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―飲食バイト時給最高も働き手戻らず、インバウンド本格再開を控え更なる深刻化を懸念―
新型コロナウイルス感染拡大対策の行動制限が3月に全面解除されて以降、 飲食業界を中心に人手不足が再燃している。飲食各社はコロナ鎮静化を見据えて2021年秋ごろから出店再開に動き始め、それに伴いスタッフのニーズが高まっていたが、思うように 人材の確保が進まず、人手不足が業績の足かせになるケースも出始めた。
今後、 インバウンドが本格的に再開すれば宿泊やレジャー業界などでも人材需要が高まり、サービス業全体でアルバイト人材の取り合いとなる可能性は高い。関連企業にとっては大きなビジネスチャンスとなりそうだ。
●アルバイトの時給は過去最高を更新中
人手不足が顕著にうかがえるのが、アルバイト・パート市場における時給の上昇だ。リクルートホールディングス <6098> [東証P]傘下のリクルートの調査研究機関ジョブズリサーチセンターがまとめた5月度の「アルバイト・パート募集時平均時給調査」(3大都市圏)によると、3大都市圏の5月度平均時給は、前年同月より31円(2.8%)増の1123円となり、18年3月度以来の過去最高額を更新した。
前年はゴールデンウイーク前後に一部地域に緊急事態宣言が発令されるなど新型コロナの影響が大きかったことから、その反動で前年同月比が高水準になったとみられている。ただ、コロナ禍前の19年5月との比較でも49円(4.9%)上昇している。時給を引き上げることで、人材を獲得しようとする企業の姿が見て取れる。
●求人広告も増加基調が加速
人手不足は求人広告にも表れている。全国求人情報協会が発表する求人広告掲載件数等集計結果によると、求人広告掲載件数は週平均で20年9月の68万9366件を底に増加基調にあったが、21年11月以降はそれが加速している。行動制限が全面的に緩和された今年3月は131万3430件(前年同月比48.1%増)、4月は137万7601件(同60.0%増)で、直近5月はやや伸び悩んだものの、それでも119万7161件(同48.8%増)と前年同月から大きく増加した。
特に伸びが大きいのがアルバイト・パートの求人広告件数だ。件数は21年5月以降前年同月比でプラスに転じたが、今年3月は84万8712件で前年同月比50.0%増、4月は91万5401件(同64.5%増)、5月は77万2932件(同53.9%増)と大幅な伸びとなっている。
●観光業界でも人材需要増加の可能性
これらの数字から見て取れるのは、飲食業界における人材獲得の難しさだ。もともと飲食業界は慢性的な人手不足に悩まされてきたが、大学生をはじめとする学生からの応募は順調だった。授業終了後に勤務でき夜間は時給も良いためだったが、コロナ禍で状況は一変。感染拡大防止のため、飲食店に営業時間短縮や自粛が求められるようになると、働く場がなくなるケースも増えた。
飲食各社は21年秋ごろから新型コロナの沈静化をみすえた出店再開の動きが目立つようになったが、一度離れた学生が飲食業界を敬遠する動きもみられ、思うように人材が集まらないのが現状だ。また、コロナ禍前の生活に戻り切っていない学生も多く、そのことも人材が集まらない要因となっている。
更に人手不足に拍車をかけそうなのが、インバウンドの再開に伴うレジャー・ホテルなど観光業界からの人材需要だ。政府はコロナ禍で制限していた訪日外国人観光客の受け入れを6月10日から再開した。当面は98の国と地域を対象に1日当たり2万人の枠内で、かつ添乗員付きのパッケージツアーに限定されているものの、夏季シーズンに訪日を計画している外国人観光客は着実に増加している。今後、インバウンドの本格的な再開を控え、観光業界でも人材需要が増加する可能性は高いだろう。
●人材採用へのコスト増で商機拡大が期待できる銘柄
こうした状況を踏まえ、企業側もこれまで以上に人材採用にコストをかけ始めており、関連企業のビジネスチャンスは拡大しよう。
ディップ <2379> [東証P]は国内最大級のアルバイト・パート求人情報サイト「バイトル」をはじめアルバイト・派遣・社員の求人情報サイトを運営する。22年2月期は積極的な広告宣伝投資で営業利益56億200万円(前の期比23.4%減)と減益となったが、23年2月期は広告需要の増加と単価の上昇が広告宣伝費や販促費などの増加を吸収する見通しで同94億~169億円(前期比67.8%増~3.0倍)を見込む。
じげん <3679> [東証P]は提携する複数のインターネットメディアの情報をまとめて一括検索・一括申し込みが可能なサイトを運営しており、人材領域が主力。なかで「アルバイトEX」では、約20サイトからアルバイトの求人を検索できる。22年3月期は営業利益33億1400万円(前の期10億6200万円の赤字)と黒字転換したが、23年3月期は同39億円(前期比17.7%増)を見込む。
シンクロ・フード <3963> [東証P]は飲食店の開業を目指す事業者と周辺事業を営む事業者をつなぐ「飲食店.COM」が主力だが、飲食専門の求人情報サイト「求人@飲食店.COM」も運営している。23年3月期は、売上高は23億円(前期比17.4%増)と2ケタ増収を見込むものの、エンジニア・ディレクター及び営業人員の採用による体制強化に取り組むことから、営業利益は4億7000万円(同4.3%増)を見込む。
フルキャストホールディングス <4848> [東証P]は、顧客企業の業務量の増減に合わせてタイムリーに短期系人材サービスを提供。主力のアルバイト紹介事業が復調しており、22年12月期第1四半期は営業利益が24億4800万円(前年同期比56.2%増)と大幅増益となっており、滑り出しは順調。22年12月期通期は同80億円(前期比5.4%増)を見込む。
エン・ジャパン <4849> [東証P]は日本最大級の転職情報サイト「エン転職」が主力で、派遣型のアルバイト情報を紹介する「エンバイト」も運営する。国内求人サイトはコロナ禍から順調に回復傾向にあり、23年3月期は売上高620億円(前期比13.7%増)と2ケタ増収を見込むが、今後の成長基盤構築のための積極投資を行うため営業利益は30億8500万円(同68.0%減)と大幅減益を見込む。
このほか、アルバイト求人情報サイト「らくらくアルバイト」を展開するイオレ <2334> [東証G]、アルバイト求人情報サイト「マッハバイト」を運営するリブセンス <6054> [東証P]などにも注目。更に、パートやアルバイトの採用コンサルティングや採用代行を行うツナググループ・ホールディングス <6551> [東証S]も関連銘柄といえよう。
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