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―業績好調で死角なし、デジタル庁発足に向けてマーケットの熱視線再び―
デジタル庁の設置などを盛り込んだデジタル改革関連法案の審議が、9日から衆議院で始まった。マイナンバーの活用や各自治体のシステム統一を図るなど、行政デジタル化の実現に向けた改革を強力に推し進めていく狙いがある。株式市場では、引き続きデジタルトランスフォーメーション(DX)に対する関心は高いものの、ここ最近は脱炭素やポストコロナといったテーマが脚光を浴びていたこともあり、関連銘柄はさえない展開が続いていた。しかし、ここまでの調整局面を経て、昨年の株価上昇による割高感はある程度解消されてきたとみられる。また、直近の決算発表で改めて業績の順調さが確認されたものもあり、DX関連銘柄には調整一巡から再び上昇局面入りとなることが期待される。
●売られる展開続くも割高な株価の是正進む
昨年、新型コロナウイルスが感染拡大して以降、まずはテレワークやオンライン関連などに注目が集まったが、次第にこうしたものも含め、あらゆる場面でデジタル化を加速させていくDXの重要性が広く認識されるようになった。民間の取り組みが進むなか、特別定額給付金の支給を巡って行政におけるデジタル化の遅れも浮き彫りとなり、「デジタル庁」創設などを掲げた菅政権の発足によって関連銘柄の物色人気は一段と高まっていった。一方、11月に入ると米バイデン政権誕生を見据えて再生可能エネルギーや電気自動車(EV)関連に、また新型コロナワクチンの普及期待から景気敏感株に物色の流れが移り、DXへの注目度は相対的に低下していった。
直近の決算発表では、DX関連銘柄の業績は比較的好調だったものの、株価への反応は限られ、逆に売られてしまうものもあった。昨年に期待先行で大きく買われたことから、好業績であっても株価にはすでに織り込まれているとの見方が強いようだ。また、3月初旬にかけての米金利上昇を背景とする全体相場波乱にツレ安する格好で、関連銘柄も下押しする場面があった。ただ、売りに押される展開がここまで続いてきたことから、割高だった株価水準の是正は概ね進んだとみられる。今後、9月のデジタル庁発足に向けて再びDXへの関心が強まってくるとみられ、関連銘柄の見直し機運も高まることになりそうだ。
●幅広い顧客基盤に強み、傘下で多様なビジネス展開
フューチャー <4722> は、情報システムの設計・構築に定評があるITコンサル会社。製造や物流、アパレル、金融など幅広い顧客基盤を持っており、業務改革を進める企業のIT投資ニーズを捉えている。同社は、グルメ関連メディア「東京カレンダー」の運営のほか、プログラミングのオンライン学習サービス、スポーツ関連システムの開発など、傘下の企業がさまざまな事業を手掛けている。また、通販向け在庫管理システムを提供するロジザード <4391> [東証M]を関連会社に持つ。21年12月期の連結営業利益は、前期比36.6%増の71億5000万円と過去最高益を更新する見通し。株価は昨年10月の急落後、1800円前後の狭いレンジで3ヵ月近く横ばいの動きが続いていたが、今12月期見通し発表前後の2月上旬に急動意。その後、再度1800円割れまで押し戻されたものの、そこを起点に切り返す動きをみせている。
●官公庁向け主力、医療分野でAI用いたシステム開発も
フォーカスシステムズ <4662> は独立系のソフト開発会社で、官公庁などからの受託開発を主力とする。21年3月期第3四半期累計(20年4-12月)決算では、営業利益が11億2600万円(前年同期比5.9%増)で着地し、通期の営業利益見通しに対する進捗率は8割近くに達した。同社では、人工知能(AI)やRPA、 IoTといった先端技術への取り組みを積極化させており、昨年11月には医療分野でのAI活用に向けてFRONTEO <2158> [東証M]と資本業務提携を行っている。フォーカスが持つ画像系AIとフロンテオのAI技術を組み合わせ、心血管疾患に関する発症予測や治療法の革新、発症後の患者動向の予測に関するシステム開発などを目指す。株価は、昨年9月の高値1090円から11月初旬には871円まで売られたが、その後はもみ合いながらも200日移動平均線を足場に下値を切り上げる展開。直近の信用倍率が0.5倍台と売り長である点もポイント。
