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トランス・コスモスのニュース
■事業概要
1. マーケティングPF事業
(1) 事業特性、商品特性
株式会社ロックオン<3690>はマーケティングPF事業として、顧客企業のデジタルマーケティング活動を支援する様々な商品・サービスをクラウドベースで提供している。顧客企業は、マスメディアや広告に対する反応(上流)から、リスティング広告のクリック履歴(中流)を経て、自社サイトでの申し込み(下流)に至るまで一気通貫で顧客行動やマーケティング施策の効果を把握できる。同社の商品ラインの中で中核となるのが、「アドエビス」と「スリー」である。「アドエビス」は広告効果測定システムを中心とした「測定」機能に強く、そこで蓄積されたマーケティングデータを「活用」する機能により、一気通貫したマーケティングを実現する、マーケティングプラットフォームである。このツールは、各広告の成果を一元管理・可視化し費用対効果の良し悪しを簡単に把握することができる。「スリー」は、AIによる完全自動運用を実現したリスティング広告運用プラットフォームであり、自動最適化、自動入稿を可能とする。同社の基盤技術は、測定したビッグデータをAIで解析し、データ活用を自動化するものである。
(2) 顧客・流通
顧客はデジタルマーケティングを行う企業・団体・広告代理店などである。デジタル広告費用が月50万円を超えるようになると、「アドエビス」などのツールを使い効果・効率を求めるニーズが高まる傾向にある。営業に関しては、約300社の代理店経由と自社による直接販売がある。ちなみに、公開可能な導入実績(「アドエビス」及びDMP活用)として、ライオン<4912>(トイレタリー)、(株)ECC(教育)、(株)やずや(通販)、アイフル<8515>(金融)、NTTデータ<9613>(通信)など多様な業種で活用されている。2018年8月にはアドエビスの専門知識を持つパートナーを認定する制度「EBiStar」を新設しており、同年10月には、(株)電通ダイレクトマーケティング、トランスコスモス<9715>、フルスピード<2159>などを含む第1回EBiStar取得企業42社が発表された。
(3) 市場・競合
インターネット広告市場は継続的に成長しており、同社には追い風となっている。2018年のインターネット広告市場規模は1兆7,589億円と推定され、広告市場の4分の1を超えて益々存在感を増している。スマートフォン広告の増加、動画広告の増加、SNS広告の増加、アドテクノロジーの進化を背景にした運用型広告の拡大などが主な要因である。出稿するメディアの多様化は一元管理のニーズを高めていると考えられ、この点でも一気通貫のプラットフォームを持つ同社にとっては追い風である。
広告効果測定に限定して市場及び競合状況整理をすると、3つのセグメント(ローエンド顧客、ミドルエンド顧客、ハイエンド顧客)に分けることができる。ローエンド顧客は、ネット広告出稿量が少なく、Googleアナリティクスなどの無料サービスでニーズが満たされている。ミドルエンド顧客は、同社の対象顧客であり、月額50万円以上のネット広告出稿を多様なメディアに行っており、一元管理や効果・効率を求めている層である。ハイエンド顧客は、さらに大規模な広告出稿を行い、カスタマイズの自由度が高く専門性が高い。Adobe Analyticsがこのニーズに応える代表的なツールであり、同社の月額単価とは数倍の価格差がある。同社は、ミドルエンド市場に特化して展開しているため、競合サービスとは棲み分けが成されている。同社は、広告効果測定市場において市場シェア44.2%を獲得し、2位に2倍以上の差を付けている。
(4) 重要な経営指標(KPI)
マーケティングPF事業の重要な経営指標(KPI)は、「アドエビス」のアクティブアカウント数と月額平均単価である。2019年9月期第2四半期末のアクティブな顧客数は1,516件(前年同期末比で37件増加、前期末比で2件減少)となった。件数の伸びが鈍化した背景には新価格体系への移行がある。顧客単価(平均月単価)においては、98,042円(前年同期比で22,196円増加、前期比13,124円増加)に増加した。既存顧客においても新価格体系への移行が完了したために大幅な顧客単価上昇となった。マーケティングPF事業の売上高は「アカウント数」×「月額平均単価」で算出され、2019年9月期に入ってからの単価の上昇が増収に貢献している。
