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オンコリスバイオファーマのニュース
■開発パイプラインの動向
4. 次世代テロメライシン「OBP-702」
オンコリスバイオファーマ<4588>は次世代テロメライシンとして、テロメライシンに強力ながん抑制遺伝子であるp53を組み込んだアデノウイルス製剤「OBP-702」の開発を進めている。がん患者の30~40%でp53遺伝子に変異・欠損(悪化因子)があり、こうした患者向けの腫瘍溶解・遺伝子治療となる。テロメライシンよりも10~30倍の抗腫瘍活性を示すほか、間質細胞※を破壊する能力の高いことが非臨床試験から明らかとなっている。このため、すい臓がんや骨肉腫などを対象に開発を進めていく予定であったが、中外製薬とのライセンス契約解消により手元資金の有効活用を図る必要性が出てきたため、優先順位を引き下げて開発を進めていくことにした。
※臓器の結合組織に関わる細胞で、生体組織の支持構造を構成し、実質細胞を支える細胞である。線維芽細胞、免疫細胞、周皮細胞、内皮細胞及び炎症性細胞が間質細胞の最も一般的な種類で、間質細胞と腫瘍細胞との相互作用は、がん細胞の増殖と進行に大きな影響を及ぼすことが知られている。
「OBP-702」はAMEDの助成金事業に採択されていることから、助成金を活用して岡山大学の研究グループが中心となって研究開発を継続していくことになる。2023年度もAMEDの助成金を取得できれば、同年内に治験計画届を提出するところまで開発が進む可能性がある。2019年4月に米国で開催された癌学会では、すい臓がん細胞のマウスモデルを用いた実験で「OBP-702」に免疫チェックポイント阻害剤を併用することで、「OBP-702」または免疫チェックポイント阻害剤単独投与よりも強い抗腫瘍効果が得られたことを発表しており、難治がんの1つとされるすい臓がんを対象とした開発が進められていくものと期待される。
がん検査薬のテロメスキャンはAI技術を活用した自動検査プラットフォームを2023年までに完成し、商用化を目指す
5. テロメスキャン
(1) 概要
テロメスキャンは、アデノウイルスの基本構造を持ったテロメライシンにクラゲのGFPを組み込んだ遺伝子改変アデノウイルスとなる。テロメラーゼ陽性細胞(がん細胞等)に感染することでGFPが発現し、緑色に蛍光発光する作用を利用して、がん転移のプロセスに深く関与するCTC(血中循環がん細胞)を高感度に検出する。検査方法としては、患者の血液を採取し、赤血球の溶血・除去後にテロメスキャンを添加しウイルスを感染させる。感染により蛍光発光したテロメラーゼ陽性細胞を検出、CTCを採取する流れとなる。これまでPET検査などでは検出が難しかった直径5mm以下のがん細胞の超早期発見や、転移・再発がんの早期発見のための検査薬としての実用化を目指している。また、検出したCTCを遺伝子解析することによって個々の患者に最適な治療法を選択する「コンパニオン診断」※としての開発も将来的に期待されている。
※患者によって個人差がある医薬品の効果や副作用を投薬前に予測するために行われる臨床検査のこと。薬剤に対する患者個人の反応性を遺伝子解析によって判別し、最適な治療法を選択できるようにする。新薬の臨床開発段階でも用いられる。
(2) 開発状況
テロメスキャンの開発に関しては、課題であった目視によるCTC検出時間を大幅に短縮するため、2020年にAI技術開発のベンチャーである(株)CYBOと開発委託契約を締結して、AI技術を用いたCTC検査自動化プラットフォームの開発に取組んできた。開発状況としては、2020年10月にT-CAS1(TelomeScan-CTC Analysis System)を完成させ、CTCの有無判定の自動化による検体処理時間の大幅短縮※と判定結果の標準化を実現した。ただ、同システムは発光するCTC以外の異物や健常人の正常細胞もCTCとして認識してしまうなど判別の精度に課題が残っていた。
※目視検査で1検体当たり数時間かかっていた工程を、同システムを利用することで2~3分と大幅な短縮を実現した。
そこで改めて2022年3月にCYBO社と共同開発契約を締結し、AI技術を活用したCTC自動検出ソフトウェアの開発を進めていくことにした。今後1年間かけてがん患者だけでなく健常人の検体データを多く学習させることで、CTCの判別精度を高め、選別したCTCの可能性が高いと思われる細胞等にテロメスキャンを添加し発光の有無を確認する、二重チェックのシステム構成とすることで、精度を高めていくことにしている。
CTC自動検査プラットフォームの完成時期は、2023年内を目標としている。完成後は順天堂大学にてCTC検査センターを開設し、関連病院などを含めてがん検査サービスの提供を開始する予定だ。また、同社は検査キット(テロメスキャン、各種抗体)や自動解析ソフトウェアを販売し、収益を獲得していくことになる。サービスのイメージとしては、術後の移転・再発を早期発見するための検査サービスから開始し、将来的には成人病検診の際に行うがん検査項目の1つとして、テロメスキャンによるCTC検査サービスを普及させていきたい考えだ。ただ、がん検査については遺伝子検査なども含めて様々な技術が開発されており、競争が激化しているのも事実であり、普及するためには検査精度の高さやスピード、コストが鍵を握ると見られる。なお、海外への展開についてはAIによる自動検査プラットフォームが完成したのちに、ライセンス活動を再開していく予定にしている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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4. 次世代テロメライシン「OBP-702」
