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SFPホールディングスのニュース
■決算動向
1. 過去の業績推移
コロナ禍前(2020年2月期まで)の業績を振り返ると、店舗数の拡大がSFPホールディングス<3198>の成長をけん引してきた。特に、独自の収益モデルによる「磯丸水産」の出店が本格化した2010年9月期以降、業績の伸びが加速し、経常利益率も売上高の拡大に伴って大きく改善。2013年9月期の経常利益率が目標とする8%を超えると、2015年9月期には11.7%にまで上昇。その後も高い水準を維持してきた。ただ、2018年2月期から2019年2月期にかけて業績の伸びが緩やかとなったのは、環境変化への対応や今後の持続的な成長を見据え、新規出店を戦略的に抑えたうえで出店方針の見直し(景気変動の影響を受けやすい郊外店の退店等)を行うとともに、その分の投資余力や経営資源を既存店の強化や新業態の開発などに振り向けてきたことが理由である。2020年2月期は独自の「SFPフードアライアンス構想」を開始したことで店舗数及び業績は拡大したが、2021年2月期はコロナ禍の影響により業績は大きく後退するとともに、不採算店舗を中心に大規模な退店を行った。
財務面では、2014年12月の東証2部への新規上場に伴う公募増資(約12,758百万円)により、2015年9月期末の自己資本比率は76.8%に上昇し、その後もおよそ70%を超える水準で推移してきた。2021年2月期はコロナ禍の影響により当期純損失を計上したことと、運転資金の借入(約90億円)を実施したことで自己資本比率が低下したものの、依然として50%近くの水準を確保しており、財務基盤の安全性は維持されている。
2. 2021年2月期の連結業績
2021年2月期の連結業績は、売上高が前期比56.7%減の17,428百万円、営業損失が5,339百万円(前期は2,549百万円の利益)、経常損失が4,900百万円(同2,914百万円の利益)、親会社株主に帰属する当期純損失が5,650百万円(同1,461百万円の利益)とコロナ禍の影響により大幅な減収となり、各利益段階で損失を計上した。
コロナ禍に伴う全店(及び一部)休業や時短営業が通期にわたって断続的に続いたことにより、全業態で大幅な減収となった。特に、1回目の緊急事態宣言の発出に伴う全店休業(4月)及び時短営業(5月)の影響により、第1四半期の売上高が大きく落ち込み、第2四半期に入ってからもコロナ禍(第2波)に伴う時短営業(8月)により伸び悩んだ。通常営業が再開された第3四半期は、政府による「GoToイートキャンペーン」による恩恵もあり一旦回復に向かったものの、コロナ禍の再拡大(第3波)に伴う一部休業及び時短営業(1月~2月)により、第4四半期で再失速する結果となった。
特に、主力業態の「磯丸水産」は、駅前・繁華街(路面)での24時間営業にこそ強みを発揮できる収益モデルであるため、休業要請はもちろん、時短営業の影響を大きく受けた。例えば、1日の営業時間はモーニング(5時~11時)、ランチ(11時~14時)、アイドル(14時~17時)、ディナー(17時~24時)、ナイト(24時~29時)に区分されるが、時短営業により、モーニングとナイトの営業を自粛するとともに、ディナーを20時までに短縮したことにより、時間数で言うと通常営業の38%しか営業できなかったことになる。さらに売上高で言えば、1日の売上高のほぼ半分を占めていたディナーの時間帯が短縮されたことが大きかったようだ。逆に、(従来型の居酒屋においては、ディナー帯の売上高がほぼ全てとなっており)営業時間の制限による影響は、他の営業帯により多少なりともカバーできたという見方もできる。
月次の既存店売上高(休業店舗を含む/以下同様)の推移で見ると、全店休業となった4月が前年同期比5.2%、時短営業(及び一部休業)となった5月が同16.1%と極端に落ち込み、その後6月~7月は緩やかな回復基調にあったものの、コロナ第2波が拡大した8月は時短営業(及び一部休業)により失速。通常営業が再開された9月以降は一旦回復に向かい、10月には前年同期比70%水準にまで戻ってきたが、コロナ第3波の拡大に伴う時短営業(及び一部休業)により、2021年1月は前年同期比26.0%、2月は同27.7%と再び落ち込んだ。
出退店の状況については、第1四半期に既に契約済であった5店舗を新規出店する一方、固定費の高い都心の店舗や売上の減少が大きい空中階店舗(鳥良業態等)を中心に不採算店舗の53店舗を退店したことで、2021年2月末の総店舗数は227店舗(うち、FC 14店舗)となった。特に、今後の利益改善に向けて第4四半期だけで31店舗を退店している。
損益面でも、人員の再配置や新規採用の見送り、店舗経費の見直し等により販管費の削減に取り組んだものの、売上高が大きく減少するに伴って固定費負担(店舗家賃や人件費等)が重荷となり大幅な営業損失を計上した。四半期ごとの損益の状況を見ると、売上高が一旦回復(前年同期比62%水準)に向かった第3四半期には実質的に損益分岐点を確保できたものの、総じて固定費を賄いきれなかったことに加え、第4四半期には退店費用等が膨らんだことも利益圧迫要因となった。なお、コロナ禍に伴う政府からの雇用調整助成金(約24億円)を特別利益に計上する一方、コロナ禍による損失※(約13億円)、固定資産の減損損失(約16億円)などを特別損失に計上した。
※4月の休業要請に伴い発生した食材廃棄、休業中店舗の地代家賃及び人件費。
財政状態については、退店等により固定資産が減少したものの、コロナ禍が長期化するリスクを念頭に置き、銀行借り入れにより「現金及び預金」を確保したことから、総資産は前期末比6.8%増の24,535百万円と拡大した。一方、自己資本は当期純損失の計上により同34.4%減の10,743百万円に減少し、自己資本比率は43.8%(前期末は71.3%)に低下した。ただ、自己資本比率の低下は、有利子負債により「現金及び預金」を大きく増やしたことも影響しており、その点では「現金及び預金」と有利子負債の両方を圧縮し、通常時の状態に戻すまでの一過性のものと捉えることもできる。短期の有利子負債は9,580百万円(前期末は137百万円)に大きく膨らんだ一方、「現金及び預金」はそれを上回る11,628百万円を確保しており、ネットD/Eレシオ※では引き続きマイナスの状況となっていることから、財務面での懸念はない。しばらくは、新規出店等の大規模投資は控え、資金繰りを重視した財務オペレーションを継続する方針である。
※(有利子負債−現金及び預金)÷自己資本にて算出。同社の場合、「現金及び預金」が有利子負債を上回る状況となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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