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―農水省は24年度概算要求で100億円計上、ICT活用で生産性向上を実現―
ロシアによるウクライナ侵攻が食料危機やエネルギーの高騰を引き起こし、世界的なインフレや金融不安が生じている。地球温暖化が原因とみられる自然災害の多発もあって食料安全保障が脅かされるなか、農林水産省は8月31日に2024年度予算の概算要求を公表した。総額は2兆7209億円(23年度当初予算額は2兆2683億円)で、このうち「生産性の向上に資する スマート農業の実用化等」に100億円(同40億円)を計上。また、税制改正要望ではスマート農業技術などを活用した生産性の高い食料供給体制の確立に向けた税制上の所要の措置が盛り込まれており、関連銘柄に注目したい。
●技術開発などの支援強化へ
スマート農業とは、ロボット技術や情報通信技術(ICT)を活用して、省力化・精密化及び高品質生産を実現する新たな農業のこと。「生産性の向上に資するスマート農業の実用化等」は、スマート農業技術の開発・実用化や実需に対応した川上から川下までが参画して行う研究開発、農業・食品産業技術総合研究機構の機能強化、サービス事業体の育成、飛躍的な生産性向上に向けた生産・流通・販売方式の一体的変革の推進を目的とし、技術開発やスタートアップへの総合的支援を大幅に強化するとしている。
政府は将来的に食料を確保することを目的に、農政の基本理念や政策の方向性を示す食料・農業・農村基本法の見直しを進めており、食料安定供給・農林水産業基盤強化本部が6月に開いた会合では「平時からの国民ひとりひとりの食料安全保障の確立」「環境などに配慮した持続可能な農業・食品産業への転換」「人口減少下でも持続可能で強固な食料供給基盤の確立」の3つを柱に進めていくと明示。岸田文雄首相は同会合を踏まえ「スマート技術の開発やサービス事業体の育成などを促進する仕組みを創設する」と発言している。
また、農水省が今月5日にウクライナと「農業復興戦略合同タスクフォース」を設置することで合意したと発表していることにも注目したい。農業IoTなどの技術を持つ国内企業の参画も得て具体策を検討するとしており、スマート農業に関連する企業のビジネス機会が更に広がりそうだ。
●食料増産に貢献する銘柄群
関連銘柄の一つとして挙げられるのが、農業機械専業大手の井関農機 <6310> [東証P]だ。ロボットトラクターや自動操舵装置といったスマート農機を展開しているほか、ベンチャー企業への投資も積極的。6月にはアーリーステージにあるベンチャー企業などを中心とした当面の出資枠として10億円を設定しており、今後の動向から目が離せない。
タカミヤ <2445> [東証P]は7月、スマート農業のデジタルトランスフォーメーション(DX)事業を推進するAGRIST(宮崎県新富町)との共同の新規事業となる ロボットと人工知能(AI)を活用した自動化農業システムパッケージ「Sustagram Farm」の販売を開始したことを明らかにした。AGRISTが展開する農業用ロボットやデータを用いた再現可能性の高い農業アシストサービスと、同社のスマート農業に最適化されたビニールハウスの事業を掛け合わせることで、農業経験値の低い人でも使いこなすことができるという。
オプティム <3694> [東証P]は7月、次世代水稲栽培技術「ストライプ・シード・シューター・テクノロジー」を発表している。自動航行ドローンに同社が開発した種籾(たねもみ)を打ち込むパーツである「ストライプ・シード・シューター」を取り付けることで、従来のドローン直播(じかまき)で主流であった「散播(さんぱ)」(不規則、無作為に種を圃場にばら撒く栽培方法)ではなく、苗の生育リスクが低く、収量が期待できる「打ち込み条播(じょうは)」を行うことが可能だ。
インターネットイニシアティブ <3774> [東証P]は、愛媛県の「23年度愛媛県デジタル実装加速化プロジェクト(トライアングルエヒメ)」に採択され、ICTを活用してみかん栽培の品質・収量の向上を推進するスマート農業実装プロジェクトを8月から開始している。この実装検証では、LoRaWAN(免許が不要な周波数920メガヘルツ帯で利用でき、低消費電力かつ長距離通信を特長とする無線通信技術)ネットワークを構築し、畑に設置するセンサーで計測した土壌水分量データをクラウド上に収集し、みかん栽培における品質及び収量向上に効果的な値を分析・可視化することで、最適な栽培モデルの確立を目指す。
ネクシィーズグループ <4346> [東証P]子会社のネクシィーズが展開しているLED照明や業務用空調など最新の省エネルギー設備を初期投資オールゼロで導入できる「ネクシィーズZERO」は、4月にアグリ推進部を新設して農業分野に本格参入した。設計から施工まで初期投資がオールゼロの月額料金のみで、スマート農業や農業ハウスが導入できる新しいサービスとして全国に展開している。
このほか、農業ICTソリューション「OGAL(オーガル)」を提供するキーウェアソリューションズ <3799> [東証S]、子会社が農業ロボット開発を手掛けているアルプス技研 <4641> [東証P]、新たな食料増産技術(アグリテクノロジー)に取り組むOATアグリオ <4979> [東証P]、高精度かつ安定した位置情報で農作業の自動化・無人化により業務効率を向上させるICT農機の運用を支援するジェノバ <5570> [東証G]、ITとIoT技術で農業生産をサポートする「みどりクラウド」を展開するセラク <6199> [東証P]、農機の自動化や生育センサーによる可変施肥システムなどの農業DXソリューションを提供するトプコン <7732> [東証P]などからも目が離せない。
●展示会開催も関連銘柄の刺激に
きょうから幕張メッセで「第10回国際スマート農業EXPO」が開催されていることも関連銘柄の刺激となる可能性がある。同展示会では、ユニリタ <3800> [東証S]が農業経営支援クラウドサービス「ベジパレット」をPRするほか、やまびこ <6250> [東証P]はスマート農業に向けた取り組みについて未来をイメージしたコンセプトモデルを紹介するという。
これ以外では、日鉄ソリューションズ <2327> [東証P]、日本曹達 <4041> [東証P]、環境管理センター <4657> [東証S]、朝日ラバー <5162> [東証S]、平河ヒューテック <5821> [東証P]、西部技研 <6223> [東証S]、シンフォニア テクノロジー <6507> [東証P]、協栄産業 <6973> [東証S]、神鋼商事 <8075> [東証P]などが出展リストに名を連ねている。
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