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エバラ食品工業のニュース
■経営ビジョン「Evolution60」
1. 基本戦略と業績目標
エバラ食品工業<2819>は、超高齢化、世帯人数の減少、共働き世帯の増加、人口減、社会の成熟化、ニーズの多様化など様々な社会環境の変化を想定し、そのような環境下においても、各事業を磨き抜いて進化させることで、国内の安定的収益と海外での成長基盤を確保することを目指している。このため同社は、2015年3月期から創立60周年を迎える2019年3月期までの5ヶ年を対象とした長期的な経営ビジョン「Evolution60」を策定した。基本とする戦略方針を「エバラブランドの価値向上」と「ニッチ&トップポジションの確立」と定め、「たれの進化」と「コミュニケーションの進化」を経営軸に、持続的な成長を目指している。連結数値目標として、2019年3月期に営業利益率4%、海外売上高10億円、ROE5%を達成する考えである。
2. 第1~第2ステージの成果、ファイナルステージの取り組み
同社は「Evolution60」を3つのステージに分けている。第1ステージ(2015年3月期−2016年3月期)では、新価値提案のプロモーションにより家庭用既存商品の底上げを行い、社会変化に対応する新たな価値として「プチッと鍋」に代表されるポーション調味料を市場に投入、定着させた。また、香港とシンガポールに販売拠点を設置し、海外事業展開の基盤構築を進めた。第2ステージ(2017年3月期−2018年3月期)では、「黄金の味」を始めとする家庭用既存主力商品の収益力強化に加え、ポーション調味料の生産設備投資とラインアップの拡充、業務用事業の収益改善、台湾現地法人の設立など成長分野への取り組みを推進した。なかで最も重要な施策が、2017年7月「黄金の味」のリニューアルである。
ファイナルステージである2019年3月期においては、「Evolution60」の総仕上げの1年として、1)リニューアルした「黄金の味」の新しい価値の訴求と適正な利潤を伴う市場浸透、2)メニューバリエーションの強化と用途拡大によるポーション調味料の更なる拡充、3)商品構成の見直しなどによる業務用事業の収益改善、4)海外事業拡大やコンビニエンスストアへのアプローチ強化などによるエバラブランドの潜在顧客掘り起こしと継続的成長力の確保——を推進しているところである。そのほか、収益管理の徹底とグループ連携強化による事業効率の向上、従業員の成長支援と働きやすい職場づくりによる生産性の向上、商品力・ブランド価値・経営品質の向上による企業価値の持続的創造による事業基盤の強化——も同時に進めている。
出足に躓いた「黄金の味」だが、2018年3月期第4四半期には底離れ
3. 「黄金の味」リニューアルとその後の進捗状況
「黄金の味」は、年間4,000万本を出荷する焼肉のたれのトップブランドである。しかし、昨今のライフスタイルの変化やニーズの多様化に対応するため、小売りにとっても価値を訴求できる、値崩れしない商品としてリニューアルする必要が出てきた。リニューアルのポイントは、新製法により原料の3分の1を占めているフルーツピューレを従来の2倍の粘度をもたせた品質に見直したことである。併せてピューレの主原料であるリンゴを100%国産に見直している。それとともに、「甘口」「中辛」「辛口」の特徴をより明確にし、また、容量は従来の3サイズから5サイズに拡充して個食からパーティまでをカバー、360グラム以上の商品では丈夫で軽量なペットボトルを採用した。さらに、パッケージもフルーツのイラストを使って品質を分かりやすく表現するとともに、注意表記にはユニバーサルデザインを使用するなど、見やすく分かりやすいデザインへと変更した。
しかし、「黄金の味」のリニューアルは、同社にとって主力商品では初の本格的リニューアルであり、しかも新しい価値=「適正な利潤を伴った市場浸透」を狙っていたため、様々なリスクが伴うのは承知の上である。リニューアルした2018年3月期は、リニューアルを前に旧品在庫の消化率低下や小売サイドの“様子見”などが起こり、リニューアル商品の市場浸透が想定より遅れ、「黄金の味」の出荷が計画に対しビハインドすることとなった。このため、四半期別の全体売上高は前年同期比で減収、期初予想比で未達という推移となった。加えて、第1四半期に生産が集中したため第2四半期に生産量が減少して原価率の上昇を招いたこと、「黄金の味」リニューアル発売のタイミングとなった第2四半期に宣伝費を集中的に投下したことにより、特に第2四半期の利益水準が大きく低下することとなった。
しかし、第4四半期に入って、「黄金の味」の「適正な利潤を伴った市場浸透」の考え方への周囲の理解が徐々に進み始めた。まず、拡販費が前年と比較して大幅に削減されたことで、利益のマイナス幅が縮小した。それから、旧品の影響が薄れ、小売サイドでも「価値を訴求できる」ことへの理解が進んできたもようである。アンケートなどによるリニューアルの評価は総じて高く、また「辛口」など特に評判のよいアイテムも出てきている。このため、新「黄金の味」のポテンシャルは大きいと考えられ、ファイナルステージでの巻き返しに期待したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
