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インパクトHD、店舗データベースを活用した「SDGs販促」を展開 販促プロモーションの効率化を目指す

投稿:2022/09/26 15:00

会社概要

福井康夫氏(以下、福井):本日はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございます。よろしくお願いします。インパクトホールディングスは2004年に設立し、2012年にマザーズ上場した銘柄です。今年はちょうど上場10周年にあたります。

ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、3年前のこの時期はインドのビジネスにおいて非常に大きなトラブルに見舞われたため、第2四半期決算を発表することができませんでした。その渦中に一度監理ポストへ入ることもあり、大変苦労しました。

3年が経った現在は、これからご説明させていただく店舗データベース、いわゆるデータベースマーケティングを行う店頭プロモーション支援会社として、業績も非常に好調な推移をみせています。10周年でもある今年は、さらに羽ばたきたいと思っています。

株主については博報堂、そして3年前のインドにおける混乱時に支援していただいた経緯から双日という会社が、我々の主要株主になっています。

経営陣紹介

福井:私は大学を卒業したあと、三和銀行に勤めました。次に流通業であるセブン-イレブン・ジャパンに転職し、35歳でこの会社を起業しました。私だけでなく、当社はセブン-イレブン・ジャパンやイトーヨーカ堂といった、流通業出身者が非常に多い会社です。日本の技術の仕組みや現場をよく知っている人間がマーケティング支援に取り組んでいる点が、当社の最大の特徴となっています。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):流通業の土台があったとのことですが、創業したきっかけを教えていただけますか?

福井:そもそも、父や祖父が千葉県で小規模ながら商売を行っていました。どちらもうまく進められず、最終的には会社を畳む結果になってしまいましたが、2人の背中を見ていて、自分もいつかは挑戦したいという思いを持っていました。

坂本:「怖い」ではなく「やりたかった」のですね。

福井:はい。母親は非常に嫌がっていましたが、いつかは起業したいと思い、最初に銀行の仕事を選んだあと、セブン-イレブン・ジャパンに転職しました。当時から続くNo.1の技術を学び、糧として、流通に関わる領域で何らかの商売ができないかということで、起業しました。

ちなみに、私は千葉県出身なのですが、千葉県人口のちょうど300万人目に生まれました。当時は千葉県知事から表彰され、新聞にも載りました。自分は生まれながらラッキーなのです。インドにおける混乱時や、そして監理ポストに入ってしまった際も、ラッキーで切り抜けてきました。10周年は、さらにラッキーなことに取り組んでいこうと考えています。

坂本:今日はおもしろいお話を期待しています。よろしくお願いします。

事業領域と事業実績

福井:こちらに記載のとおり、当社は上場までは主にラウンダーと覆面調査のサービスに主軸を置いていました。上場後はさまざまな会社をM&Aしたり、新たなサービスを開発したり、会社を作るなどしました。現在は10社のグループで事業を展開しています。

ところで、「ラウンダー」という言葉は、聞き慣れずご存じない方も多いかと思います。こちらはメーカーの立場で、店頭に特化した営業を代行する仕事です。例えば、我々が取り引きをしている企業の名前でドラッグストアを回り、「このようなキャンペーンを実施しています。よろしくお願いします」とお話を進めていきます。

本部にはメーカーの営業担当が商談しますが、店舗ごとの訪問や営業活動は我々のような企業へアウトソーシングするケースが非常に多いです。

坂本:確かに、営業担当の数も限られており、店舗で接触する回数も少ないですから、そこは任せて、例えば「棚割をもう少し増やしてほしい」という交渉や、先ほどおっしゃったようにキャンペーンを実施するなど、そのようなかたちで取り組んでいるのですね。

福井:おっしゃるとおりです。全国各地に30万人近い登録スタッフが在籍していますので、我々はいろいろな人材を管理、活用する仕組みを導入して、時には製薬会社、時には食品会社の営業担当となり、いわゆるラウンダーのかたちで全国へ営業代行する仕組みを構築しています。

こちらはメーカーの販促費に寄り添った事業ですが、上場時は覆面調査サービスのほうを大きく扱っていました。覆面調査はお客さまを装い、チェーン店における接客やコンプライアンスの実態を調査するものですが、市場規模が小さいのです。

そのため、上場後は大きい市場で勝負しなければ会社は大きくならないという強い思いがありました。店頭の販促市場が8,200億円あることに注目し、ここで勝負すべきだと考え、ラウンダーから始まり、販売員を派遣するマネキン事業やセールスプロモーションを企画する会社を買収しました。

