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窪田製薬ホールディングスのニュース
■開発パイプラインの動向
1. 2018年12月期上期の取組み動向
窪田製薬ホールディングス<4596>の現在の開発パイプラインは、医薬品でエミクススタト(適応症:増殖糖尿病網膜症、スターガルト病)、ヒトロドプシンを用いた遺伝子治療(網膜色素変性)のほか、白内障および老視を適応症とした低分子化合物、糖尿病黄斑浮腫やウェット型加齢黄斑変性を適応症とした低分子化合物がある。また、医療デバイスで在宅・遠隔医療モニタリング機器のPBOSの開発を進めている。
2018年12月期上期の進捗状況としては、2017年12月にスターガルト病を適応症としたエミクススタトの臨床第2a相試験を完了し、2018年1月に主要評価項目を達成したこと発表した。これを受け、6月に臨床第3相試験デザインの方向性を専門家等と協議する開発会議を開催した。また、増殖糖尿病網膜症を適応症としたエミクススタトの臨床第2相試験も2017年11月に完了、こちらはプラセボ投与群に比べエミクススタト投与群に、網膜症の発症や悪化に関連するバイオマーカーであるVEGF(血管内皮増殖因子)濃度の軽度改善が認められたことを2018年1月に明らかにした。さらなる解析により、糖尿病黄斑浮腫に対する改善の可能性を示唆するデータが得られたことから、今後、同疾患を適応症とした開発を進めていくかどうかを検討している段階にある。
網膜色素変性を適応症とした遺伝子治療については、1月にウイルスベクターの開発で実績のある独シリオンと最適なウイルスベクター確立のための共同開発契約を締結し、6月には共同開発を進めている日米欧の遺伝子治療の専門家※を集めた開発会議をドイツで開催し、今後の開発計画についての方向性を定め、臨床試験の基本デザイン等についての協議を行った。
※遺伝子治療の技術導入先であるマンチェスター大学(英国)、ウイルスベクターの開発で実績のある独シリオン、プロモーターのスクリーニングで高い実績を誇る米サーキュラリスのほか、ドイツのハイデルベルク大学、ハノーファー大学、ルートヴィヒ・マクシミリアン大学などに在籍する世界的に著名な研究者等が参加した。
眼科在宅・遠隔医療モニタリングデバイスのPBOSについては、3月に米国で試作機による臨床試験を開始しており、6月にスイスにてグローバル開発会議を開催している。会議では臨床試験が計画通りに進んでいることの確認や、医療現場のニーズに見合った技術設計に関する話し合い、並びに2019~2020年の計画についても合意している。
2.主な開発パイプラインの概要と今後の開発方針
(1) エミクススタト(スターガルト病)
スターガルト病は遺伝性の若年性黄斑変性で治療法がまだ未確立な希少疾病の1つである。患者数は日米欧で15万人弱、米国だけで見ると3.2~4万人と推計されている※。小児期から青年期における視力低下が主な症状として挙げられ、大半の患者が視力0.1以下に低下すると言われている。
※Market Scope,「Retinal Pharma & Biologics Market」「UN World Population Prospects 2015」をもとに、同社が推計。
発症原因は、網膜内にあるABCA4遺伝子の突然変異によるものと考えられている。ABCA4遺伝子は光を感じる働きを司る「視覚サイクル」によって生じる有害なリポフスチン(以下、A2E)を処理する役割を果たすが、本遺伝子が突然変異により本来の役割を果たさなくなることで網膜内にA2Eが蓄積し、視力低下が進行していく。現在は有効な治療法がなく、網膜に黄斑等の異常が出ればレーザー光を用いて凝固し、症状の悪化を防ぐだけの処置にとどまっている。
エミクススタトは動物モデルを用いた非臨床試験において、このA2Eの蓄積を抑制する効果が確認されている。エミクススタトは「視覚サイクル」において重要な役割を果たす酵素であるRPE65を選択的に阻害するため、視覚サイクルによって生じる老廃物を減らす効果があり、症状の進行を抑制する効果が期待される。
2017年1月より実施した臨床第2a相試験(22症例)ではエミクススタト投与1か月後に、網膜電図を用いて点滅光に対する網膜の電気的応答の変化を検証した。杆体の反応は、網膜電図ではb波で示される。エミクススタトは視覚サイクルにおいて重要な役割を果たす酵素であるRPE65を阻害して杆体を休ませることで視覚サイクルを抑制する働きが確認されている。このことから、本試験では、スターガルト病患者に対して、杆体b波の振幅が投与1ヶ月後にどれくらいの割合で抑制されるかを主要項目に設定して実施した。その結果、用量依存的で最大90%を超える抑制効果が見られた。また、投与用量における安全性および忍容性が確認され、主要評価項目を達成した。同社はこの結果を受けて、2018年第4四半期に欧米で臨床第3相試験を開始すべく、米国食品医薬品局(以下、FDA)および欧州医薬品庁(以下、EMA)との協議を進めていく予定になっている。2017年1月にFDAからオーファンドラッグ※の認定を受けており、協議はスムーズに進むものと予想される。開発については単独で進めていく方針だが、共同開発パートナーの探索も同時並行で進めている。なお、競合薬の開発状況としては、サノフィ(フランス)が臨床第1/2相試験を行っている段階にある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<MH>
