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イー・ギャランティのニュース
企業が抱える売掛債権の保証を手掛けるイー・ギャランティ<8771>。売掛金が回収できなくなるリスクを回避したい企業の需要をつかみ、コロナ禍においても高成長を続けています。成長のカギは何なのでしょうか、同社の江藤公則(えとうまさのり)社長にお話を伺います。
◆全国各地の「リスク情報」がイー・ギャランティに集まっています。年間30万件の企業の審査依頼、累計14万超えの信用保証をし、220万社を超える信用情報データを持つ 、イー・ギャランティ。多くのリスクデータを扱うことから、日本経済の先行き、トレンドを読み解くヒントを深掘りします。
馬渕:新型コロナウイルスの影響で、リスクヘッジのニーズはどのように変わりましたか?
江藤:コロナ禍で企業はどこも不安です。なぜなら、過去の延長上で信用度が測れなくなってしまったからです。通常であれば、これまでの業績を元に今後の売上推移を予想することができました。その判断が一気にできなくなったことで、信用度が悪化しています。
馬渕:イー・ギャランティには「リスクの情報」が集まっている?
江藤:イー・ギャランティでは、取引先の企業の保証がいくらかという判断だけでなく、「実は支払いが遅れてる」といった、表面的には分かりにくい情報を取り扱っています。膨大な遅延情報のデータを把握していますので、その側面を期待して保証契約に入られるケースも増えてきています。
馬渕:遅延情報を知れる、それは魅力的です。コロナ禍でも、業績は第2四半期(20年4月-9月)連結決算で2ケタ増収増益ですが。まさにコロナ禍の中でも成長を続けておられる理由について教えてください。
江藤:コロナ禍だけでなく、実は、18年ずっと増収増益です。まず、当社はビジネスモデル的に利益が減らない、赤字になりにくいビジネスモデルを構築しています。
馬渕:赤字になりにくい?もう少し、詳しく教えてください。
江藤:リスクを自分たちが請け負っているわけではありません。当社は「市場=マーケットメーカー」の立ち位置ですので、市場でやりとりされるリスクの量に比例して利益が積みあがる構造になっています。保証会社とは言っておりますが、「市場の役割」を果たしているため、流通量が増えればその分、利益に繋がります。
馬渕:「マーケットメーカー」分かりやすいです。とはいえ、景気の浮き沈みがある中で18年増収増益は珍しいです。今回のコロナ禍で、何が一番のポイントだったのでしょうか。
江藤:売掛債権の保証に対するニーズが非常に高まった点が良かったと思います。また、実質的に保証料の積立ができる「保証料積立サービス」を導入しました。
馬渕:「保証料積立サービス」は具体的にどのようなサービスですか?
江藤:コロナ禍で保証料が高くなっています。倒産確率が1.5倍~2倍に上がってくるわけです。保証料率も高くなるなかで、仮に、この先の1年間で倒産がなかった場合、支払った保証料がもったいなく感じられる方もいらっしゃいます。そこで「倒産がなければ保証料のうち最大60% までは、翌年保証していない会社が倒産しても、我々が保証金をお支払いする」サービスを開始しました。つまり、掛け捨てではない点が「割安だ」と感じられ、新規契約が伸びたのが『保証料を積み立てサービス』です。
馬渕:倒産がなければ保証料のうち最大60%まで戻ってくるサービス。感染の観点から、遠隔地や小額の売上の回収のために、人が出向いていくことを避けたいという意向が高まった中で、非常に魅力的なサービスです。
◆ここからは、コロナの影響で、どのようにリスク評価を見直されたのか具体的に伺います。
馬渕:今回のコロナの影響で、引き受け企業のリスク評価見直しをされたそうですが、既存契約の部分を詳しく教えてください。
江藤:契約内容を見直し、高額のリスクについては引受けを制限してリスク分散、及び、ポートフォリオの再構築をしました。当社が扱うポートフォリオは、ほぼ日本の産業分布と同じようなポートフォリオになっていますが、観光、宿泊、小売業等の引き受け企業のリスクは見直しました。
馬渕:新規契約の場合の平均保証料率はどうでしょう。
江藤:1.62%(19年12月末)から2.81%(20年9月末)と約2倍に推移していますが、今後の保証料率については、この辺りの数字で一旦止まるイメージです。なぜなら、上期は倒産が少ないからです。
馬渕:倒産件数の見通しについては、コロナの感染拡大の当初と違いますか?