また、コロナ禍においてデジタルサイネージ事業の業績が最も大きく伸びました。巷で目にすることがあると思いますが、ドラッグストアの棚に置かれている、販促動画が流れる10インチくらいのモニターを扱っています。こちらはimpactTVというファブレスのメーカーからオリジナルブランドとして提供し、シェアの50パーセントを占めています。

スライドにお示ししたとおり、本当に幅広いサービスをご提供できるようになってきており、ある意味、広告代理店と同じことができるようになってきています。我々は自社でスタッフを抱えており、サイネージはファブレスのメーカーであり、利益率が非常に高い販促支援会社、つまり広告代理店のようなことを目指しているとご理解ください。

日本の流通小売及び販促プロモーション業界の現状

福井:現在、コロナ禍により店頭状況は大きく様変わりしています。例えば、客層や客数の変化、そしてECの台頭により店舗のショールーミング化が進んでいます。「ショールーミング」という言葉は耳にしたことがあるかもしれませんが、いわゆる店で見たものをネットで買う、または1度目は店、2度目はネットで買うような消費行動が非常に増えています。

何より、日本は店が多すぎる、つまりオーバーストア状態です。個人的にはスーパーやドラッグストアは、4分の1くらいなくなってもよいと考えるほど、需要と供給のバランスが崩れています。コンビニも同様ですし、販促自体も無駄が多いです。

店舗DBとは

福井:そのような中で、我々には店頭に関する定量・定性データを10年以上蓄積し続けている「店舗データベース(DB)」があり、今期には1,000万件を超える、超ビッグデータとなっています。このDBにさまざまな店舗周辺の商圏を把握するオープンデータを付け加え、さらに最新の店舗リストを常に更新しています。これをAIを使って分析し、「こういうお店に販促すれば売れるよ」という、データベース・マーケティングを前提とした販促の提案をこの2年間で積極的に進めています。

こちらのAIソフトはとある企業製のものですが、大変優秀で、我々のビッグデータの価値が非常に高まりました。

坂本:スライドに示されている御社がこれまで蓄積し続けたデータは、先ほどお話しいただいたような店舗調査や、ラウンダーが在籍していること、広告のサイネージまで携わっているからこそ貯められたデータであるといった点が、大きな強みになると感じました。

商圏や分析に関してお話しいただきましたが、このDBを実際にどのようなかたちで活用できているのかについても教えてください。

店舗DBを活用したSDGs販促事例

福井:例えば、本ページの左側にお示ししたように、デジタルサイネージを使い、店頭で新商品をプロモーションするために、モニターを1,700台購入するお客さまから「予算を取ったから、見積もりを出してほしい」と言われたとします。

従来は、ただ1,700台分として「1台あたり1万円だから1,700万円になる」と見積もりを出します。そうなると「高い」「ちょっと安くしてくれ」といった交渉が始まりがちです。そこで、我々は常に店舗DBを活用し「このような商品であれば、この1,700店舗に展開すれば必ず売れるだろう」という仮説データを提示するのです。

ただし、見積もりの段階では上限100店舗と決めて、サンプルのDBのみを提供します。発注書が来た際にすべて見せるようにしており、このような営業スタイルを徹底しています。

坂本:そうですよね。最初からすべて見せてしまうと、データのみを取られてしまうことや安いところへ行かれてしまうことが起きそうです。

福井:おっしゃるとおりです。サイネージに限らず、販促の什器、ラウンダーなどにおいても同様ですが、要は営業スタイルとして店舗DBの活用を徹底することにより、お客さまが「インパクトホールディングスは単純にサービスを提供するだけではなく、付加価値としてデータベース・マーケティングを提供しながらやってくれるんだ」と認識し、価格の値下げ交渉が起きづらくなりました。ちなみに、店舗DB自体はすべて無償で提供しています。

坂本:そうなのですか?

福井:はい、全部です。

坂本:どこでマネタイズをするのですか?

福井:無償提供する分、サイネージを買ってもらうことによりマネタイズするのです。

坂本:サイネージ代が御社の収入になるということですね。

福井:おっしゃるとおりです。また、ラウンダーについても同様のことが言えます。先ほどのデジタルサイネージの例ですと、1,700台購入される場合、だいたい1台1万円ですので、1,700万円の売上になります。通常は「ちょっと9,000円にしてくれ」と交渉されて1,500万円ほどの売上になるところを、確実に粗利も取るのです。

スライド中央の事例ですと、毎月7,000店舗へ行くと年間3億円くらいの売上になります。こちらも毎年いろいろな値下げ交渉があるはずですが、店舗DBの付加価値により「我々もこのような付加価値を出していますから」と答えられるのです。

