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―岸田“成長戦略”の新たなメルクマール、動き出したバーチャル世界とその有望株を追え―
名実ともに新年度入りとなった1日の東京株式市場では、日経平均が前日比155円安の2万7665円と3日続落した。全体相場は3月中旬を境に底入れ反転し、大方の想定をはるかに上回る戻り足をみせ、3月25日には日経平均がザラ場2万8300円台まで浮上するという大出直りを演じた。しかし、200日移動平均線が上値抵抗ラインとして意識され、その後は調整局面に移行している。売り方の踏み上げを誘発した急騰が一巡し、全体はひと頃の先物買い戻しによる熱気が退潮している。
ところが、個別株をみると全体指数の動向とはまるで様相が違うことに気づく。主力株の動きはいま一つでも中小型株物色の勢いはむしろ増幅されている。そのなか、これまで鳴りを潜めていたテーマ買いの動きが再燃している。
その筆頭に挙げられるのがWeb3、いわゆるメタバース やブロックチェーン (NFT)、暗号資産といった分野でビジネス展開を図っている銘柄群だ。株式市場では同関連株に急動意する銘柄が相次いでいる。ただし、中長期波動でみた株価のポジションはまだ低く上値追いの初動であることから、投資マネーの参戦は今後次第に活発化していくことが予想される。今がチャンスだ。
●Web3の新潮流は大化け株を生む
バーチャル空間に発生したWeb3という巨大な新潮流、これはブロックチェーン技術をベースにデジタル情報の所有権などが明確化され、これまでの国家や大資本企業などのサーバーが支配する中央集権型とは異なる分散型のネット世界である。岸田政権ではこのWeb3を成長戦略に盛り込む方向にあることで、同セクターから株価の居どころを大きく変える銘柄が輩出される可能性も出てきた。
Web3のコンセプトを細分化すると、例えば金融であれば、銀行などの管理主体を必要としないDeFi(ディーファイ)と称されるブロックチェーン上に構築されたサービスがある。分散型金融で、企業体などの組織に関与されることなく、利用者同士が直接金融サービスを利用したり提供したりすることが可能となる。また、ブロックチェーン技術を使って、デジタルコンテンツが唯一無二の資産であることを証明する鑑定書の役割を担うのがNFT(非代替性トークン)だ。デジタルコンテンツは画像や動画、あるいは音楽とさまざまだが、そのコンテンツに関するメタデータ(付帯情報)を、ブロックチェーンから発行されたNFTに制作者が書き込み紐付けることで、権利の所在を明確化させる。これによって、コピーではない現物としての価値が証明され、2次流通の促進も可能とする。
●ゲーム関連株にビッグチャンス
そして、旧フェイスブックが昨年10月に社名を「メタ」に変更したことで、世界でも一躍その存在がクローズアップされたメタバース。これもWeb3の象徴であり、DeFiやNFTとリンクする形で新たな時代のバーチャル経済圏が創生されることになる。同社のザッカーバーグCEOが、社名を変更してまでメタバースでのサービス開発に全力傾注する構えにあることは知られているが、厳密に言えば、これは中央集権型でWeb3の概念からは外れる。だが、分散型ゲームはWeb3の象徴ともなり、今後世界的にゲーム関連業界における合従連衡の動きが加速していく可能性も指摘されている。
今年1月、マイクロソフト
ここにきてゲーム関連 株が一斉に動き始めたのも暗示的である。1日の株式市場では全体地合い悪のなか任天堂 <7974> が大きく切り返したほか、コナミホールディングス <9766> 、スクウェア・エニックス・ホールディングス <9684> 、カプコン <9697> などが軒並み高に買われた。また、早くからメタバース分野に経営資源を投下しているグリー <3632> は14年4月以来約8年ぶりの高値圏に浮上している。
このほか、ゲーム関連株以外でも、メタバース分野に積極的に踏み込む企業はここにきてスポットライトが当たりやすくなっている。この日はメタバース型バーチャルイベントサービスを展開するシャノン <3976> [東証M]や「バーチャル・オープンキャンパス」開催実績を持つエスユーエス <6554> [東証M]、メタバース事業を育成しているメタリアル <6182> [東証M]、メタバース型バーチャルプラットフォームを提供するBirdman <7063> [東証M]などが買われている。
●量子コンピューターも同じ時間軸で革命の源泉に
そして、Web3と同じ時間軸で、ハード面で普及が期待されるのが次世代コンピューティングの分野だ。特に神秘的な計算スピードを持つ量子コンピューター は注目必至となる。
量子コンピューターで走らせるアルゴリズムは、“超越した空間”であるメタバースとの相性も良い。従来型コンピューターの動作原理は、たとえスーパーコンピューターであってもデジタルの普遍的コンセプトである「0もしくは1」の積み上げによるものだった。しかし、ひとつの量子が「0であり、かつ1でもある」という重ね合わせの状態を利用し、飛躍的な演算パフォーマンスを可能とした量子コンピューターは、ブロックチェーン技術とともにWeb3時代のバックヤードを支える立役者としてテーマ性を発揮しそうだ。
●ここから要注目のWeb3関連有望株7選
【サイバーリンはブロックチェーンで新境地開拓】
