ドル円が8年来の高値

著者:矢口 新
投稿:2015/05/28 19:23

利上げは時期だけの問題

ドル円レートが2カ月余り続いた三角保合を上抜け、8年来の高値に上昇した。きっかけは米国の利上げ時期が年内にも確実視されてきたことと、米景気指標の改善などがある。

市場内部の要因では、シカゴのIMM通貨先物に見られる投機筋によるドルロング・円ショートが、4月末まで一貫して減少、ほぼスクエアとなっていた。これは利上げ、利上げと積み上げてきたポジションの持ち疲れかと思う。これが、5月に入って再び増加し始めた。オプション市場でも、ドルのコールオプションが買われていると言う。

これで見ると、5月までのドル円の頭を押さえていたものが、投機筋によるドル売り円買い(ドル買い円売りポジションの巻き戻し)だと推測できる。では、これだけのドル売り圧力に対して、三角保合のサポートとなってきたドル買いはどこから来ているか?私は日本の機関投資家による外貨買い円売り需要が主力だと見ている。

「生保主要9社の2015年度の計画によると、外債への新規投資額の合計は4兆円に迫る水準となった。また、GPIF、KKR、地共済、私学共済、地方自治体の各種年金を合わせると、今後数年間で30兆円近くもの外貨建て投資拡大が見込まれている。」

投機筋の売買は時間が経てば基本的にゼロになる性質を持つ。買ったものは必ず売るので、市場のボラティリティに関与する。一方で、実需や投資家は売り切り買い切りや、保有によって、トレンドに影響を与えるのだ。

この見方では、ドル円の中長期トレンドはまだ上向きだ。そこに、短期筋が加わって、ドル円を買い始めたのだ。

米連銀による利上げは、時期だけの問題で、近い将来には確実視されている。では、なぜ6月ではないのかという資料をブルームバーグが紹介した。
米国では多くの労働者が、賃上げがなくてもより長く働きたいと望んでいる。まだ、職の需要の方が、労働力の需要より大きいのだ。
2009年以降、米国の失業者は劇的に減少し、一部の職種では人手不足が叫ばれているが、まだ全体としての雇用市場は回復、改善の余地があるという見方だ。
配信元: 達人の予想