坂本:「我々もがんばっているじゃないですか」と言えますね。

福井:おっしゃるとおりです。「このままでも結果が出ますよね」とお伝えできるのです。

店舗DBを活用したラウンダー事例(サンプル:家電メーカー様 商材:掃除機)

福井:10ページの事例をご覧ください。例えば、今まで営業をフォローしていた1,000店舗がありました。それに対し「本当にその1,000店舗が正しいのか」といった仮説を持つべきだと考えています。小売業のメーカーにとっても、機会ロスを埋める行為は一番大事です。チャンスロスがどこかにあるはずなのです。

チャンスロスを見つける方法ですが、まずスライド中央のような仮説を立てます。本ページで紹介しているのは、我々が年間1億円強の仕事を引き受け、取引しているロボット掃除機メーカーです。店舗としてはこの商品を買う客層が多いはずです。つまりポテンシャルは高いが、現状の売上が低いA店舗から徹底的に営業すべきだという仮説を立てます。

坂本:一例ですが、ロボット掃除機ならばスライド左側のように、家がある程度広く、1部屋に1個ロボット掃除機を置けるようなお金持ちが客層になる、というように分析するのですね。

福井:そのとおりです。本来売れるはずなのに今の売上が低い店舗に注目します。通常は今の売上が高い店にばかり行きますが、本来はポテンシャルが低いのに今の売上が高いだけかもしれません。チャンスロスを埋めるため、A店舗に対して勉強会の実施や、サイネージを変えるといった努力を重ねた結果、平均売上が上がってきました。

この事例のようなことを全クライアントに対して積極的に実践し、強烈に業績にも好影響を与えています。「やっぱりインパクトホールディングスって、ビッグデータを活用しながら、現場をよくわかっているね」と言っていただける展開を実現しています。

販促プロモーションの常識を覆すSDGs販促

坂本:これはすごいことですね。当然データも必要ですが、「このようにデータを分析したらいいよ」という司令塔のような人がいることが一番大事だと思います。そのような人がいるのでしょうか?

福井:これは実際に営業が担当しています。

坂本:それぞれの商圏担当の営業が一人ひとり独自で考えているのでしょうか?

福井:これまでお話ししたような販促の効率化や、店舗DBを活用した無駄の削減、例えば紙からサイネージへ切り替えを勧めるような取り組みを「SDGs販促」と独自に名付けて展開しています。このようなネーミングですと、メーカーも「上層部に稟議を上げやすい」とお声をいただきます。

坂本:なるほど。確かに、とりあえず話は聞いてもらえそうです。

福井:おっしゃるとおり、まず一番大事なのは地域のお客さまに話を聞いてもらうことです。

坂本:営業の基本ですね。

シナジーを生み出す文化づくり

福井:そのような仕組みの中、グループ10社を横断してSDGs販促推進を行うプロジェクトチームを作成しています。毎週2回くらいの頻度で打ち合わせを常に実施し、「クライアントの要望に対して、どのように寄り添えばよい仮説が作れるか」について知恵を出し合っています。

私が推進すればある程度はできると思いますが、私だけではなく、現場が持っている知恵をみんなで出し合い、1つの仮説を求めて進める考え方を作り上げようとしています。我々は2026年にむけた中計として、売上300億円、営業利益60億円を目標にすると発表しています。あわせて利益率をどんどん上げていくことも目指しています。

また、中計達成のための大きなテーマは、グループ全社で顧客貢献最大化を掲げています。非常に大きな付加価値を見つけて進めているのだから、グループ10社が競い合うよりは、自己犠牲の精神ではありませんが、そのようなものも含め、グループ全社でシナジーを創出できる状態になればと思っています。

坂本:非常によくわかりました。もともとサイネージはSDGsの一貫ですからね。

福井:そのとおりです。サイネージはSDGsなのです。

シナジー営業 (既存顧客へのクロスセル)の強化

福井:そのようなシナジーによりいろいろなサービスを導入していただくことで、わかりやすく当座が開けているわけですので、そこに対し「こんなことも、あんなこともできるようになりました」という営業を進めていく状況です。

坂本:担当者が行くということで、一貫して営業されるということですね?

福井:そのとおりです。他に同行訪問などもあります。このようなことをグループ間で行うのは重要なことです。

リノベーション什器を活用したSDGs販促事例

福井:SDGs販促として、もう1つ、このようなことも行っています。2022年12月期の下期は非常に引き合いがあるのですが、倉庫に眠っている数百台から1,000台の、捨てる予定の販促物やラックを我々がいったん預かり、最新のサイネージを付けた上で再出荷するというものです。

坂本:改造してということですね?

