6月第1週の株式市場を振り返る——史上最高値更新から急落へ、相場が教えてくれたこと

著者:藤村哲也
投稿:2026/06/08 15:04

2026年6月第1週(6月1日〜5日)

2026年6月第1週(6月1日〜5日)の株式市場は、まるで山の頂上に立った瞬間に足元が崩れ始めるような、めまぐるしい一週間でした。

先週の相場を振り返る

週の前半、日経平均株価は歴史的な高値を次々と更新しました。6月1日には取引時間中に初めて67,000円台に乗せ、6月3日には終値で68,402円、取引時間中には68,786円まで上昇し、史上最高値を更新しました。牽引役はソフトバンクグループが発表したAI関連の大型投資計画で、同社株が一時15%を超える急騰を見せ、AI・半導体関連に連鎖的な買いが広がりました。

しかし週末の6月5日、一転して大幅な調整が訪れます。日経平均は前日比882円安の66,588円で週の取引を終えました。前場には一時1,600円安を記録する場面もあり、短期間での値幅の大きさに驚いた方も多かったと思います。

要因は主に3つです。

まず米国での半導体株の急落。米雇用統計が予想を大きく上回る強い内容となり(非農業部門雇用者数17.2万人増)、FRBの利下げ期待が一段と後退しました。同時に、半導体大手ブロードコムの決算発表をめぐる競合懸念が表面化し、エヌビディアが6.2%安、AMDが10.9%安と急落。ナスダックは4.18%安と、約1年ぶりの大幅下落を示しました。

また、翌週に予定されるスペースXの大型IPOを控え、投資家の一部で資金を確保する動きが意識されたことも、ハイテク株の需給悪化要因として受け止められました。

そして中東情勢の緊張再燃も加わり、売りに拍車がかかりました。

ただ、冷静に市場の内部を見ると、この下落は「特定の銘柄が指数を引き下げた」性質のものです。5日の東証プライム市場では、値上がり銘柄の比率が約76%に達しており、指数の下落ほど市場全体が崩れていたわけではありません。三菱UFJフィナンシャル・グループが上場来高値を更新するなど、金融株や内需株への循環物色も着実に進んでいます。



来週(6/8〜6/12)の注目ポイント 66,588

来週は波乱要因が集中する、難しい一週間です。まず月曜朝の東京市場は、CME日経平均先物が週末大証比で約3,000円安を示しており、大きなギャップダウンでのスタートが想定されます。

最大の注目材料は6月10日(水)発表の米5月CPI(消費者物価指数)です。前回4月の総合が前年比+3.8%、コアが+2.8%という水準から、インフレがさらに高止まりしていれば、米金利の急騰とともにドル円は160円台を明確に超えてくる可能性があります。介入警戒ラインとなる160円前後は、来週も最重要の焦点です。

また6月11日にはECB(欧州中央銀行)の政策金利決定があります。市場では利上げ観測が強まっており、欧州の金融引き締め姿勢がグローバルな金利環境に影響する可能性があります。

国内では6月8日(月)にGDP改定値が発表されます。民間予測では1次速報値から若干の下方修正が見込まれていますが、2四半期連続のプラス成長は維持される見通しで、過度な悲観は不要です。

個別テーマとしては、政府が重点投資分野として掲げる先端技術・エネルギー・宇宙・防衛関連への関心も続きそうです。量子コンピュータ、ペロブスカイト太陽電池、宇宙・防衛関連など、政策支援が意識されやすいテーマには、引き続き循環物色の余地があります。

藤村からひと言

今週の急落を見て、「高値で買ってしまったかもしれない」と不安になっている方がいれば、少し立ち止まって考えていただきたいことがあります。

今回のナスダック急落の一因は、スペースXという超大型IPOへの資金捻出のための売りでした。株価が下がる理由が「業績の悪化」ではなく、「別の投資機会への資金移動」だったのです。これは相場でよく起きることです。情報や材料の「中身」ではなく、「需給の動き」によって株価が大きく動く瞬間があります。

私自身、証券アナリストとして数百社を取材してきた経験がある中で、それでも市場の「需給の波」に翻弄されて痛い目を見たことがあります。どれだけ企業の実力が正しく評価されていても、買ったその後の値動きや市場環境の変化に適切に対応できなければ、資産は守れません。

大切なのは「今、この下落がどんな性質のものか」を冷静に見極めることです。指数が下がっていても、市場全体の7割の銘柄が上がっているという今週の事実は、とても示唆に富んでいます。

一気に動かず、何が起きているかを理解してから、段階的に判断する。焦って動かないことが、長期的な資産形成には何より大切です。



【免責事項】 本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任において行ってください。掲載情報は執筆時点のものであり、最新情報と異なる場合があります。

藤村哲也
ライジングブル投資顧問代表
配信元: 達人の予想