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イーエムシステムズのニュース
■中長期の成長戦略
1. 新中期経営計画で「完全ストック型」への転換に挑戦中
EMシステムズ<4820>は医療・介護業界の動向を見据え、永続する企業を目指し、2018年5月に新中期経営計画を発表した。業績好調で企業体力があることを踏まえ、ビジネスモデルの変更という大きな改革を含めた内容となっている。事業環境の認識としては以下の3点を重視した。
(1) 2025年問題や超高齢社会を踏まえ、薬価引き下げの影響が出ることが想定される。
(2) 顧客の業界においては、引き続き厳しい状況が続くと見込まれ、医療・介護業界の再編が加速することも予想される。
(3) 政府は、医療等分野におけるICT化の徹底的な推進を行う方針を示しており、介護を含めた他職種での情報連携に対するニーズが今まで以上に高まることが予想される。
基本戦略としては、(1)医療・介護情報連携の実現、(2)先進テクノロジーを活用した高付加価値製品の提供、(3)操作の簡素化・自動化とシステム費用の大幅削減といった3本柱。これらにより、顧客数の拡大を図り、2023年3月までに、医科システムは10,000件(シェア10%)、調剤システムは25,000件(シェア50%)、介護/福祉システムは10,000件(シェア5%、2019年のM&Aにより既にこの数値を超えた)の確保を図る。これまでの初期料金+課金の「一部ストック型」から「完全ストック型」へのビジネスモデルの変更を行うという大胆なプランである。この、ビジネスモデル切り替えの過程で一時的に業績が低下するが、ユーザー数の増加に伴う課金売上の増加で、2023年3月期には営業利益で4,552百万円、営業利益率25.2%を達成する計画である。
2. 次世代戦略サービス「MAPsシリーズ(医科、調剤)」をリリース
同社は2018年11月に、医科・調剤・介護/福祉の垣根を越えた業界初の「共通情報システム基盤」である「MAPsシリーズ」を発表し、既に医科向けと調剤向けが出荷されている。同社の次世代を担う戦略プロダクトであり、新中期経営計画の実現は、このサービスの成否にかかっていると言っても過言ではない。その主な特長は(1)操作性を兼ね備えた低価格クラウドサービス、(2)AIなどによる支援機能、(3)一体開発による医科・調剤・介護/福祉従事者間連携機能、である。
(1) 操作性を兼ね備えた低価格クラウドサービス
同社は「MAPsシリーズ」開発に際して、コスト面でも、機能面でも圧倒的なプロダクトを開発して業界を変えることを念頭においてきた。コスト面では劇的な低価格を実現するために完全クラウド型にたどり着いた。クラウド型はハードウェアに依存しないので、極端にいえば市販のパソコンでも導入が可能だ。コストのかかる要因となっていた人的なサポート(設定、インストラクションなど)を前提とせず、ユーザー自身での設定が容易で直感的でスピーディな操作が可能なシステムに仕上げた。そのため、通常のクラウドシステムはオンプレミス版をクラウド化するアプローチを取るが、今回は一からクラウドを前提に開発した。結果として、導入コストは劇的に下がる。医科向けで比較すると、通常のオンプレミス版だと初期費用だけで400万円~500万円するものを、「MAPs for CLINIC」では初期ライセンス費用0円、パソコンを数台導入する費用だけになる。また、月額利用料金も月額2万円から(平均的なクリニックで4台想定、月額3.5万円)とリーズナブルに抑えられている。初期投資+5年間ランニングコストで計算すると、従来比で半減するため、顧客には大きなコストメリットが発生する。
(2) AIなどによる支援機能
「MAPsシリーズ」は価格が安いだけではなく、機能面でも過去のプロダクトを凌駕する高機能・高付加価値である点に特長がある。その一例が「高度なクラウド型問診」機能である。NECと共同開発されたこの機能は、最先端AI技術群「NEC the WISE」が活用されたもので、患者の症状に応じて異なる問診内容が表示される。専門外の診療科目においてもより的確な診察が可能になるため、「かかりつけ」と「専門医」を兼ね備えた診療を支援する。
(3) 一体開発による医科・調剤・介護/福祉従事者間連携機能
同社は「MAPsシリーズ」でシェア拡大だけを狙う訳ではない。医療・介護業界で共通的に必要となる計算ロジックを持つ共通エンジンを他社にも供給するなど、自社だけでなく業界全体の低コスト化、品質向上を図る。これらの施策により利用者を増やすことで、同社のシステムを医療・介護業界におけるデファクト・スタンダードとして、技術面・価格面など業界のリーダーシップを取っていく考えである。既に複数の同業他社との間で共通部分(エンジン、マスタ等)のOEM提供の案件が進んでいる。
同システムの展開については、若干リリースが遅れたものの、医科アプリ及び調剤アプリの出荷が開始された。さらに介護/福祉アプリについても既に開発に着手しており、2021年3月期からは全タイプ(医科、調剤、介護/福祉)がそろう予定。「医科から入り関連する調剤・介護への影響度を広げる」、「調剤から入り関連する医科・介護への影響度を広げる」といった戦術を3方向からできるようになり、同社の強みが十分に発揮されるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
