日銀「31年ぶり1%」利上げでも株高——定石が通じなかった一週間に見えたこと

著者:藤村哲也
投稿:2026/06/22 13:22

2026年6月第3週(6月15日〜19日)

先週(6月15日〜19日)の株式市場は、教科書的な「定石」が通じない一週間でした。

先週の相場を振り返る

日経平均株価は週間で7.92%上昇し、19日には71,250円で取引を終えました。前の週末(66,020円)からの上昇幅は5,230円。TOPIXも週間4.20%高の4,044円と、指数全体が力強く伸びました。

きっかけは6月15日、米イラン間の停戦合意への期待が一気に広がったことです。地政学リスクの後退を受けて、この一日だけで日経平均は約5%上昇しました。

そして16日、日銀は政策金利を1.0%へ引き上げました。1990年代以来となる水準への利上げです。本来、利上げは株式市場にとって割引率の上昇や借入コストの増加を意味し、警戒される材料です。しかし今回、市場は冷静に受け止めました。すでに利上げ自体は織り込まれていたこと、そして円安や物価高への対応として「金融正常化が進んでいる」と前向きに評価されたことが背景にあります。銀行・保険株には、利ざやの改善期待から買いが入りました。

17日には米国でFOMCが開かれ、政策金利は据え置きとなりました。ただし、声明文の内容は「インフレはなお2%目標を上回っている」というもので、市場が期待していたような利下げへの前向きな姿勢は示されませんでした。それでも米国株は崩れず、半導体やAI関連株を中心にナスダックは週間2.43%上昇しています。

このように、先週は「利上げ=売り材料」「タカ派発言=売り材料」という単純な図式が当てはまらない展開でした。市場が何を「想定」していて、発表された内容がそれとどう違うか——この差分こそが株価を動かす本質だということを、改めて示してくれた一週間だったと思います。

一方で円相場は、日銀の利上げにもかかわらず大きくは円高に向かいませんでした。日米の金利差が依然として大きいことが背景です。ドル円が160円台後半から162円方向へ進むようであれば、為替介入への警戒が再び強まる可能性があります。

今週の注目ポイント

今週(6月22日〜26日)で最も重要なのは、米国の5月PCE(個人消費支出)統計です。PCEはFRBが特に重視するインフレ指標で、コア指数が市場予想を上回れば、米金利の上昇とともにハイテク・グロース株には調整圧力がかかりやすくなります。

企業決算では、半導体メモリー大手のMicron Technologyに注目しています。AI向けメモリー需要の強さが数字とガイダンスにどこまで反映されるかが、半導体セクター全体のセンチメントを左右します。また物流大手FedExの決算は、AI関連以外の実体経済の温度感を測る材料として参考になります。

国内では東京都のCPI(消費者物価指数)が発表されます。物価の動向は、日銀が追加利上げに動くタイミングを見極める上で重要な手がかりとなります。

中東情勢と原油価格の動きも、引き続き目を離せません。原油価格が再び上昇すれば、インフレ警戒・米金利上昇・ドル高円安という連鎖が意識されやすくなります。

藤村からひと言

「日銀が31年ぶりの水準まで利上げしたのに、なぜ株が上がったのか分からない」という声を多く耳にしました。

無理もないことだと思います。一般的な経済の知識では、利上げは株式市場にとってマイナス材料とされています。しかし実際の相場は、もっと複雑です。「利上げするかどうか」だけでなく、「市場がどこまで織り込んでいたか」「利上げの理由をどう評価するか」によって、反応は大きく変わります。

私がいつもお伝えしているのは、投資で本当に必要なのは「正解を覚えること」ではなく、「なぜそうなったのかを考える力」だということです。利上げ=売り、利下げ=買いという単純な公式を覚えるだけでは、今回のような相場には対応できません。

日本では、こうした金融の仕組みを学ぶ機会がまだ十分ではないと感じています。だからこそ、私たちは投資の助言だけでなく、投資の「考え方」そのものを伝えることを大切にしています。

今週は米国のPCE統計や主要企業の決算が相次ぎます。結果が出た後、市場がどう反応するかをじっくり観察してみてください。その「反応の理由」を考える習慣こそが、長期的に資産を守り育てる力になっていくはずです。

【免責事項】 本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任において行ってください。掲載情報は執筆時点のものであり、最新情報と異なる場合があります。

藤村哲也
ライジングブル投資顧問代表
配信元: 達人の予想

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