福井:そのとおりです。このリノベーション什器の活用が好評です。お客さまにとっては捨てるためのコストがかからなくなりますので、非常によいのです。一方で、我々としては、資材を無料、もしくは非常に安価にお借りしてリノベーションしたものをリーズナブルな価格設定できちんと売ることにより、非常に利益率の高い商売ができます。このようなことは大手の会社にはできないことです。

坂本:一貫して頼んだほうが安いため、そのようなことはしませんね。

福井:電通や博報堂が実施しないのは、このようなことを提案すると前年比で売上が下がることが前提になってしまうという理由もあります。我々は新規でもともとがゼロのため、プラスアルファで行うという意味でお客さまにも受け入れていただいている状況です。

坂本:面白いですね。

当社グループが実現したいSDGs販促の世界観

福井:SDGs販促の世界観の要素をご提案に必ず入れて、サスティナブルにして無駄の削減を目指します。そして、販促の施策をチェーンで統一することは止めて、店舗のポテンシャルを十分に把握します。また、価格も重要です。代理店に丸投げするようなことはいろいろな意味でよくないですし、健全ではないと思っています。

今、我々がお付き合いしているメーカーの最大の課題は、NB商品が大幅に値上がりする中で、今後、年末年始の業績がどのようになるかということです。しかし、販促予算は広告宣伝費と違いそれほど急激に上下しません。販促は非常に大事ですので、メーカーによる部分も大きいです。

例えば「今年の業績が悪いからイオンの販促費は半分になりました」とメーカー側は言えません。ですので、予算は堅いのですが、販促費を大事に使おうとする気運は非常に高まっているのです。

つまり、無駄なマージンを払うことや無駄なことはやめるような提案が受け入れやすくなると思っています。我々にとって、この値上げで業績がどのようになるかという状況は、大きなチャンスだと思っています。

店頭プロモーション市場環境

福井:最終的には8,200億円の大きな市場に打って出ていますが、我々はまだ100億円、1パーセントを少し超えたくらいのシェアしかありません。もう本当にわずかです。ですので、伸びる余地はいくらでもありますし、エッジの効いたソリューションがあるため、それを十分にご提案していきたいと思っています。

坂本:おそらく大手企業も上り続けている要素はある程度持っていくと思いますが、御社の今の進め方で1パーセント伸びるには、どのくらいの期間がかかる予定ですか?

福井:現在、年間で約25パーセントずつというオーガニックな成長の中で、2026年度には300億円を予定しています。

坂本:3パーセントくらいですね?

福井:そのとおりです。もちろん、この他にもM&Aなどの視点も含めて、もう少しスピード感のある成長をしていきたいと思います。

実は前回の中期経営計画は、来年が達成年度になります。2023年で売上高180億円、営業利益20億円という目標を立てていましたが、効果が期待できるM&Aも考慮し、1年前倒しして2022年度での早期達成を目指しています。

売上高が500億円になるとシェアが5パーセントくらいになり、我々の存在意義が上がってきますが、その時こそ、さっきお話ししたようなSDGs販促の考え方を無視できない状況になると思います。ですので、売上高が300億円から400億円を超えてくると我々の成長スピードは上がり、500億円や1,000億円になれば、販促業界に新しい価値を提供できるのではないかと思っています。

坂本:確かに、大手企業ではきめ細かなアドバイスや販促を提案することは困難なため、投げるしかありませんね。

福井:そうなのです。ですので、大事なお金をどのように使うかという時に、無駄なことはやめるという視点が大事なのではないかと思います。

坂本:それが普通の考え方になりつつありますが、そうなった時に御社のパフォーマンスが上がるということですね。

福井:おっしゃるとおりだと思います。

新型コロナウイルスの影響

福井:現状の数字については、スライドをご覧いただければわかると思います。我々の事業はHR、IoT、MRとありますが、HRはセールスプロモーション事業の企画や、先ほどのラウンダー事業、販売員の派遣、そしてBPOセンターがあります。IoTはデジタルサイネージ事業で、MRはマーケティングリサーチ事業です。

店舗DB利用企業数、プロジェクト件数の拡大

福井:今回の中間決算でもHRとMRは順調に推移しており、特にHRは店舗データベースの価値もあり大変好調な数値になっています。先ほどお話ししたとおり、店舗データベースを無償で提供していますが、前年同月比で、社数は100社、プロジェクト数は194件増加しました。それに伴いラウンダー事業の業績も急激に上がり、営業利益は前年同期比で1億4,000億円近く上がっています。

IoTソリューション事業 ー 増収減益

福井:ただし、IoTについては、第2四半期は前年同期比で減収減益でした。その影響で発表翌週の株価が15パーセントくらい下がりましたが、今はだいぶ回復している状況です。減収というのは、第3四半期、第4四半期にクライアントの都合で期ズレが起こったことが原因です。減益というのは、急激な円安による為替の変動をきちんと予期していなかったため、影響を大きく受けてしまったことによるものです。