1. 2018年12月期上期の取組み動向
窪田製薬ホールディングス<4596>の現在の開発パイプラインは、医薬品でエミクススタト(適応症:増殖糖尿病網膜症、スターガルト病)、ヒトロドプシンを用いた遺伝子治療(網膜色素変性)のほか、白内障および老視を適応症とした低分子化合物、糖尿病黄斑浮腫やウェット型加齢黄斑変性を適応症とした低分子化合物がある。また、医療デバイスで在宅・遠隔医療モニタリング機器のPBOSの開発を進めている。
2018年12月期上期の進捗状況としては、2017年12月にスターガルト病を適応症としたエミクススタトの臨床第2a相試験を完了し、2018年1月に主要評価項目を達成したこと発表した。これを受け、6月に臨床第3相試験デザインの方向性を専門家等と協議する開発会議を開催した。また、増殖糖尿病網膜症を適応症としたエミクススタトの臨床第2相試験も2017年11月に完了、こちらはプラセボ投与群に比べエミクススタト投与群に、網膜症の発症や悪化に関連するバイオマーカーであるVEGF(血管内皮増殖因子)濃度の軽度改善が認められたことを2018年1月に明らかにした。さらなる解析により、糖尿病黄斑浮腫に対する改善の可能性を示唆するデータが得られたことから、今後、同疾患を適応症とした開発を進めていくかどうかを検討している段階にある。
網膜色素変性を適応症とした遺伝子治療については、1月にウイルスベクターの開発で実績のある独シリオンと最適なウイルスベクター確立のための共同開発契約を締結し、6月には共同開発を進めている日米欧の遺伝子治療の専門家※を集めた開発会議をドイツで開催し、今後の開発計画についての方向性を定め、臨床試験の基本デザイン等についての協議を行った。
※遺伝子治療の技術導入先であるマンチェスター大学(英国)、ウイルスベクターの開発で実績のある独シリオン、プロモーターのスクリーニングで高い実績を誇る米サーキュラリスのほか、ドイツのハイデルベルク大学、ハノーファー大学、ルートヴィヒ・マクシミリアン大学などに在籍する世界的に著名な研究者等が参加した。
眼科在宅・遠隔医療モニタリングデバイスのPBOSについては、3月に米国で試作機による臨床試験を開始しており、6月にスイスにてグローバル開発会議を開催している。会議では臨床試験が計画通りに進んでいることの確認や、医療現場のニーズに見合った技術設計に関する話し合い、並びに2019~2020年の計画についても合意している。
2.主な開発パイプラインの概要と今後の開発方針
(1) エミクススタト(スターガルト病)
スターガルト病は遺伝性の若年性黄斑変性で治療法がまだ未確立な希少疾病の1つである。患者数は日米欧で15万人弱、米国だけで見ると3.2~4万人と推計されている※。小児期から青年期における視力低下が主な症状として挙げられ、大半の患者が視力0.1以下に低下すると言われている。
※Market Scope,「Retinal Pharma & Biologics Market」「UN World Population Prospects 2015」をもとに、同社が推計。
発症原因は、網膜内にあるABCA4遺伝子の突然変異によるものと考えられている。ABCA4遺伝子は光を感じる働きを司る「視覚サイクル」によって生じる有害なリポフスチン(以下、A2E)を処理する役割を果たすが、本遺伝子が突然変異により本来の役割を果たさなくなることで網膜内にA2Eが蓄積し、視力低下が進行していく。現在は有効な治療法がなく、網膜に黄斑等の異常が出ればレーザー光を用いて凝固し、症状の悪化を防ぐだけの処置にとどまっている。
エミクススタトは動物モデルを用いた非臨床試験において、このA2Eの蓄積を抑制する効果が確認されている。エミクススタトは「視覚サイクル」において重要な役割を果たす酵素であるRPE65を選択的に阻害するため、視覚サイクルによって生じる老廃物を減らす効果があり、症状の進行を抑制する効果が期待される。
2017年1月より実施した臨床第2a相試験(22症例)ではエミクススタト投与1か月後に、網膜電図を用いて点滅光に対する網膜の電気的応答の変化を検証した。杆体の反応は、網膜電図ではb波で示される。エミクススタトは視覚サイクルにおいて重要な役割を果たす酵素であるRPE65を阻害して杆体を休ませることで視覚サイクルを抑制する働きが確認されている。このことから、本試験では、スターガルト病患者に対して、杆体b波の振幅が投与1ヶ月後にどれくらいの割合で抑制されるかを主要項目に設定して実施した。その結果、用量依存的で最大90%を超える抑制効果が見られた。また、投与用量における安全性および忍容性が確認され、主要評価項目を達成した。同社はこの結果を受けて、2018年第4四半期に欧米で臨床第3相試験を開始すべく、米国食品医薬品局(以下、FDA)および欧州医薬品庁(以下、EMA)との協議を進めていく予定になっている。2017年1月にFDAからオーファンドラッグ※の認定を受けており、協議はスムーズに進むものと予想される。開発については単独で進めていく方針だが、共同開発パートナーの探索も同時並行で進めている。なお、競合薬の開発状況としては、サノフィ(フランス)が臨床第1/2相試験を行っている段階にある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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