(最近ほぼ3年ぶりの安値に下落)を一助に21%増加した。1988年以降では最も急激な増加だ。しかし、石油の多くを輸入していることもあり、貿易収支やサービス収支などからなる経常収支は相変わらず赤字である。

 シティグループの最近の調査は、米国あるいは他国が自国通貨下落から期待できる輸出拡大の度合いに疑問を投げかけている。

 米国の多額の経常赤字は先進国の中で際立っており、現在は国内総生産(GDP)の約3%だ。景気後退前には6%を上回っていたが、ドルが下落するなか縮小した。2001年以降のドル下落率は40%近くに達する。

 同国の赤字に比べ、ユーロ加盟17カ国の経常赤字はずっと少ない。その加盟国は最近までユーロ上昇に頭を悩ませていた。

 一方、日本の経常黒字は3月に前年同月比34.3%減少したが、それでもアジア有数の規模だ。輸出主導型経済の日本は、壊滅的な地震や津波を受け戦後最大の災害を乗り切ろうとするなか、積極的に円高と闘っている。

 米国はドル下落を一助に輸出を増やしているが、貿易赤字は相変わらず先進諸国で最大だ。このことは、他の要因と相まって、弱い通貨(ユーロの場合は強い通貨)が必ずしもその国の貿易収支と相関するわけではないことを示唆している。特に米国は石油の多くを輸入していることが影響している。

 ハーバード大学のジェフリー・フランケル教授は「さまざまな要因が貿易収支を左右する。通貨だけではない」と述べた。「供給カーブと需要カーブがあり、必ずしも一つの要素と相関するわけではない」という。

 シティグループは今月の調査で、通貨の弱さと対外収支の関係を「不確か」だとしている。資本流入出、エネルギー輸入、タイムラグなどの独立した要因により、為替相場が貿易収支に与える影響が弱まることがあるという。

 同社のアナリストらは「資本流入で通貨の価値が上がり輸出が減退することもある」と指摘。輸出競争力向上が通貨の上昇と同時期に起こることもあり得るとした。また「両方の力が同時に働くこともある」という。

 たとえば、ユーロ圏は2年近く前の債務危機発生で資本流入が減り、景気低迷と瀕死(ひんし)の銀行部門を抱えた周辺国が苦戦している。それでも、ユーロはドル安と比較的高い欧州資産の利回りを背景に上昇してきた。

 ユーロは4日には2年弱ぶりの高値1ユーロ=1.4940ドルまで上昇した。上昇による影響は加盟国によって異なる。ユーロ圏は3月に47億ユーロ(季節調整後)の経常赤字を計上したものの、この金額は2010年終盤の2年弱ぶりの高水準に比べれば少ない。そしてその陰には、ユーロ圏の貿易収支やサービス収支の黒字、ユーロ圏をけん引するドイツの堅調な輸出が隠れている。

 フランケル氏は、通貨安の影響が遅れて経常収支に現れると語る。1985-87年にはドル相場(加重平均)が約50%下落したが、89年まで貿易収支にこれといった影響はみられなかった。

 同氏は「輸入価格に反映され始めるまでに1年ほどかかる。2年目に大きな影響があるのが普通で、それは3年目に及ぶこともある」と述べた。

 一方、シティグループは、こうした状況がそれほど決定的ではないとみている。同社アナリストらは経済協力開発機構(OECD)のデータを使った調査で、米国の競争力と輸出動向の相関性が従来考えられているより低いことを発見した。

 輸出が米国のGDPに占める割合はわずか12%。そのため、製造業は景気拡大の歯車の潤滑油になるかもしれないが、ドル下落が輸出競争力に及ぼす影響は比較的限られている。

 シティのアナリストらは「最近の輸出改善は、輸出市場拡大と密接な関係があるようだ。競争力改善との関係は薄いとみられる」としている。「米国が生産ギャップを埋めるルートが貿易であるとすれば、一段のドル安は必至かもしれない」という。

 このことは、輸出依存度がはるかに高い欧州諸国にとって危険な問題になりかねない。また、ブラジル、韓国、南アフリカ共和国といった多額の経常黒字を持つ新興国は、ドル安で自国通貨に上昇圧力がかかり輸出が脅かされることにいら立っている。

 石油は別として、米国にとって最もいらだたしい貿易問題が対中貿易赤字であることに変わりはない。この問題は、願わくば人民元の自由化によって、緩和するまで、米中関係を支配しそうだ。

[リアルタイム・エコノミックス(Real Time Economics)では米経済、連邦準備理事会(FRB)の金融政策、経済理論などに関する独自取材ニュースや分析、論評をリポートする]

コメントを書く
コメントを投稿するには、ログイン(無料会員登録)が必要です。