(5) ビジネスモデルの特長
マーケティングPF事業の事業特性は、ライフタイムが長いストック型ビジネスということである。顧客獲得のためのマーケティング及びセールス投資が先行するものの、回収後の長いライフタイムを通じて、安定収益を獲得していくモデルとなっている。1回契約すると平均では3年以上継続するため、顧客数が積み上がる傾向にある。したがって、同社はマーケティングやセールスへの積極的な投資を先行させ、中長期的な収益拡大を目指す方針を取っている。マーケティング及びセールス部門費用の対売上高比は適正値である30%(2019年9月期第2四半期)である。
2. 商流PF事業(EC-CUBE部門)
「EC-CUBE」は同社がプロデュースするECサイト構築ツールである。世のツールの中で「高いカスタマイズ性」と「低コスト/簡単」を両立し、ECサイトの質を求めるユーザーから高い支持を得てきた。現在、国内シェアNo.1のオープンソースとしてWeb制作に欠かせないプラットフォームとなっている。
特筆すべきは、そのビジネスモデルで、次の特徴が挙げられる。
(1) 無料配布
(2) 開発は外部コミュニティが行う(一部は同社も担当)
(3) 営業はパートナー企業が行う
(4) 物流や決済などは外部のEC関連事業者が行う
(5) 同社はEC関連事業者からのマージンを収入とする
同社からは人材や設備などの大きな投資は行わずに、顧客を含めたプレーヤーすべてが満足するエコシステムを構築している。
EC市場全体としては、アマゾンなどの大手事業者に取引が集中する傾向になり、中小EC事業者の自社サイトの取引は伸び悩む会社もある。同社としても、EC-CUBE部門の売上は横ばいである。今後も大きな投資などはしないものの、デザイン性やセキュリティの強化策を着実に行っていく。2019年1月には、子会社(株)イーシーキューブによる独立した事業運営体制がスタートし、更なる成長を模索する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
<YM>
1. マーケティングPF事業
(1) 事業特性、商品特性
株式会社ロックオン<3690>はマーケティングPF事業として、顧客企業のデジタルマーケティング活動を支援する様々な商品・サービスをクラウドベースで提供している。顧客企業は、マスメディアや広告に対する反応(上流)から、リスティング広告のクリック履歴(中流)を経て、自社サイトでの申し込み(下流)に至るまで一気通貫で顧客行動やマーケティング施策の効果を把握できる。同社の商品ラインの中で中核となるのが、「アドエビス」と「スリー」である。「アドエビス」は広告効果測定システムを中心とした「測定」機能に強く、そこで蓄積されたマーケティングデータを「活用」する機能により、一気通貫したマーケティングを実現する、マーケティングプラットフォームである。このツールは、各広告の成果を一元管理・可視化し費用対効果の良し悪しを簡単に把握することができる。「スリー」は、AIによる完全自動運用を実現したリスティング広告運用プラットフォームであり、自動最適化、自動入稿を可能とする。同社の基盤技術は、測定したビッグデータをAIで解析し、データ活用を自動化するものである。
(2) 顧客・流通
顧客はデジタルマーケティングを行う企業・団体・広告代理店などである。デジタル広告費用が月50万円を超えるようになると、「アドエビス」などのツールを使い効果・効率を求めるニーズが高まる傾向にある。営業に関しては、約300社の代理店経由と自社による直接販売がある。ちなみに、公開可能な導入実績(「アドエビス」及びDMP活用)として、ライオン<4912>(トイレタリー)、(株)ECC(教育)、(株)やずや(通販)、アイフル<8515>(金融)、NTTデータ<9613>(通信)など多様な業種で活用されている。2018年8月にはアドエビスの専門知識を持つパートナーを認定する制度「EBiStar」を新設しており、同年10月には、(株)電通ダイレクトマーケティング、トランスコスモス<9715>、フルスピード<2159>などを含む第1回EBiStar取得企業42社が発表された。
(3) 市場・競合