<SF>
1. 新中期経営計画で「完全ストック型」への転換に挑戦中
EMシステムズ<4820>は医療・介護業界の動向を見据え、永続する企業を目指し、2018年5月に新中期経営計画を発表した。業績好調で企業体力があることを踏まえ、ビジネスモデルの変更という大きな改革を含めた内容となっている。事業環境の認識としては以下の3点を重視した。
(1) 2025年問題や超高齢社会を踏まえ、薬価引き下げの影響が出ることが想定される。
(2) 顧客の業界においては、引き続き厳しい状況が続くと見込まれ、医療・介護業界の再編が加速することも予想される。
(3) 政府は、医療等分野におけるICT化の徹底的な推進を行う方針を示しており、介護を含めた他職種での情報連携に対するニーズが今まで以上に高まることが予想される。
基本戦略としては、(1)医療・介護情報連携の実現、(2)先進テクノロジーを活用した高付加価値製品の提供、(3)操作の簡素化・自動化とシステム費用の大幅削減といった3本柱。これらにより、顧客数の拡大を図り、2023年3月までに、医科システムは10,000件(シェア10%)、調剤システムは25,000件(シェア50%)、介護/福祉システムは10,000件(シェア5%、2019年のM&Aにより既にこの数値を超えた)の確保を図る。これまでの初期料金+課金の「一部ストック型」から「完全ストック型」へのビジネスモデルの変更を行うという大胆なプランである。この、ビジネスモデル切り替えの過程で一時的に業績が低下するが、ユーザー数の増加に伴う課金売上の増加で、2023年3月期には営業利益で4,552百万円、営業利益率25.2%を達成する計画である。
2. 次世代戦略サービス「MAPsシリーズ(医科、調剤)」をリリース
同社は2018年11月に、医科・調剤・介護/福祉の垣根を越えた業界初の「共通情報システム基盤」である「MAPsシリーズ」を発表し、既に医科向けと調剤向けが出荷されている。同社の次世代を担う戦略プロダクトであり、新中期経営計画の実現は、このサービスの成否にかかっていると言っても過言ではない。その主な特長は(1)操作性を兼ね備えた低価格クラウドサービス、(2)AIなどによる支援機能、(3)一体開発による医科・調剤・介護/福祉従事者間連携機能、である。
(1) 操作性を兼ね備えた低価格クラウドサービス
同社は「MAPsシリーズ」開発に際して、コスト面でも、機能面でも圧倒的なプロダクトを開発して業界を変えることを念頭においてきた。コスト面では劇的な低価格を実現するために完全クラウド型にたどり着いた。クラウド型はハードウェアに依存しないので、極端にいえば市販のパソコンでも導入が可能だ。コストのかかる要因となっていた人的なサポート(設定、インストラクションなど)を前提とせず、ユーザー自身での設定が容易で直感的でスピーディな操作が可能なシステムに仕上げた。そのため、通常のクラウドシステムはオンプレミス版をクラウド化するアプローチを取るが、今回は一からクラウドを前提に開発した。結果として、導入コストは劇的に下がる。医科向けで比較すると、通常のオンプレミス版だと初期費用だけで400万円~500万円するものを、「MAPs for CLINIC」では初期ライセンス費用0円、パソコンを数台導入する費用だけになる。また、月額利用料金も月額2万円から(平均的なクリニックで4台想定、月額3.5万円)とリーズナブルに抑えられている。初期投資+5年間ランニングコストで計算すると、従来比で半減するため、顧客には大きなコストメリットが発生する。
(2) AIなどによる支援機能
「MAPsシリーズ」は価格が安いだけではなく、機能面でも過去のプロダクトを凌駕する高機能・高付加価値である点に特長がある。その一例が「高度なクラウド型問診」機能である。NECと共同開発されたこの機能は、最先端AI技術群「NEC the WISE」が活用されたもので、患者の症状に応じて異なる問診内容が表示される。専門外の診療科目においてもより的確な診察が可能になるため、「かかりつけ」と「専門医」を兼ね備えた診療を支援する。
(3) 一体開発による医科・調剤・介護/福祉従事者間連携機能
同社は「MAPsシリーズ」でシェア拡大だけを狙う訳ではない。医療・介護業界で共通的に必要となる計算ロジックを持つ共通エンジンを他社にも供給するなど、自社だけでなく業界全体の低コスト化、品質向上を図る。これらの施策により利用者を増やすことで、同社のシステムを医療・介護業界におけるデファクト・スタンダードとして、技術面・価格面など業界のリーダーシップを取っていく考えである。既に複数の同業他社との間で共通部分(エンジン、マスタ等)のOEM提供の案件が進んでいる。
同システムの展開については、若干リリースが遅れたものの、医科アプリ及び調剤アプリの出荷が開始された。さらに介護/福祉アプリについても既に開発に着手しており、2021年3月期からは全タイプ(医科、調剤、介護/福祉)がそろう予定。「医科から入り関連する調剤・介護への影響度を広げる」、「調剤から入り関連する医科・介護への影響度を広げる」といった戦術を3方向からできるようになり、同社の強みが十分に発揮されるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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