日本瓦斯のニュース
・DXに優れた上場企業を選ぶ「DX銘柄2022」において、33社が選定され、その中で、中外製薬<4519>と日本瓦斯<8174>がグランプリに選ばれた。
・銘柄と名付けているところがユニークで、投資家の視点を重視している。経産省と東証が主催者となって、ITの利活用を表彰制度、認定制度を通して推進しようというものである。
・2015年から始まって、当初は「攻めのIT経営銘柄」、2020年からは、デジタルトランスフォーメーションにフォーカスして「DX銘柄」と称している。
・経産省は、デジタルによる企業変革を促すために、情報処理促進法を改正し、「デジタルガバナンス・コード」を策定し、「DX認定制度」を整備した。これを実践し、クリアした上で、どこまで優れているかを評価しよう、という狙いがある。
・上場企業約3800社から「DX調査アンケート」への回答を通して、銘柄への応募を行った。一定のレベルに達していなければ応募してこないものとみられる。
・2022年の選定では401社が応募し、一次審査、二次審査を経て、DX銘柄33社(うち2社がグランプリ)、DX注目企業15社が選ばれた。注目企業とは、今一歩ながら、注目すべき取り組みを実行している点を評価している。
・評価のポイントは、DXを活用して企業価値創造を実践しているか、という点にある。一次評価では、「デジタルガバナンス・コード」をベースにして、6つの項目について、企業がアンケートに答えていく。
・その項目とは、1)DXに関わる経営ビジョンやビジネスモデル、2)DXに関する経営戦略、3)それを実現するための組織や制度の作り込み、4)戦略実現のためのデジタル技術の活用と情報システムの構築、5)成果と重要な成果指標(KPI)の共有、6)DXのガバナンスである。これらがしっかりできていないと、一次審査は通らない。
・二次評価は、記述式で企業の独自性を大いにアピールしてもらう。評価の着眼点は、1)DXによる企業価値貢献と2)DX実現能力をみていく。
・企業への価値貢献では、①DXによる既存ビジネスモデルの深化を、具体的事例を通してみていく。②DXによる業態変革やビジネスモデルの創出も、具体的事例を通して検討する。
・DXの実現能力では、経営ビジョン、戦略、組織、人材、風土、デジタル技術の活用の環境整備、情報発信とコミットメント、戦略の進捗と成果把握、デジタル化リスクへの対応という観点から総合的にみていく。
・いずれも、評価項目を点数化してセクター(東証の業種区分)ごとに序列を決めていく。審査委員長の伊藤先生(一橋大学CFO教育研究センター長)は、表彰式の基調講演で5つの点を強調した。
・第1は、財務情報になる前の重要な企業情報にはさまざまな側面があるが、それがDXで全て結び付いていく。常に常識を疑って、変革に取り組むことが求められる。
・第2に、日本は米国に比べてDXに遅れをとっているが、これは効率化やコスト削減を図る「守りのIT」に捉われて、両利きの経営を目指すビジネスモデルの変革に、DXが十分取り入れられていない。
・第3に、DXに関するガバナンスが十分でなく、取締役会で活発な議論がされるところまでいかずに、DXによる大きな変革が先送りされているのではないか。
・第4に、「DXによる革新」を企業文化や風土の変革にまで持っていく必要があるが、そこまでの取り組みが多くの場合不十分である。
・第5に、DXに投資家は何を求めているのか。デジタル化、デジタルによるビジネスモデルの変革で、どのような競合優位を築いていくのか。無形資産の中のDXを、もっと可視化してほしいと望んでいる。
・表彰式において、グランプリを受賞した中外製薬の奥田社長は、自社が2030年に向けてトップイノベーターになろうというビジョンの中で、①R&D、②オープンイノベーションと並んで、③DXの推進がカギを握ると強調した。
・中外製薬のDXは、1)基盤作りを終えて、2)バリューチェーンの効率化、3)革新的な新薬開発に向けてのエビデンス創出、4)AIや新しいデバイスも活用した革新的サービスへ展開していくと語った。
・同じくグランプリを受賞した日本瓦斯の和田会長は、①エネルギー版スマートホームからスマートシティへ、メタバースによるビジネス展開を目指す、②データの収集を担うデータ道の駅から、シェアリングエコノミーの実践を図る、③AI、BC(ブロックチェーン)などを活用して、スマホ1つで業務がすべて推進できるようなプラットフォームを作っていく、と大きな構想の実装を表明した。
・LPGのサプライチェーンをベースとしながら、すべてのサービスを無人で行い、いずれはエネルギーサービスを軸に、B to B型のAmazonを目指すという。大きな夢を描くだけではなく、年々きちんと手を打って、DXの先進企業として活躍しているところが素晴らしい。
・DXは、単なる手段ではない。投資家として、企業がDXにどのように取り組んでいるかを知ろうとしても、なかなかその実態が掴みにくい。なぜか。
・3つの要因があろう。1)企業の取り組みが十分でない、2)新しい取り組みを始めているが、まだ成果に結び付いていないので、企業としても話すことをためらう、3)いずれ成果が出たら開示する方針としても、DXの成果をどういうKPIで示すべきか迷っている。
・今回の「DX銘柄」の評価基準は、企業が実践的に取り組みやすいフレームワークとなっている。投資家もこの評価基準で企業をみていくと、DXの先進性や革新性を的確に判断することができよう。実際、6つの項目ごとに定性評価してみると、具体的なイメージが固まってくる。
・DXでビジネスモデルを革新しようという企業が続出することを期待したい。そういう企業にいち早く投資したいと思う。
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