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sMedio Research Memo(6):収益モデルの維持・拡大で黒字確保へ(2)

配信元:フィスコ
投稿:2018/09/26 15:06
■今後の見通し

2. 2018年12月期の重点施策・成長戦略とその進捗状況
sMedio<3913>は、2017年12月期の業績不振に伴い、従来掲げていた2020年までの中期計画目標を撤回し、2018年12月期を業績回復の1年という位置付けにした。中期計画で描いていた基本的な成長戦略方針は継続するが、目標数値については一旦撤回し、この1年間の業績動向によって目標設定を見直すということである。

同社が現在抱えている最大の課題は、1)新規の収益モデルの拡大に予想以上に時間を要しており、この加速が必要であること、2) ロイヤリティ収入/開発収入が予想以上に急速に鈍化しており、可能な限り維持向上を図ること、である。そのために、2018年12月期は以下の重点施策・成長戦略を推進するとしており、第2四半期時点での進捗状況と合わせてトレースしてみる。

(1) ロイヤリティ・開発収入拡大に対する戦略
● 新4K/8K衛星放送への製品展開
1) 期初目標
“4K/8Kの高解像度画像”、“放送とネットワークの融合”市場に自社コア技術を投入し、ロイヤリティビジネスの新たな成長エンジンに位置付ける。

同社では、この提供サービスを「sMedio高解像度ソリューション」と呼び、適用する要素技術は、4K/8K画像処理技術、AR・VR技術、4K/8Kブラウザ・ハイブリッドキャスト表示技術、4K/8K高解像度VODプレイヤー技術である。

2018年12月1日から開始される新4K/8K衛星放送を大きな機会と捉え、対応デジタルTV、レコーダー、セットトップボックス向けのソフトウェアの開発・販売を展開していく。具体的なsMedio製品としては、新4K/8K衛星放送録画番組の再生プレイヤー「Valution UHD-BDAV」、組込みブラウザ「tourbillon」、ハイブリッドキャストブラウザ、がある。

2) 進捗状況
2018年12月期は、実用放送開始に向けて、キー顧客向け開発に注力し開発収入の拡大を図っている。既に3プロジェクト(BDレコーダー、セットトップボックス、デジタルTV)が受注済み・開発中で、そのうち2プロジェクトは年内納入、1プロジェクトは2019年納入を目指しているとのことである。これらを確実に製品化し、2019年以降は他社にも展開することで、ロイヤリティ収入への貢献が期待される。

新4K/8K衛星放送の実用放送がまもなく開始することや、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックが迫ってくることで、今後は該当市場の拡大も加速することが予想されている。同社にとって、今後の開発収入・ロイヤリティ収入の1つの柱としての位置付けに成長することが期待される。

(2) サブスクリプション・運用サービス収入拡大に対する戦略
● AIを新たな成長エンジンとしたサービスの展開にシフト
1) 期初目標
“モノのAI化”、“AIファンデーション”などAIの技術に関連して成長するものが、今後の有望技術として数多く予想(「ガートナー戦略的技術トップ10」 2017年10月26日発表)されている。同社では、2017年12月期に富士通<6702>との共同開発で商用化した画像解析AIエンジンを「sMedio AI Technologies」として販売開始した。2018年12月期は、さらに、画像解析AIエンジン製品ラインナップ拡張とスケーラビリティ化やクラウド型スマートソリューション開発、クライアント型軽量化、エッジ対応などを行い、高付加価値サービス「sMedio Smart Solutions」として提供を開始する。これによって、関連売上を2017年比で230%増を目指す。2019年以降は、さらに他社ソリューション連携などを図り、2017年比で450%増を目指す。

ここでは、同社の従来から有する、マルチメディア・ワイヤレスコネクティビティ技術、AI・IoT・クラウド製品群(特に画像解析AIによる顔認識、動体認識ソリューション)の自社ソリューションと、Acerグループの有するハード・ソフト開発ノウハウや先進のデジタルサイネージ技術などとの連携で、「sMedio Smart Solutions」として製品展開を図っていく。

従来、同社の収入の主力となっていたロイヤリティ収入が今後低迷することが予想されるため、長期的にはサブスクリプション・運用サービス収入を、大きな柱として拡大させていく必要がある。今後の成長戦略として、同社が掲げた「sMedio Smart Solutions」は、従来のsMedio IoT Solutionに、デジタルサイネージやAI技術を組み合わせて、より幅広いソリューション提供を可能とするものになる。戦略の方向性としては、特に従来路線から転換しているわけではないが、人材採用なども含めて今後はいかにスピードを上げて実績に結び付けていけるかが求められる。