<TN>
1. 基本戦略と業績目標
エバラ食品工業<2819>は、超高齢化、世帯人数の減少、共働き世帯の増加、人口減、社会の成熟化、ニーズの多様化など様々な社会環境の変化を想定し、そのような環境下においても、各事業を磨き抜いて進化させることで、国内の安定的収益と海外での成長基盤を確保することを目指している。このため同社は、2015年3月期から創立60周年を迎える2019年3月期までの5ヶ年を対象とした長期的な経営ビジョン「Evolution60」を策定した。基本とする戦略方針を「エバラブランドの価値向上」と「ニッチ&トップポジションの確立」と定め、「たれの進化」と「コミュニケーションの進化」を経営軸に、持続的な成長を目指している。連結数値目標として、2019年3月期に営業利益率4%、海外売上高10億円、ROE5%を達成する考えである。
2. 第1~第2ステージの成果、ファイナルステージの取り組み
同社は「Evolution60」を3つのステージに分けている。第1ステージ(2015年3月期−2016年3月期)では、新価値提案のプロモーションにより家庭用既存商品の底上げを行い、社会変化に対応する新たな価値として「プチッと鍋」に代表されるポーション調味料を市場に投入、定着させた。また、香港とシンガポールに販売拠点を設置し、海外事業展開の基盤構築を進めた。第2ステージ(2017年3月期−2018年3月期)では、「黄金の味」を始めとする家庭用既存主力商品の収益力強化に加え、ポーション調味料の生産設備投資とラインアップの拡充、業務用事業の収益改善、台湾現地法人の設立など成長分野への取り組みを推進した。なかで最も重要な施策が、2017年7月「黄金の味」のリニューアルである。
ファイナルステージである2019年3月期においては、「Evolution60」の総仕上げの1年として、1)リニューアルした「黄金の味」の新しい価値の訴求と適正な利潤を伴う市場浸透、2)メニューバリエーションの強化と用途拡大によるポーション調味料の更なる拡充、3)商品構成の見直しなどによる業務用事業の収益改善、4)海外事業拡大やコンビニエンスストアへのアプローチ強化などによるエバラブランドの潜在顧客掘り起こしと継続的成長力の確保——を推進しているところである。そのほか、収益管理の徹底とグループ連携強化による事業効率の向上、従業員の成長支援と働きやすい職場づくりによる生産性の向上、商品力・ブランド価値・経営品質の向上による企業価値の持続的創造による事業基盤の強化——も同時に進めている。
出足に躓いた「黄金の味」だが、2018年3月期第4四半期には底離れ
3. 「黄金の味」リニューアルとその後の進捗状況
「黄金の味」は、年間4,000万本を出荷する焼肉のたれのトップブランドである。しかし、昨今のライフスタイルの変化やニーズの多様化に対応するため、小売りにとっても価値を訴求できる、値崩れしない商品としてリニューアルする必要が出てきた。リニューアルのポイントは、新製法により原料の3分の1を占めているフルーツピューレを従来の2倍の粘度をもたせた品質に見直したことである。併せてピューレの主原料であるリンゴを100%国産に見直している。それとともに、「甘口」「中辛」「辛口」の特徴をより明確にし、また、容量は従来の3サイズから5サイズに拡充して個食からパーティまでをカバー、360グラム以上の商品では丈夫で軽量なペットボトルを採用した。さらに、パッケージもフルーツのイラストを使って品質を分かりやすく表現するとともに、注意表記にはユニバーサルデザインを使用するなど、見やすく分かりやすいデザインへと変更した。
しかし、「黄金の味」のリニューアルは、同社にとって主力商品では初の本格的リニューアルであり、しかも新しい価値=「適正な利潤を伴った市場浸透」を狙っていたため、様々なリスクが伴うのは承知の上である。リニューアルした2018年3月期は、リニューアルを前に旧品在庫の消化率低下や小売サイドの“様子見”などが起こり、リニューアル商品の市場浸透が想定より遅れ、「黄金の味」の出荷が計画に対しビハインドすることとなった。このため、四半期別の全体売上高は前年同期比で減収、期初予想比で未達という推移となった。加えて、第1四半期に生産が集中したため第2四半期に生産量が減少して原価率の上昇を招いたこと、「黄金の味」リニューアル発売のタイミングとなった第2四半期に宣伝費を集中的に投下したことにより、特に第2四半期の利益水準が大きく低下することとなった。
しかし、第4四半期に入って、「黄金の味」の「適正な利潤を伴った市場浸透」の考え方への周囲の理解が徐々に進み始めた。まず、拡販費が前年と比較して大幅に削減されたことで、利益のマイナス幅が縮小した。それから、旧品の影響が薄れ、小売サイドでも「価値を訴求できる」ことへの理解が進んできたもようである。アンケートなどによるリニューアルの評価は総じて高く、また「辛口」など特に評判のよいアイテムも出てきている。このため、新「黄金の味」のポテンシャルは大きいと考えられ、ファイナルステージでの巻き返しに期待したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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