江藤:2020年度上半期の倒産件数は3,956件、負債総額は6,012億5,000万円と過去2番目の低水準です。当初は8~9月には増加すると思ってましたが、政府のサポートが効いていると思います。とはいえ、「延命」の側面も強いため、来年の5月ぐらいには倒産件数が上昇してくると予想しています。ただし、オリンピックとの関係で微妙に変わるとは思いますが。
馬渕:政府が更に追加の支援策を行った場合は、またその時期が延長されていくというようなイメージですか。
江藤:それは、多少です。結局いくら借入をしても利益が上がらない会社を続けることはできません。借入によって、一時的にお金を融通することで倒産することを防ぐことはできます。しかし、結局、本業の利益が上がらなければ、続けることができないのです。借金を返すことができれば廃業ですが、借金を返せなくなり会社を閉めた場合は倒産になります。
馬渕:いまは、逆に倒産予備軍を作っていると…
江藤:リーマンショックの時のように、倒産件数が急激に増加して、また戻るような形ではなく、長期間にわたり倒産企業の増加が続くイメージをしています。
◆リーマンショックの時も増収増益だったイー・ギャランティの強みを伺います。
馬渕:リーマンショック当時に行われた取り組みと、今回のコロナ危機の際に生かされた事例を教えてください。
江藤:リスクのマーケットには売り手と買い手とどちらも存在しています。リスクを引き受ける方と、引き受けて欲しい方のどちらかにとって、明らかにやりやすい環境は、マーケットの信頼性に関わってくるのです。
馬渕:マーケットの信頼性を守られたということですね。
江藤:特に、危機の時にはリスクを引き受ける側にとって「安心」が最も重要です。まず、リスクが高まったときにリスク資産をすぐに入れ替えます。次に、すかさず、保証料率を引き上げます。倒産状況の予想に合わせて保証料率を短期で引き上げます。それから引き上がった保証料率で、徐々に保証残高を広げていきます。
馬渕:この3段階のプロセスと同じことを今回もされた?
江藤:はい、今回のコロナ危機でも同じように対応しました。流動化を引き受ける側に最初に姿勢を示すことが大事です。資産の入れ替えを行い、そのポートフォリオの中も見せることで安心されます。さらに、引受先が既に引き受けて流動化しているものについても、残高を落としていきますので、明らかに危ない会社のリスクが減っていくのが目に見えて分かるようにしています。
馬渕:リーマンショックと今回のコロナショックでは、何か違う点はありましたか?
江藤:リーマンショックの時は、金融不況だったので全業種への影響がありました。今回の特徴は「消費不況」ですので、影響のある特定の業種を集中させてリスク資産から落としました。
馬渕:特定の業種とおっしゃいましたが、ここから先、全業種に波及していく恐れはないのでしょうか?
江藤:波及していく可能性はありますが、ここから先は落とさなくても大丈夫です。危ない業種は全て落としました。そして、いったん落としたものは、しばらくは戻さないです。その代わり、引き受ける業種をその他の業種に広げていきます。
◆コロナ禍でも経済を回し続けるために、何が必要か伺います。
馬渕:コロナの感染拡大のリスクがありながら、経済を回す必要があると考えます。その為には何が必要でしょうか。
江藤:みんなが『信用を相手に与え合うこと』です。信用が信用を産んで大きくなっていくことで、経済が回っているのです。債券、売掛債権の無理な現金化は企業の寿命を縮めてしまうのです。企業が手元に現金を積み上げるということで経済を縮小するということなんです。
馬渕:というと?詳しく教えてください。
江藤:まだ、政府保証がなかった3月頃。企業は仕入れのお金が払えないため、銀行から借りを行い、それで仕入れ先に支払いを行っていました。これを続けていると高コストの会社になり、継続は不可能に近いです。今まで仕入れをしていた会社に「少し遅らせてください」と言えばいいわけです。
馬渕:仕入れ先に「待って欲しい」と伝える。
江藤:そうです。今まで60日後の支払いだった期限が、90日後でもよくなるだけで、1.5倍も必要な資金が変わります。危機の時はみんなが待った方がいいんです。資金がたくさんある会社もあるので。そういった会社は、自分たちの販売先を支援する意味合いでも、今まで通りに支払いを求めるのではなく、もう半年待つ。そんなスタンスで事業の継続をみんなで見守っていく必要があります。
馬渕:慌てず、仕入元に少し待ってくださいと言えば、皆さん理解していただけると。
江藤:相手のことを「不安だ、不安だ」と思っているとどんどんと経済がシュリンクしていきます。「現金で今まで通り支払って欲しい」「払えないのなら売らない」となると、経済が回らなくなります。ただし、今の状況で経済を回していくとなると、もちろん、リスクがあります。だからこそ、同社のような売掛債権の保証でリスクをヘッジしてもらうという存在意義があるのです。みんなが『信用を相手に与え合うことで』、経済が回るのです。
馬渕:売掛債権の保証が世の中を支え、経済を回すためにも必要だということですね。ありがとうございました。
<聞き手・構成/フィスコ 馬渕磨理子>
<NB>
◆全国各地の「リスク情報」がイー・ギャランティに集まっています。年間30万件の企業の審査依頼、累計14万超えの信用保証をし、220万社を超える信用情報データを持つ 、イー・ギャランティ。多くのリスクデータを扱うことから、日本経済の先行き、トレンドを読み解くヒントを深掘りします。
馬渕:新型コロナウイルスの影響で、リスクヘッジのニーズはどのように変わりましたか?