オンコリスバイオファーマ<4588>は次世代テロメライシンとして、テロメライシンに強力ながん抑制遺伝子であるp53を組み込んだアデノウイルス製剤「OBP-702」の開発を進めている。がん患者の30~40%でp53遺伝子に変異・欠損(悪化因子)があり、こうした患者向けの腫瘍溶解・遺伝子治療となる。テロメライシンよりも10~30倍の抗腫瘍活性を示すほか、間質細胞※を破壊する能力の高いことが非臨床試験から明らかとなっている。このため、すい臓がんや骨肉腫などを対象に開発を進めていく予定であったが、中外製薬とのライセンス契約解消により手元資金の有効活用を図る必要性が出てきたため、優先順位を引き下げて開発を進めていくことにした。
※臓器の結合組織に関わる細胞で、生体組織の支持構造を構成し、実質細胞を支える細胞である。線維芽細胞、免疫細胞、周皮細胞、内皮細胞及び炎症性細胞が間質細胞の最も一般的な種類で、間質細胞と腫瘍細胞との相互作用は、がん細胞の増殖と進行に大きな影響を及ぼすことが知られている。
「OBP-702」はAMEDの助成金事業に採択されていることから、助成金を活用して岡山大学の研究グループが中心となって研究開発を継続していくことになる。2023年度もAMEDの助成金を取得できれば、同年内に治験計画届を提出するところまで開発が進む可能性がある。2019年4月に米国で開催された癌学会では、すい臓がん細胞のマウスモデルを用いた実験で「OBP-702」に免疫チェックポイント阻害剤を併用することで、「OBP-702」または免疫チェックポイント阻害剤単独投与よりも強い抗腫瘍効果が得られたことを発表しており、難治がんの1つとされるすい臓がんを対象とした開発が進められていくものと期待される。
がん検査薬のテロメスキャンはAI技術を活用した自動検査プラットフォームを2023年までに完成し、商用化を目指す
5. テロメスキャン
(1) 概要
テロメスキャンは、アデノウイルスの基本構造を持ったテロメライシンにクラゲのGFPを組み込んだ遺伝子改変アデノウイルスとなる。テロメラーゼ陽性細胞(がん細胞等)に感染することでGFPが発現し、緑色に蛍光発光する作用を利用して、がん転移のプロセスに深く関与するCTC(血中循環がん細胞)を高感度に検出する。検査方法としては、患者の血液を採取し、赤血球の溶血・除去後にテロメスキャンを添加しウイルスを感染させる。感染により蛍光発光したテロメラーゼ陽性細胞を検出、CTCを採取する流れとなる。これまでPET検査などでは検出が難しかった直径5mm以下のがん細胞の超早期発見や、転移・再発がんの早期発見のための検査薬としての実用化を目指している。また、検出したCTCを遺伝子解析することによって個々の患者に最適な治療法を選択する「コンパニオン診断」※としての開発も将来的に期待されている。
※患者によって個人差がある医薬品の効果や副作用を投薬前に予測するために行われる臨床検査のこと。薬剤に対する患者個人の反応性を遺伝子解析によって判別し、最適な治療法を選択できるようにする。新薬の臨床開発段階でも用いられる。
(2) 開発状況
テロメスキャンの開発に関しては、課題であった目視によるCTC検出時間を大幅に短縮するため、2020年にAI技術開発のベンチャーである(株)CYBOと開発委託契約を締結して、AI技術を用いたCTC検査自動化プラットフォームの開発に取組んできた。開発状況としては、2020年10月にT-CAS1(TelomeScan-CTC Analysis System)を完成させ、CTCの有無判定の自動化による検体処理時間の大幅短縮※と判定結果の標準化を実現した。ただ、同システムは発光するCTC以外の異物や健常人の正常細胞もCTCとして認識してしまうなど判別の精度に課題が残っていた。
※目視検査で1検体当たり数時間かかっていた工程を、同システムを利用することで2~3分と大幅な短縮を実現した。
そこで改めて2022年3月にCYBO社と共同開発契約を締結し、AI技術を活用したCTC自動検出ソフトウェアの開発を進めていくことにした。今後1年間かけてがん患者だけでなく健常人の検体データを多く学習させることで、CTCの判別精度を高め、選別したCTCの可能性が高いと思われる細胞等にテロメスキャンを添加し発光の有無を確認する、二重チェックのシステム構成とすることで、精度を高めていくことにしている。
CTC自動検査プラットフォームの完成時期は、2023年内を目標としている。完成後は順天堂大学にてCTC検査センターを開設し、関連病院などを含めてがん検査サービスの提供を開始する予定だ。また、同社は検査キット(テロメスキャン、各種抗体)や自動解析ソフトウェアを販売し、収益を獲得していくことになる。サービスのイメージとしては、術後の移転・再発を早期発見するための検査サービスから開始し、将来的には成人病検診の際に行うがん検査項目の1つとして、テロメスキャンによるCTC検査サービスを普及させていきたい考えだ。ただ、がん検査については遺伝子検査なども含めて様々な技術が開発されており、競争が激化しているのも事実であり、普及するためには検査精度の高さやスピード、コストが鍵を握ると見られる。なお、海外への展開についてはAIによる自動検査プラットフォームが完成したのちに、ライセンス活動を再開していく予定にしている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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