販促・店舗DX推進

福井:我々はこのような販促領域のサイネージ、非販促領域、オンラインシステムを使った時に課金するストックの3層で事業を行っています。

IoT市場環境

福井:デジタルサイネージの市場は1,100億円ありますが、そのうち我々が一番得意としている販促領域のサイネージの市場規模は50億円です。4年前までは販促領域のサイネージしか行っておらず、その当時の売上高は10億円程度で、今は25億円程度です。

坂本:ほぼNo.1シェアですね。

福井:そのとおりです。ただし、販促領域のサイネージのみで勝負するのでは頭打ちになることが見えているため、非販促領域で勝負すると決めたのが、3年、4年前になります。

非販促領域で事業拡大 ー 店舗DX

福井:例えば、昨年は某大手回転寿司チェーンでテーブルトップオーダーシステムを導入しました。今年は、日本全国で誰でも知っている某ファミリーレストランチェーンや、牛丼のチェーン店で手洗いサイネージを導入し、来年はナンバーワンカフェチェーンのレジ前ディスプレイの入れ替えを行います。また、ハンバーガーチェーン店でもタイマー管理のサイネージを導入する予定です。

つまり、店舗DXのような流れの中で我々のデジタルサイネージを使っていただけるケースが非常に増えており、さまざまなチャンスがあります。しかも1,000億円の市場に挑戦しているわけです。第2四半期の1回くらいは欠けたり、ズレたり、円安の影響もありますが、チャンスはいくらでもあるし、今期はこの中でまた大きく入るものもあるわけです。

IoT市場環境

福井:そのようなことで我々としては、1,000億円の市場に挑戦している中でまだ30億円、つまり3パーセントしかできていません。非常に多くのチャンスが埋もれているし、我々が活躍できる可能性は大変大きいと考えています。

IoTソリューション事業 ー 増収減益

坂本:マーケットとしては伸びるものの、足元がいまひとつでしたが、部材高の影響などもあるかと思います。そのあたりについてはいかがでしょうか?

福井:部材については、我々は昨年、予算に応じて半導体などを押さえて投資しています。ですので、昨年、今年と在庫がないということはありません。利益の面はあくまで為替リスクをきちんと考慮していなかったことが原因です。株主の双日からは、「今時、為替リスクを残して商売するところはない」と注意を受けました。また、今、部材はけっこう余ってきています。

坂本:オリジナルやアナログのものはまだですが、シンプルなものは余ってきているということですね。

福井:半導体も、来期はどのくらいかという話でしたが、今は在庫に余裕があるため、第2四半期で押さえる必要はないと思っています。

坂本:それでしたら、為替も押さえているということですので、リスクになりそうにありませんね。

福井:そのとおりです。あとは、一つひとつの伸びです。

坂本:一つひとつの商圏の発展によりますね。

非販促領域で事業拡大 ー 店舗DX

福井:非販促というのは当然コンペティショナルになるわけです。例えばわずか12台のサイネージに対して、顧客に寄り添ってスピード感をもってカスタマイズすることがサービス全体として非常に大事です。

我々はキーエンスという会社の勉強をたくさんさせてもらっています。また、キーエンス出身の社員もいて、彼らのやり方を勉強させてもらっています。販促全体でも、顧客にいかに寄り添いスピード感を持って提案するか、またオリジナル感、カスタマイズを十分できるかということが、これからの変化の激しい時代を生き抜くために非常に大事なポイントだと思います。

IoT市場環境

福井:もう1つのポイントは、どこの市場で勝負するのかという、市場の選択です。ですので、我々は300億円、500億円、1,000億円になるということを、デジタルサイネージで実際に示していきたいと思います。

増井麻里子氏(以下、増井):飲食チェーンのことでおうかがいします。昔はサイネージの導入には高額な費用がかかるため躊躇される部分が多かったと思いますが、人件費が上昇してきたことによる影響はあるでしょうか?