江藤:コロナ禍で企業はどこも不安です。なぜなら、過去の延長上で信用度が測れなくなってしまったからです。通常であれば、これまでの業績を元に今後の売上推移を予想することができました。その判断が一気にできなくなったことで、信用度が悪化しています。
馬渕:イー・ギャランティには「リスクの情報」が集まっている?
江藤:イー・ギャランティでは、取引先の企業の保証がいくらかという判断だけでなく、「実は支払いが遅れてる」といった、表面的には分かりにくい情報を取り扱っています。膨大な遅延情報のデータを把握していますので、その側面を期待して保証契約に入られるケースも増えてきています。
馬渕:遅延情報を知れる、それは魅力的です。コロナ禍でも、業績は第2四半期(20年4月-9月)連結決算で2ケタ増収増益ですが。まさにコロナ禍の中でも成長を続けておられる理由について教えてください。
江藤:コロナ禍だけでなく、実は、18年ずっと増収増益です。まず、当社はビジネスモデル的に利益が減らない、赤字になりにくいビジネスモデルを構築しています。
馬渕:赤字になりにくい?もう少し、詳しく教えてください。
江藤:リスクを自分たちが請け負っているわけではありません。当社は「市場=マーケットメーカー」の立ち位置ですので、市場でやりとりされるリスクの量に比例して利益が積みあがる構造になっています。保証会社とは言っておりますが、「市場の役割」を果たしているため、流通量が増えればその分、利益に繋がります。
馬渕:「マーケットメーカー」分かりやすいです。とはいえ、景気の浮き沈みがある中で18年増収増益は珍しいです。今回のコロナ禍で、何が一番のポイントだったのでしょうか。
江藤:売掛債権の保証に対するニーズが非常に高まった点が良かったと思います。また、実質的に保証料の積立ができる「保証料積立サービス」を導入しました。
馬渕:「保証料積立サービス」は具体的にどのようなサービスですか?
江藤:コロナ禍で保証料が高くなっています。倒産確率が1.5倍~2倍に上がってくるわけです。保証料率も高くなるなかで、仮に、この先の1年間で倒産がなかった場合、支払った保証料がもったいなく感じられる方もいらっしゃいます。そこで「倒産がなければ保証料のうち最大60% までは、翌年保証していない会社が倒産しても、我々が保証金をお支払いする」サービスを開始しました。つまり、掛け捨てではない点が「割安だ」と感じられ、新規契約が伸びたのが『保証料を積み立てサービス』です。
馬渕:倒産がなければ保証料のうち最大60%まで戻ってくるサービス。感染の観点から、遠隔地や小額の売上の回収のために、人が出向いていくことを避けたいという意向が高まった中で、非常に魅力的なサービスです。
◆ここからは、コロナの影響で、どのようにリスク評価を見直されたのか具体的に伺います。
馬渕:今回のコロナの影響で、引き受け企業のリスク評価見直しをされたそうですが、既存契約の部分を詳しく教えてください。
江藤:契約内容を見直し、高額のリスクについては引受けを制限してリスク分散、及び、ポートフォリオの再構築をしました。当社が扱うポートフォリオは、ほぼ日本の産業分布と同じようなポートフォリオになっていますが、観光、宿泊、小売業等の引き受け企業のリスクは見直しました。
馬渕:新規契約の場合の平均保証料率はどうでしょう。
江藤:1.62%(19年12月末)から2.81%(20年9月末)と約2倍に推移していますが、今後の保証料率については、この辺りの数字で一旦止まるイメージです。なぜなら、上期は倒産が少ないからです。
馬渕:倒産件数の見通しについては、コロナの感染拡大の当初と違いますか?