サイバーリンクス <3683> は食品流通業界や官公庁を対象に基幹業務システムのクラウドサービスを手掛けている。電子認証分野でも先駆しており、ある日時に特定の電子データが存在し、改ざんもされていないことを証明する「タイムスタンプ」を展開し需要を捉えている。昨年12月下旬には、ブロックチェーン技術及びWeb3領域に特化したサービスを提供するスタートアップ企業から、ブロックチェーン技術を利用した証明書発行サービスを取得し、新たなビジネスとして立ち上げている。22年12月期営業利益は前期比10%増の10億4300万円と2ケタ増益見通しで過去最高利益更新、初の10億円台乗せを見込む。にもかかわらず、株価は20年12月につけた3925円(分割後修正値)の上場来高値から約4分の1の水準に売り込まれており、水準訂正妙味が大きい。
【ドリコムはWeb3事業参入発表で注目の的に】
ドリコム <3793> [東証M]はスマートフォン向けを中心にモバイル向けアプリの企画・開発・運用を手掛けるが、その独自ノウハウを生かし5月1日付で「Web3事業」への参入を明示している。ブロックチェーン技術などを活用し、トークンエコシステムを内包する新規サービスやプロダクト開発を展開、その皮切りにVRコンテンツ開発で実績の高いThirdverse(東京都千代田区)と協業し、ブロックチェーンゲームの制作を行うことを発表している。足もとの業績については、22年3月期は広告費負担が大きく2ケタ減益予想ながら、23年3月期は利益成長トレンドを取り戻す公算大。株価はWeb3事業への参入発表を受けマドを開けて買われたが、時価は依然として500円台で値ごろ感がある。
【カヤックはメタバース専門部隊立ち上げ本腰】
カヤック <3904> [東証M]はネット広告の受託制作やゲーム配信事業を展開し、eスポーツ大会運営なども手掛ける。VRコンテンツに強く、その知見をメタバース分野に横展開させていく経営方針にあり、今年2月にメタバース専門部隊を立ち上げていることはポイントとなる。会社側ではバーチャル空間で日本ならではのコンテンツ体験とシステム開発を行うことにより、クオリティーの高い世界を実現するという目標を掲げている。業績も好調が続いており、21年12月期の54%営業増益に続き、22年12月期も前期比31%増の15億円を予想している。株価はボラタイルで上ヒゲをつけやすい特徴があるが、大勢トレンドは上向きであり、昨年11月中旬の戻り高値880円クリアが最初の関門に。
【HPCシスは量子コンピューターで存在感】
HPCシステムズ <6597> [東証M]は科学技術用の高性能計算ソフトの開発を手掛け、企業や大学・研究機関向けに納入している。同社のビッグデータ解析や人工知能(AI)分野における知見には定評があり、スーパーコンピューター「富岳」を計算資源とするSaaSサイエンスクラウドにも商業展開している。Web3時代と時間軸が一致する次世代コンピューティングでは量子コンピューター分野に積極的に踏み込み、同分野で先駆するベンチャー企業QunaSys(東京都文京区)と資本・業務提携している。また直近では、コニカミノルタ <4902> と画像IoT/AI分野で技術パートナー契約を締結。21年6月期の営業4割増益に続き、22年6月期も前期比10%増の7億4500万円を見込むなど2ケタ成長を継続する見込み。株価は目先急動意も依然底値圏で押し目買い有効。
【ブイキューブはメタバースイベントで商機拡大】
ブイキューブ <3681> は、Web会議システムなど遠隔地の相手と映像でつながりコミュニケーションが取れるシステムを提供。コロナ禍でテレワークの導入が加速されたことで、活躍機会が高まり業績急拡大を果たした。21年12月期営業利益は前の期比29%増の13億5100万円と大幅な伸びで過去最高利益を更新したが、22年12月期は更に成長が加速し、同利益は20億円と前期比5割近い伸長を見込んでいる。メタバース関連事業にも積極参入、その第1弾としてあらゆる業界のイベントをメタバース化する「メタバースイベントサービス」をスタートさせている。2月末には、NFTメタバースの米スタートアップ企業に出資し、日本国内での事業展開を開始することを発表するなど同分野に本腰を入れる構えだ。株価は大底圏からの離脱初動のタイミングにある。
【コロプラはWebメタバースシステムに脚光】
コロプラ <3668> はスマートフォン用ゲームを主力とし、ゲームアプリの課金収入が収益の源泉となっているが、VR分野への参入に意欲をみせている。同社の子会社である360Channelが「Webメタバースシステム」を軸に積極展開を図っており、今後が期待される。同システムは高品質な3D空間で高い操作性を有するWebサービスで、登録やログイン、アプリインストールといった作業を行うことなく誰でも視聴することが可能となっている。業績は22年9月期業績予想について会社側非開示ながら、新作タイトルなどの投入効果で営業増益に転じる公算が大きい。株価は大底圏に位置しており、昨年11月の急落以前の水準である800円台が当面の戻り目標となる。
【アートSHDは米ウェブトゥーンとの連携評価】
アートスパークホールディングス <3663> [東証2]はグラフィック分野のクリエーター向けイラスト制作ソフトを収益の柱に、車載向けやモバイル・デジタル機器向けソフト開発などを手掛ける。グラフィック分野ではクリエーター向けイラスト制作ソフト「CLIP STUDIO PAINT(クリスタ)」がドル箱商品として業績を牽引している。昨年12月にLINE関連会社の米ウェブトゥーン・エンターテイメントと資本・業務提携し、マーケティングなどで協業していく方針。写真や画像を3D化するメタバースサービスに期待がかかる。ここ数年来の収益成長スピードは凄まじく、21年12月期の78%営業増益に続き、22年12月期は41%営業増益を計画。19億4200万円予想は前期に続く大幅最高益更新となる。株価は4ケタ大台指向に。
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