福井:やはり省人化には高いニーズがあります。一方で、デジタルサイネージ自体の価格は下がってきました。我々のサイネージは大変リーズナブルで、例えば某寿司チェーン店と今回の某大手ファミリーレストランも、以前に大手会社に発注した時の半分程度の導入コストになっています。

さらに、今後の店頭での一番の変化として、インバウンドのお客さまが来るようになった時、確実に人手不足になります。ですので、デジタルサイネージを導入してIT化できないか、DXできないかというようなニーズは大幅に増えると考えています。

坂本:英語や中国語対応ボタンがだいたいありますね。

福井:そのとおりです。販促も、例えばサイネージを使ってBluetoothで通信すると、その人の発する言葉を拾って他言語で再生することもできます。このようなものも非常にニーズが高いと思います。

MRソリューション事業 ー 増収増益

福井:MRについては、マーケティングリサーチでさまざまな調査を行うものです。先ほどお話ししたとおり、店舗データベースは付加価値にならないということもあり、順調に伸ばしているかたちです。

中期経営計画2022-2026 ー グループ連結

福井:中期経営計画は、先ほどお伝えしたように、2026年12月期で連結売上高300億円、営業利益60億円を掲げています。

M&A方針

福井:そのような中で、オーガニックな成長とは言っても、M&Aというのは非常に大事だと思っています。我々は8,200億円の販促の領域をとる、1,000億円のサイネージの領域をとるという時に、シナジーが効くようなM&Aをぜひ行っていきたいと思います。理念経営や、中・大規模についてもです。

また、データベースの価値を高めるようなM&Aも検討したいと思います。例えばPOSデータを大量に保有している、何らかの顧客データを大量に保有しているということも、我々としては今後の利益につながる価値になるのではないかと思っています。国内の事業はこのようなかたちです。

シナジー営業(既存顧客へのクロスセル)の強化

坂本:シナジーの部分で、御社はだいぶM&Aを続けてきたと思います。データベースのシナジーはありますが、それ以外の部分の未完の部分はあるのでしょうか? スライド12ページに、ワンストップでして支援できるという内容があり、スライド右側の表では全部に丸印が付いています。

福井:左端が我々のサービスメニューの一覧ですが、これらを増やすか、もしくは深みを持たせたいと思っています。ですので、シナジーでM&Aを検討するというのは、この横軸のメニューがさらに増えていくか、広がっていくかで考えるイメージです。

M&A方針

坂本:今までは小・中規模案件のM&Aを行っていらっしゃいましたが、今後の成長戦略では、中・大規模案件のM&Aを行っていくとあります。このあたりについてはいかがでしょうか?

福井:いろいろと検討しています。

我々はインドの混乱から回復しましたが、当時は本当に銀行も金を貸してくれないような状態になってしまい、本当に大変でした。双日と提携したことによって信用度が高まって、今はデットの調達もいくらでもできますし、なおかつ自己資本比率も50パーセントを超えています。

そのため私は、今の財務状況でいけば、基本的にM&Aは借入できちんと行えると考えています。もしかしたら、会社の価値を高めた後にエクイティを募る選択肢もあるかもしれませんが、ワラントは絶対に行いません。

一番よいのは、時価総額を500億円くらいにして公募増資を行うことです。しかし、今の株価では正直厳しいです。どこかの企業に事業提携絡みで、例えば双日にさらに持ってもらうとしても、私は今の株価では低いと思っています。そのため、デットで借りられるのであれば借入で行いたいと思っています。

坂本:ワラントを行わないと明言される社長はあまりいません。資金の自由度はワラントのほうが高いと思いますが、いかがですか?

福井:そうだとしても、私は絶対に行いません。ワラントを行わずに、プライムにいくタイミングなどで公募増資をしっかりと行っていけることが、本当は一番理想的だと思っています。

私は銀行員だったため、借入に対する抵抗感があまりありません。デットで借りられれば一番資本コストが安いのです。わずか200億円程度のエクイティを残すのは、資本コストが非常に高くてもったいないと思います。

双日には時価総額200億円くらいで今くらいの株価で株を発行しましたが、この時は仕方がありませんでした。やはり双日なくしては我々の信用力は回復できませんでした。そのようなものを活用しながら、現在はしっかりと復活をしているため、今期の予算も含めて、なんとしてでもやり遂げようと思っています。

質疑応答:追加で資金を調達した場合の使い道について

増井:「もし双日から追加出資を受ける場合は、その資金をどこに使うか知りたいです」とのご質問です。

坂本:双日と限定しなくても、資金を調達した場合についてお聞きしたいと思います。

福井:先ほどお話ししたように、現在の株価では低すぎるため、今すぐ何か行動を起こそうということは基本的には考えていません。

我々はPERが17倍程度ですが、PR会社やSP会社でも20倍を超えている会社はたくさんあります。我々はデータベース・マーケティングを軸に運営していますが、データベース・マーケティングを行うような会社であれば、30倍程度は普通にあるため、我々の値は低いと思っています。そのため、そのあたりをしっかり成長させた上で増資などを考えたいです。その中では、資金はやはりM&A関連が最も大きいと思っています。