江藤:2020年度上半期の倒産件数は3,956件、負債総額は6,012億5,000万円と過去2番目の低水準です。当初は8~9月には増加すると思ってましたが、政府のサポートが効いていると思います。とはいえ、「延命」の側面も強いため、来年の5月ぐらいには倒産件数が上昇してくると予想しています。ただし、オリンピックとの関係で微妙に変わるとは思いますが。
馬渕:政府が更に追加の支援策を行った場合は、またその時期が延長されていくというようなイメージですか。
江藤:それは、多少です。結局いくら借入をしても利益が上がらない会社を続けることはできません。借入によって、一時的にお金を融通することで倒産することを防ぐことはできます。しかし、結局、本業の利益が上がらなければ、続けることができないのです。借金を返すことができれば廃業ですが、借金を返せなくなり会社を閉めた場合は倒産になります。
馬渕:いまは、逆に倒産予備軍を作っていると…
江藤:リーマンショックの時のように、倒産件数が急激に増加して、また戻るような形ではなく、長期間にわたり倒産企業の増加が続くイメージをしています。
◆リーマンショックの時も増収増益だったイー・ギャランティの強みを伺います。
馬渕:リーマンショック当時に行われた取り組みと、今回のコロナ危機の際に生かされた事例を教えてください。
江藤:リスクのマーケットには売り手と買い手とどちらも存在しています。リスクを引き受ける方と、引き受けて欲しい方のどちらかにとって、明らかにやりやすい環境は、マーケットの信頼性に関わってくるのです。
馬渕:マーケットの信頼性を守られたということですね。
江藤:特に、危機の時にはリスクを引き受ける側にとって「安心」が最も重要です。まず、リスクが高まったときにリスク資産をすぐに入れ替えます。次に、すかさず、保証料率を引き上げます。倒産状況の予想に合わせて保証料率を短期で引き上げます。それから引き上がった保証料率で、徐々に保証残高を広げていきます。
馬渕:この3段階のプロセスと同じことを今回もされた?
江藤:はい、今回のコロナ危機でも同じように対応しました。流動化を引き受ける側に最初に姿勢を示すことが大事です。資産の入れ替えを行い、そのポートフォリオの中も見せることで安心されます。さらに、引受先が既に引き受けて流動化しているものについても、残高を落としていきますので、明らかに危ない会社のリスクが減っていくのが目に見えて分かるようにしています。
馬渕:リーマンショックと今回のコロナショックでは、何か違う点はありましたか?
江藤:リーマンショックの時は、金融不況だったので全業種への影響がありました。今回の特徴は「消費不況」ですので、影響のある特定の業種を集中させてリスク資産から落としました。
馬渕:特定の業種とおっしゃいましたが、ここから先、全業種に波及していく恐れはないのでしょうか?
江藤:波及していく可能性はありますが、ここから先は落とさなくても大丈夫です。危ない業種は全て落としました。そして、いったん落としたものは、しばらくは戻さないです。その代わり、引き受ける業種をその他の業種に広げていきます。
◆コロナ禍でも経済を回し続けるために、何が必要か伺います。
馬渕:コロナの感染拡大のリスクがありながら、経済を回す必要があると考えます。その為には何が必要でしょうか。
江藤:みんなが『信用を相手に与え合うこと』です。信用が信用を産んで大きくなっていくことで、経済が回っているのです。債券、売掛債権の無理な現金化は企業の寿命を縮めてしまうのです。企業が手元に現金を積み上げるということで経済を縮小するということなんです。
馬渕:というと?詳しく教えてください。
江藤:まだ、政府保証がなかった3月頃。企業は仕入れのお金が払えないため、銀行から借りを行い、それで仕入れ先に支払いを行っていました。これを続けていると高コストの会社になり、継続は不可能に近いです。今まで仕入れをしていた会社に「少し遅らせてください」と言えばいいわけです。
馬渕:仕入れ先に「待って欲しい」と伝える。
江藤:そうです。今まで60日後の支払いだった期限が、90日後でもよくなるだけで、1.5倍も必要な資金が変わります。危機の時はみんなが待った方がいいんです。資金がたくさんある会社もあるので。そういった会社は、自分たちの販売先を支援する意味合いでも、今まで通りに支払いを求めるのではなく、もう半年待つ。そんなスタンスで事業の継続をみんなで見守っていく必要があります。
馬渕:慌てず、仕入元に少し待ってくださいと言えば、皆さん理解していただけると。
江藤:相手のことを「不安だ、不安だ」と思っているとどんどんと経済がシュリンクしていきます。「現金で今まで通り支払って欲しい」「払えないのなら売らない」となると、経済が回らなくなります。ただし、今の状況で経済を回していくとなると、もちろん、リスクがあります。だからこそ、同社のような売掛債権の保証でリスクをヘッジしてもらうという存在意義があるのです。みんなが『信用を相手に与え合うことで』、経済が回るのです。
馬渕:売掛債権の保証が世の中を支え、経済を回すためにも必要だということですね。ありがとうございました。
<聞き手・構成/フィスコ 馬渕磨理子>
<NB>
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