インターネット広告市場は継続的に成長しており、同社には追い風となっている。2018年のインターネット広告市場規模は1兆7,589億円と推定され、広告市場の4分の1を超えて益々存在感を増している。スマートフォン広告の増加、動画広告の増加、SNS広告の増加、アドテクノロジーの進化を背景にした運用型広告の拡大などが主な要因である。出稿するメディアの多様化は一元管理のニーズを高めていると考えられ、この点でも一気通貫のプラットフォームを持つ同社にとっては追い風である。
広告効果測定に限定して市場及び競合状況整理をすると、3つのセグメント(ローエンド顧客、ミドルエンド顧客、ハイエンド顧客)に分けることができる。ローエンド顧客は、ネット広告出稿量が少なく、Googleアナリティクスなどの無料サービスでニーズが満たされている。ミドルエンド顧客は、同社の対象顧客であり、月額50万円以上のネット広告出稿を多様なメディアに行っており、一元管理や効果・効率を求めている層である。ハイエンド顧客は、さらに大規模な広告出稿を行い、カスタマイズの自由度が高く専門性が高い。Adobe Analyticsがこのニーズに応える代表的なツールであり、同社の月額単価とは数倍の価格差がある。同社は、ミドルエンド市場に特化して展開しているため、競合サービスとは棲み分けが成されている。同社は、広告効果測定市場において市場シェア44.2%を獲得し、2位に2倍以上の差を付けている。
(4) 重要な経営指標(KPI)
マーケティングPF事業の重要な経営指標(KPI)は、「アドエビス」のアクティブアカウント数と月額平均単価である。2019年9月期第2四半期末のアクティブな顧客数は1,516件(前年同期末比で37件増加、前期末比で2件減少)となった。件数の伸びが鈍化した背景には新価格体系への移行がある。顧客単価(平均月単価)においては、98,042円(前年同期比で22,196円増加、前期比13,124円増加)に増加した。既存顧客においても新価格体系への移行が完了したために大幅な顧客単価上昇となった。マーケティングPF事業の売上高は「アカウント数」×「月額平均単価」で算出され、2019年9月期に入ってからの単価の上昇が増収に貢献している。
(5) ビジネスモデルの特長
マーケティングPF事業の事業特性は、ライフタイムが長いストック型ビジネスということである。顧客獲得のためのマーケティング及びセールス投資が先行するものの、回収後の長いライフタイムを通じて、安定収益を獲得していくモデルとなっている。1回契約すると平均では3年以上継続するため、顧客数が積み上がる傾向にある。したがって、同社はマーケティングやセールスへの積極的な投資を先行させ、中長期的な収益拡大を目指す方針を取っている。マーケティング及びセールス部門費用の対売上高比は適正値である30%(2019年9月期第2四半期)である。
2. 商流PF事業(EC-CUBE部門)
「EC-CUBE」は同社がプロデュースするECサイト構築ツールである。世のツールの中で「高いカスタマイズ性」と「低コスト/簡単」を両立し、ECサイトの質を求めるユーザーから高い支持を得てきた。現在、国内シェアNo.1のオープンソースとしてWeb制作に欠かせないプラットフォームとなっている。
特筆すべきは、そのビジネスモデルで、次の特徴が挙げられる。
(1) 無料配布
(2) 開発は外部コミュニティが行う(一部は同社も担当)
(3) 営業はパートナー企業が行う
(4) 物流や決済などは外部のEC関連事業者が行う
(5) 同社はEC関連事業者からのマージンを収入とする
同社からは人材や設備などの大きな投資は行わずに、顧客を含めたプレーヤーすべてが満足するエコシステムを構築している。
EC市場全体としては、アマゾンなどの大手事業者に取引が集中する傾向になり、中小EC事業者の自社サイトの取引は伸び悩む会社もある。同社としても、EC-CUBE部門の売上は横ばいである。今後も大きな投資などはしないものの、デザイン性やセキュリティの強化策を着実に行っていく。2019年1月には、子会社(株)イーシーキューブによる独立した事業運営体制がスタートし、更なる成長を模索する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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