●昨秋に新規上場、フィンテック・IoTなど人気素地内包
昨年9月に東証マザーズへ新規上場したアクシス <4012> [東証M]は、金融機関や官公庁向けを軸に業務アプリ開発やインフラシステム構築・運用保守サービスを手掛ける。昨年のIPO銘柄物色の流れに乗る形で、上場直後の10月7日には9350円の高値まで買われた。現在の株価は4000円前後での推移となっている。20年12月期決算は営業2.1倍増益と業績が急拡大し、続く21年12月期も前期比8.3%増と増益基調を維持する見通し。今後、主力の金融分野向けで フィンテック対応を進めていくほか、車両の位置情報や走行距離などを把握するIoTサービスの展開強化も図っていく。
●高進捗率のテクノスJ、KYCOM
テクノスジャパン <3666> は、独ソフトウエア大手SAP製を中心に統合基幹業務システム(ERP)の導入支援を手掛ける。同社は1月下旬、21年3月期の連結業績予想について、営業利益を8億円から9億円(前期比3.2倍)へ上方修正した。コロナ禍による企業のIT投資抑制といったマイナス影響を見込んでいたものの、既存案件の深耕や新規案件の獲得に取り組んだことが業績押し上げにつながった。あわせて発表した第3四半期累計(20年4-12月)決算では営業利益が8億2600万円となり、上方修正した通期計画に対する進捗率は92%に達した。同社は16年3月期から前20年3月期まで連続で、通期の決算発表時に営業利益が上振れて着地している。
独立系ソフト開発会社のKYCOMホールディングス <9685> [JQ]は、通信や公共向けを中心にシステムの受託開発を手掛け、データ関連サービスでも強みを持つ。20年4-12月期決算では、営業利益が2億9200万円(前年同期比86.8%増)と通期見通しの3億円にほぼ到達している。株価は昨年8月ごろから上昇が加速し、10月には1137円の高値をつけたが、現在はそこから4割近く下回った水準にある。200日移動平均線をはさみ一進一退の展開で、ここからもみ合い上放れとなるかが注目される。
●キーウェアやキューブシスにも注目
キーウェアソリューションズ <3799> [東証2]は官公庁をはじめ、通信、金融、医療など幅広い業種向けにシステム開発などを手掛ける総合ITソリューション企業。同社は医療ICTサービスとして院内感染対策ソリューションを手掛けていることから、昨年のコロナ禍初期に一躍脚光を浴びた経緯がある。株価は昨年6月高値を頂点に半年以上も調整を続けていたが、600円台後半を下値に目先底打ち感が漂う。業績面では、第3四半期時点での対通期進捗率が35.4%(経常利益ベース)にとどまっているが、これは同社の業績が第4四半期に偏重する傾向にあるためで、通期業績への期待も膨らむ。有配企業でPBR1倍割れ水準は割安感が強い。
キューブシステム <2335> は、金融・通信・流通向けを強みとするシステム開発会社。昨年はDX関連の一角として注目されたほか、年後半には地銀再編に向けた思惑を背景にマーケットの視線を集めた。21年3月期第3四半期累計(20年4-12月)決算は、売上高105億9100万円(前年同期比0.5%増)、営業利益7億9200万円(同28.2%増)と好調。通期の連結業績予想は売上高160億円(前期比8.8%増)、営業利益11億2000万円(同16.8%増)の見通しで、営業利益は6期ぶりに過去最高を更新する見込みとなっている。
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