質疑応答:デジタルサイネージの効果について

坂本:「デジタルサイネージについて、お試しで貸し出すこともあるのでしょうか? そのよさを理解できなければ導入に至らないと思いますが、提案の仕方などの一例があれば教えてください」とのことです。

福井:これについては、販促と非販促とでは少し違います。先ほどの某ハンバーガーチェーンのような例では、やはり使ってみないと使い勝手のよさがわかりません。このような場合はオリジナルで設計して作らせてもらいます。

しかし、販促用のサイネージの効果については、すでにこれだけ売場に設置していてPOSがどれだけ上がったのかというデータがいくらでもありますので、お試しで効果の有無がわからないと言う方は、はっきり言っていません。

坂本:質問者の方は昔の小売をイメージしていますが、小売の各社もかなりデータマーケティングに精通した人が担当になっており、すでにある程度その活用法が全社で行き渡っているため、その効果は計算できているということですね。

福井:おっしゃるとおりです。デジタルサイネージに効果がないと言う方はいません。そのため、あれだけ多く導入されていて、年間20万台から30万台出荷されているのです。

一方で、今後のポイントになるのは、店頭で流すコンテンツです。数年前までは、ただテレビCMと同じものを流していて、お客さまは「あっ、テレビで見たやつだ。買おう」となっていました。しかし、店頭ではよりよいコンテンツがあるのではないかと思うのです。

坂本:今はどのような感じなのでしょうか。

福井:例えば、タレントを起用してテレビCMを作る時に、そのタレントに店頭用の素材も作ってもらうということをけっこう行っています。

坂本:CMを撮る時に数パターン撮影して、CMで撮った分と店頭に流す分をパッケージで契約する仕組みにすることで、コストも安くなるということですね。

福井:そのとおりです。例えば、「ちょっとそこをお通りの奥さん」などとタレントに言ってもらうと、お客さまがぱっと振り向いて見てくれるのです。「今晩のおかずは決まりましたか?」などといった言葉をタレントに言ってもらい、そのメーカーの商品に顔を向けてもらうのです。

そして、我々の顔認証のソフトを積んだサイネージであれば、何人くらいの人が実際にそのサイネージを見たのか、何秒くらい見ていたのかというような効果検証もできます。

坂本:例えば、60歳代の女性というようなスクリーニングもできるのですね。

福井:今はマスクをしているため、正確にはできないところもありますが、だいたいはスクリーニングできるようになっています。ある意味、視聴率のようなのがわかるようになっているのです。そのようにして、これからはどのような動画やキャッチがお客さまに響くのかを研究していくのです。

坂本:スクリーニングの中でABテストを行っていくような感じですね。例えば、60代女性がターゲットにもかかわらず振り向いた人が40代男性であれば、「これではよくないからサイネージを差し替えよう」となるわけですね。非常に面白いです。

福井:例えば、お店によっても、こちらは60代が多くこちらは40代が多いということがあれば、それに応じてコンテンツを変えることや、朝昼晩の時間帯によって変えることもできます。このような細かいことができるのが、オンラインのデジタルサイネージです。

やはり日本のように消費が成熟している国では、これだけきめ細かい販促活動をしないと売れないのです。しかし、今後はインド、ベトナム、インドネシアといったアジアでも、どんどん消費が成熟していきますので、同じようなきめ細かい対応が求められます。この中期経営計画では入れていませんが、我々はどこかのタイミングで、双日と組んで、アジアにも再び進出していきたいと考えています。

坂本:なるほど。たしかに日本はきめ細かい販促が好きですよね。しかし海外、例えば米国などもそのような販促になっているのでしょうか? 海外事情はどのようなものなのでしょうか? 

福井:アメリカですと、例えばウォルマートは非常に流通がしっかりしており、そのようなマーケティングに対してコストもかけていますし、いろいろと知恵を絞っていると思います。我々も日本にウォルマートコネクトという広告代理店を持っており、実際に店頭をメディア化して販売することなどで収益を上げています。

しかし、日本はなかなかそうはいきません。日本の場合は小売業が儲からないことが多いですし、オーバーストアや売り場の薄さ、インフラコストの高さなどの問題もあります。とはいえ、例えば九州のトライアルカンパニーという企業は、けっこうそのようなことを行っています。本当はイオンが行えば日本の流通も変わるのではないかと思いますが、なかなか難しいという感じがします。

質疑応答:双日とのシナジー効果について

坂本:「双日とのシナジー効果について、為替も含めてより詳しくお話しいただけますか?」というご質問です。

福井:双日はリテール領域にも非常に力を入れていて、先日も水産加工品のマリンフーズというメーカーをM&Aしました。また、ロイヤルホストの筆頭株主になったり、いくつか商業施設やアパレルメーカーをお持ちになっていたりもします。