2) 進捗状況
既に多くのプロジェクトが進行しており、それぞれ今後の横展開が期待される。販売拡大施策としては、下記の商社との販売代理店契約締結のほか、業界展示会での異業種チャネル開拓や自社販売チャネルでの販売強化、同社AI技術をマルチプラットフォームSDK(Software Development Kit)化することによって横展開を加速させる、などの推進を行っている。既に実証実験中の案件が3件、年内中に実証実験を予定している案件が4件、アプローチ案件に至っては多数あるとのこと。対象業種としては、流通業、建設業、製造業など多岐にわたる。

同社業績への貢献度については、共同開発でシステム開発を受託する場合は、システムの規模にもよるが比較的タイムリーに寄与できると考えられる。その後3~6ヶ月間の実証実験を経て商用化となる。商用化後はサブスクリプション・運用サービス収入として計上されることとなるが、横展開次第で前述の年度別目標値(2018年は2017年比で230%増、2019年以降は450%増)を超える伸長をみせる可能性もあるだろう。

・画像解析エンジン商用化(富士通ロボットAI×sMedio共同開発)
同社と富士通が共同開発した表情認識技術では、わずかな表情の変化でも喜怒哀楽が判別可能であり、同時に、顔が一部隠れた状態でも個人を識別できる顔認識技術を活用しており、生活シーンやビジネスシーンにあわせて利用できる技術に進化させたという。

・西松建設「山岳トンネルAIソリューション」に採用
山岳トンネルAIソリューションは、山岳トンネル工事における、「施工・品質」、「地山評価」、「安全・健康」という3つの局面での課題を同社の画像処理技術とAIによる物体認識ソリューションで解決するもの。同社と西松建設<1820>の共同開発の第1歩として、本年度中の完成を目標に、掘削サイクルの判定システムの開発をスタートさせた。これは、山岳トンネル工事における、「穿孔・装薬」、「発破」、「ずり搬出」、「吹き付け」、「ロックボルト装填」の5つの工程をカメラの映像からAIで認識するもので、現場における工程の進捗をクラウド経由で離れた場所から把握することが可能となる。競合他社ソリューションに対して同社ソリューションは、顧客仕様への対応力・納期遵守という点で強みを持っているとのことである。

・商社との販売代理店契約
同社のAIソリューションの商用化を促進させるために、協栄産業<6973>エレマテック<2715>とそれぞれ販売代理店契約を締結した。今後は、協栄産業についてはロボット制御など、エレマテックについては車載機器など、各社の得意とする異業種チャネルで同社のAIソリューション商用化への貢献を期待しているとのことである。

・複数社との実証実験開始
その他にも複数社との実証実験を開始している案件があるとのこと。例えば、1)居酒屋チェーン店向けに、入場者の年齢をAIで判定し、店員の負担軽減、未成年者の検出漏れを防止するシステム、2)コンビニ店舗向けに、古紙回収のリサイクルで店舗訪問した入場者の年齢・性別をAIで認識し、ディスカウントクーポンを発行するシステムなどである。

・クラウド型スマートソリューションの開発
出版物取次大手の(株)トーハンとの共同実施で、書店用サイネージシステム「AI書店員ミームさん」のAIエンジン、サイネージシステムの設計開発を同社が担当することとなった。このシステムでは、同社の表情認識エンジン、年代/性別認識エンジンが採用され、エンジン搭載のデジタルサイネージにより、来店者の性別、年代、表情に合わせて、おすすめの書籍を表示するというものである。2017年11月より、(株)早川書房、AXNミステリー((株)ミステリチャンネル)の協力により、アガサ・クリスティー文庫フェアと連動する形で、都内の大手書店3店舗(ブックファースト新宿店、天狼院書店池袋駅前店、八重洲ブックセンター本店)にて実証実験を実施している。なお、本実証実験においては、(株)TBSラジオ、ディー・エル・イー<3686>、(株)トーハン、同社の4社コラボ企画で、「AI書店員ミームさん×秘密結社鷹の爪 吉田くん」特別バージョンにて期間限定(2018年8月中)のマーケティングを行っている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 山田 秀樹)

<MH>
配信元: フィスコ
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