中国株暴落のリスクをどのように考えれば良いか

投稿:2015/07/09 08:05

問題は実体経済に波及するかどうか、上海銀行間取引金利に注目

ご存じのように中国株が暴落しています。中国株暴落の原因は当局の打ち出した数々の株価対策にあると思います。前週末時点で上海総合指数は50日線より19%以上も下げており、そろそろ自律反発が入ってもおかしくないところにありました。

しかしその期待を台無しにしたのが、基金による株価買い支え、空売りの監視、取引停止措置等々の株価対策だったと思います。このような株価対策が古今東西においてうまく機能したことなどありません。中国は日本や米国のバブル崩壊を周到に研究していると聞いていましたが、動揺したのか、理性が作用せず、衝動的に下手な手を出してしまったのだと思います。

中国本土では7日、8日と連日で数百もの企業が、自社株買いや従業員持ち株制度の準備などという、とても重要事項と思えない理由で売買停止を申請しました。当局の株価対策の一環と思いますが、最悪の結果を招いています。A株ではすでに上場企業の半数近く(1400社以上)が売買停止となっており、売るに売れない状況が、パニック心理を作り出しています。

持ち銘柄が売るに売れない時、パニックになった人々は他の売れる銘柄を先に売ってしまおうとするでしょう。

先週までは、中国本土株が大きく下がり、それにつられて香港株も少し下がるという具合でした。しかし本土で株価対策と取引停止銘柄続出した今週は、香港市場が本土の吐き出し口となった模様で、上海以上に香港で売り注文が出ている様子です。香港には一時的な買い支えもなく、ストップ安もないからです。

しかし、山高ければ谷深し、と今回はもう幾分下がる恐れもありますが、(短期的に)底値としては十分なところに来ていると思います。

一番重要なポイントは、この株安が実体経済に影響を及ぼすかどうかです。その点の重要な指針となるのが上海銀行間取引金利(SHIBOR)です。2013年にシャドーバンキングが問題になったときは銀行の資金繰りが危機的な状況にあると考えられ、短期金融市場に緊張が走り、SHIBORが急騰しました。こうなると信用収縮が起こり、銀行からの資金供給に問題が起こるので実体経済に影響してきます。

ところが今回の株価急落ではSHIBORは落ち着いており、信用収縮が起きていません。つまり現在の中国の株式市場は個人投資家のギャンブルの場とみられており、実態経済への影響は限定的であるとみなされているのだと思います。

むろん、王道投資としては、このような底値で買いをいれず、きちんと底打ちして調整後に、再び上昇基調に戻ったと確認できたところで買う、順乗りで臨むのが正しいと思います。しかし、これほどまで下がることは数年以上に一回のことであり、あえてリスクを拾う気持ちがあれば、買いを検討してチャンスを狙っても良いと思います。さらに下がる恐れも想定し、買いは3回に分散するのが底値拾い、逆張り投資の鉄則です。
小池麻千子
グローバルリンクアドバイザーズ 株式アナリスト
配信元: 達人の予想