来年あたりからは本格的に、けっこう大きな数字でシナジーが出ると思います。もうすぐ簡単なリリースができる案件もあると思いますが、数億円単位の仕事も現在ご一緒しています。

我々は、双日のいろいろなリテールのマーケティング支援という側面で、使い勝手のよいマーケティング企画会社という位置付けになっていきたいと思っています。

坂本:グループ会社ではなく、資本が入っているシナジーを活かしていくということですね。

福井:独立系の商社ですし、私ももともと三和銀行という銀行にいましたので、けっこう社風が似ているのです。双日には非常に助けていただきましたので、必ず恩返しをしたいと思っています。

坂本:たしかに、資源などではなく、小回りがきく経営をされていますよね。

質疑応答:機関投資家との面談について

坂本:国内または海外からの機関投資家との面談は増えているのでしょうか?

福井:今はZoomなどで面談を行っています。シンガポールや香港の企業も、1社か2社くらいは我々の株を持っていただいていますし、毎回ミーティングでウォッチしてくださる方々もいます。

実は今、我々の本社の8階をショールームにしており、機関投資家の方にも何社かお越しいただいてご案内しています。10月からは本格的に展示会を行う予定です。先日、投資家の方がちょうどお盆か夏休みでシンガポールから東京に来ていたため、ご覧いただいたということもありました。

坂本:私も行ってみたいです。

福井:ぜひお越しください。

坂本:ちなみに、機関投資家からの質問はどのようなものが多いですか? 

福井:ずっとウォッチしてくださっている方は定例的な質問になってしまいますが、例えば今回であれば「IoTの見通しはどのようになっているのか」ということなどです。

毎回お伝えしているのは、我々はまだ本当に駆け出しで、市場の規模でいえば1パーセントから2パーセントしか占めていない会社ですので、今後の余地はたくさんあるということです。店舗データベースの価値のバージョンアップなどについて話をさせてもらっているケースが非常に多いと思います。

坂本:やはり質問者もそのあたりへの興味が大きいのですね。

福井:そうですね、非常にありがたいです。

質疑応答:今後の展望について

坂本:最終的な展望に関しておうかがいします。時価総額はどれくらいを目指していますか? また、国内でも飽和があると思いますので、将来の国内と海外のバランスや割合のようなものがあれば教えてください。

福井:先ほどお話ししたように、今日本で行っているようなマーケティングサービスを、どこかのタイミングで双日と一緒にアジアに対しても行っていきたいと思っています。なおかつ、日本においては2026年に売上高300億円、営業利益60億円を目標にしています。

やはり売上高が500億円くらいになると、シェアは10パーセントまではいかないものの、我々の立ち位置が非常に隅に置けない存在になっていきます。「店頭プロモーションを考えるにあたってはインパクトホールディングスに相談すべきだろう」という1つの選択肢に必ずなるのではないかと思います。

そして、最低でも売上高1,000億円以上になると、販促業界において我々の与えられる影響力が高くなってきます。つまり我々が考えている、無駄の削減やSDGsのような視点も含めて、社会によい影響を与えられる存在になるのではないかと思っています。ここで「1兆円の会社になります」と言うのは簡単ですが、我々としては最低でも売上高1,000億円の会社になりたいと思っています。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:インドコンビニ事業の今後の計画について教えてください。

回答:新たなパートナーが決まるまでは進展がないため、進展があり次第随時開示させていただきます。

<質問2>

質問:IoTセグメントは、例えばFY2021に比べると件数自体は減っていますが、売上が伸びているのは大型化・高単価化と考えてよろしいでしょうか? またその場合、今後もその流れは続きますでしょうか?

回答:はい、高単価化が進んでおります。理由としては、販促用サイネージに関しては店舗DBが付加価値となり価格競争に巻き込まれなくなってきていることと、オンラインサイネージ(高付加価値端末)の出荷が増えているためです。

また、非販促用サイネージに関しては、店舗DXや広告メディアサイネージのインフラとしての端末提供など、特機(顧客仕様に合わせたカスタマイズ端末)案件の引き合いが増えているため、今後もこの流れは続くと見込んでおります。

<質問3>

質問:本決算のガイダンスを見送ったあとにストップ安まで売られたと思いますが、今後も本決算ガイダンスは出さないという方針でいかれるのでしょうか。

回答:現時点では本決算でガイダンスを出す方向で検討しております。

<質問4>

質問:分割などで株価上昇は考えないのでしょうか?

回答:さまざまな株価向上施策等は随時検討しておりますが、現在の株価・時価総額では分割は考えておりません。

配信元: ログミーファイナンス
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