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ゼンリンのニュース
―地中に眠る水道管や電線網などを可視化、老朽化で修復需要が高まりニーズ拡大―
デジタル化による恩恵を全国津々浦々に行き渡らせるため、官民が一体となり動き出そうとしている。デジタルの力をうまく活用することで日本が抱えるさまざまな社会課題を解決するには、力を引き出すための前提となる「強固な基盤づくり」は避けて通れない。その基盤づくりに一役買うのが地下に眠る水道管や電線網など社会インフラの「3次元(3D)地図」化だ。我々の目には見えないインフラ群の可視化につながる3D地図関連銘柄にスポットライトを当てた。
●3D地図化で情報量が増え周辺環境に対する解像度が増す
経済活動も含め日常生活全体をコロナ禍対応優先の状況から、通常状態に回帰させていく方向に日本社会は向かっている。足もとでは、「東京の夏の風物詩」としてイメージされることも多い「隅田川花火大会」が4年ぶりに開催され、100万人超もの観客が訪れ大盛況となった。こうした大規模なイベントは各地で復活してきており、酷暑の中ではあるものの、外出機会も一気に増加している。
そんな私たちの活動を強力にサポートしてくれている存在の一つが「地図」だ。ビジネス、旅行、遊び、あらゆる場面の移動に際して、地図を確認しないことはないだろう。いわゆる「方向音痴」の人にとっても3D地図が利用できるようになってから、一段と利便性が増している。昔ながらの平面図では、似たような建物が乱立している土地では迷ってしまうこともあるが、3D化されることで情報量も増え一気に周辺環境に対する解像度が増す。
●陥没事故発生の防止やスムーズな復旧などに威力発揮
そんな有用な「3D化」を更に広げていこうという動きが足もとで見られている。それが、政府による地下インフラの3D地図化に向けた構想だ。言うまでもないが、現在複数存在するインフラ関連企業の情報を統合管理することはできていない。水道やガス、電力・通信関連などインフラ関連の工事は街中でもよく見る光景だが、平面図を基に地下を実際に掘削しなければ、状況が分からないことがほとんどだ。
実際、水道管を例にしても、これが原因となって起こる陥没事故は毎年かなりの件数が発生している。こうした地下インフラの状態を可視化し、遠隔で監視・点検できるようにするというのが政府の狙いだ。また、大規模災害が発生した際に、可視化した情報をもとにインフラの破損箇所を早期特定し、スムーズな復旧につなげることも念頭に置いている。インフラの老朽化は日本各地で進行しており、発生した被害を最小限に抑えるという意味でも必須の取り組みになるだろう。また、地下インフラの3D化が実装されれば、掘削の際に別の地下インフラを破損するような併発事故も防ぐことが可能になる。
●政府の「デジタルライフライン全国総合整備計画」を策定へ
2022年11月には、東京ガス <9531> [東証P]傘下の東京ガスネットワーク、東京電力ホールディングス <9501> [東証P]傘下の東京電力パワーグリッド、日本電信電話 <9432> [東証P]傘下のNTT東日本が連携協定を締結し、インフラ基盤データの共通プラットフォームの構築を進める方向で動き出している。また、日立製作所 <6501> [東証P]と応用地質 <9755> [東証P]は、地中レーダー探査装置などで地下状況を可視化し、一元管理・提供できるプラットフォームを構築するなど、政府の方針に対応するための民間の技術開発も各所で進んでいる。一連の構想の柱となる「デジタルライフライン全国総合整備計画」を23年度末頃までに政府が策定、地下インフラの空間情報のデジタル化については24年度から関東地方で運用を始め、その後全国に順次展開していく流れのようだ。
そこで以下では「3D地図」関連の銘柄に焦点を当てた。地図情報を得意とする企業のほか、3D地図の開発・販売を行っている企業や、3D地図を活用したサービスを提供している企業。そのほか、高精度な地図を作成するうえで重要な点群データを取得するため、SAR(合成開口レーダー)衛星を手掛けている銘柄を選定した。
●ゼンリンやトプコン、パスコなど注目
ソフトバンク <9434> [東証P]~昨年7月に南海トラフ地震などの災害時を想定して、 ドローンの飛行ルートやLTE(4G)の電波環境を3次元地図上で事前にシミュレーションし、それに基づいて橋梁の被災状況をドローンで確認する実証実験を行った。3次元地図の作成においては、同社と技術提携しているアミューズワンセルフ(大阪市北区)が提供するレーザースキャナー「TDOT 3 GREEN」で3次元測量を行って作成。また、最近では23年度中に東京都23区全域を対象に高精細な3D地図を作成すると報じられており、トヨタ自動車 <7203> [東証P]と共同出資するモネ・テクノロジーズ(東京都千代田区)を通じて、次世代モビリティーサービスの基盤に活用するようだ。
NTTデータグループ <9613> [東証P]~衛星画像を活用した高精細地形データ「AW3D全世界デジタル3D地図」は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の陸域観測技術衛星「だいち(ALOS)」の衛星画像を利用し、リモート・センシング技術センター(RESTEC)と共同で開発・販売している。同製品は世界初の2.5メートル解像度で世界中の陸地の起伏を表現したデジタル3D地図サービスであり、世界130カ国以上・3000プロジェクト以上で、インフラ整備や防災対策などの社会問題の解決に活用されている。
三菱電機 <6503> [東証P]~子会社の三菱電機エンジニアリングが手掛けている「Field LiDAR」(モバイル3Dスキャナ)は、移動計測により自己位置推定と3D環境地図作成を同時に実現できるスキャナだ。移動しながら計測することで、広範囲かつリアルタイムに点群データを取得することが可能で、被害状況を把握するための災害査定や工事現場の土量、出来形計測、森林管理やインフラ点検などの状況把握を速やかに行うことができる。
トプコン <7732> [東証P]~アジア統括事業会社であるトプコンポジショニングアジアは、電波の一種であるマイクロ波を使って地表面を観測する小型SAR衛星の開発・運用、データ解析などを提供するSynspective(東京都江東区)と、衛星データソリューションサービスの販売パートナーシップを締結している。高精度で土地の変位を検出するSARデータ特有の処理技術により、地盤リスクや変動を広域・面的に理解することが可能となる。
パスコ <9232> [東証S]~航空計測で得られた3次元座標値を基に3Dモデルを生成し、3次元の立体都市データ「3次元空間写真データ(3D-TINモデル)」として販売している。航空写真から生成される緻密な立体形状は、コンピューター画面上で建物の壁面や起伏のある傾斜面を自由な視野角で再現できる。また、地球観測衛星で撮影された画像などから作成された全世界の3D地形データを扱っており、都市開発やインフラ計画、防災分野などで活用されている。
スカパーJSATホールディングス <9412> [東証P]~九州大学発スタートアップのQPS研究所(福岡市中央区)が開発する小型SAR衛星の運用業務について、協業を開始する契約を締結したと7月18日に発表した。SARは電波を使用して地表の画像を得るレーダーであり、雲や噴煙を透過し、昼夜を問わず観測することができる点が特長である。同社は人的コストや実績が重視される運用業務をサポートする。
ゼンリン <9474> [東証P]~詳細地図情報と専用車両で計測したデータにより、現実の街を忠実に3Dモデル化した3D都市モデルデータや国土地理院が公開している地形データを組み合わせ、建物の形状と階数情報を基に全国をモデル化した広域3次元モデルデータなどを提供している。
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