■事業概要
(5) 「〇〇×IT」(Industrial DX)
オプティム<3694>は、プラットフォーマーのためのプラットフォームである「OPTiM Cloud IoT OS」を活用し、各産業とIT(AI・IoTなど)を組み合わせる「○○×IT」によりすべての産業を第4次産業革命型産業へと再発明していく。この取り組みは、実証実験から始まり、特定の顧客企業向けの正式な事業やサービスとして育てていく。先行する業界は、「建設×IT」「農業×IT」「医療×IT」であり、既に事業として立ち上がっているものもある。
a) 建設×IT
建設×IT分野は最もAI・IoT活用が進んだ分野の1つである。コマツが主導する建設・土木における新プラットフォーム「LANDLOG」に対して「OPTiM Cloud IoT OS」を提供し、安全で生産性の高い未来の現場の実現を目指す。建設生産プロセス全体のあらゆる「モノ」のデータを収集(ショベルカー、ダンプカー、ドローンなどの管理・解析が可能)し、適切な権限管理のもとに様々なプロバイダーが、そのデータを建築現場を支える多くのユーザーに提供する。また、2020年には、建設DXとICT(情報通信技術)施工を推進する「(株)ランドログマーケティング」を設立し、スマートコンストラクション・レトロフィットキット※の販売や、建設向けDXソリューションのマーケティングを行っている。
※今使用している使い慣れた油圧ショベルに、最新のデジタル機器を“後付け”することで、ICTによる高機能化を実現する。
業界注目のアプリケーションとしては「OPTiM Geo Scan」がある。LiDARセンサー付きスマホやタブレットで土構造物等の測量対象物をスキャンするだけで、高精度な3次元データが取得できる。ドローンやレーザースキャナなどの利用が難しい小規模現場でも優位性を発揮し、従来の光波測量と比較すると、測量時間を最大6割削減することができる。また、測量には専門知識は不要で、一人で手軽に測量を行うことが可能であるため、人手不足や技術者不足解消にも役立つ。世界に先駆けて開発し、2021年の販売開始以来、様々なオプションや周辺機器を開発しており、利便性はさらに向上している。
b) 農業×IT
農業×ITの分野においては、世界初の「ピンポイント農薬散布テクノロジー」をはじめとしたAI・IoT・Roboticsの技術・プラットフォーム(農業DXサービス)を総合的に整備し、農業の省力化と高収益化を支援している。同社が開発したサービスには、ピンポイント農薬散布以外にも、ドローンを使った「播種テクノロジー」、圃場をAIやIoT機器より取得したデータを用いて解析するサービス「Agri Field Manager」、グライダー型ドローンを使った「広域圃場管理システム」などがあり、いずれも最先端のスマート農業を支える技術となっている。また、これまで培ってきた生育予測技術や病害虫発生予察技術とドローン防除の知見を組み合わせ、最小限の農薬で最大の防除効果の実現を目指す「ピンポイントタイム散布」サービスも開始。生産者のコスト低減や消費者の安心安全な食生活に貢献すると同時に、環境負荷も軽減する取り組みを積極的に進めている。
同社では、スマート農業を普及させ、“楽しく、かっこよく、稼げる農業”を実現するために、ビジネスモデル面でも革新的な取り組みを行ってきた。その1つが“スマートアグリフード”である。同社は生産者に対して最新のテクノロジーを無償提供し、付加価値の高い農作物を生産してもらう。それらを同社が全量買い取り、ブランドをつけて販売し、生産者とレベニューシェアをする。米については、「スマート米2023」(2022年度新米、7県11品種)として、自社オンラインストア「スマートアグリフード(愛称:スマ直)」や「Amazon」「楽天市場」などでインターネット販売されている。
c) 医療×IT
同社は、医療分野においてもIoT・AIを組み合わせ、医療が抱える様々な課題の解決に取り組んでいる。一例を挙げると、2016年に遠隔診療サービス「ポケットドクター」を発表し、経済産業省主催「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト2016」でグランプリを受賞した。2020年には、オンライン診療システムを手軽かつスピーディーに開発することができる「オンライン診療プラットフォーム」のOEM提供を開始している。さらに同年には、メディカロイドが開発した国産初の手術支援ロボットシステム「hinotoriTM サージカルロボットシステム」の運用支援、安全・効率的な手術室の活用支援及び手技の伝承・継承支援を目的としたネットワークサポートシステムのプラットフォーム「MINS(マインズ:Medicaroid Intelligent Network System)」の共同開発を行っている。「MINS」は、「hinotoriTM サージカルロボットシステム」に搭載された各種センサー情報や内視鏡映像、手術室全体の映像等の情報をリアルタイムで収集・解析・提供するオープンプラットフォームであり、同社の「OPTiM Cloud IoT OS」をベースに開発されている。「hinotoriTM サージカルロボットシステム」及び「MINS」は既に複数の病院で導入が進んでおり、神戸大学医学部附属病院国際がん医療・研究センター、武蔵野徳洲会病院などで前立腺がん全摘除術に利用されている。
同社の産業別での取り組みの成果は、AIソリューション市場シェアとして顕著に現れている。デロイト トーマツ ミック経済研究所(株)による2021年度版の市場調査では、同社のAIソリューションは8部門(2020年度提供形態別売上高動向のSaaS市場動向「SaaS売上高(2019~2021年度)」「SaaS利用料売上高(同)」「SaaS関連サービス売上高(同)」、業種別売上高動向の「農林水産業売上高(同)」「医療売上高(同)」、従業員規模別売上高動向の「300名未満売上高(同)」、用途別売上高動向の「保守・点検売上高(同)」「診断補助売上高(同)」)で市場シェア1位を獲得した。
3. 同社の強み
同社は、知財戦略に基づく豊富な技術力及び事業創造力を背景に、常に革新的なサービスを提供し新しい市場を開拓してきた。国内市場ではシェア1位のサービスを多数擁し、豊富なライセンス収益を基盤としたビジネスモデルを確立している。また、近年ではAI・IoT・ビッグデータのマーケットリーダーとして、各産業のトッププレイヤーと強固なビジネスディベロップメントを推進している。なお、同社の強みは1) 豊富な技術的発想力、2) 高度な技術力、3) サービス企画・開発・運用力、4) 強固なライセンス収益、5) 豊富な顧客基盤、6) 事業創造力、の6点に整理することができる。
4. 知財戦略
同社は、設立当初から世の中にないサービスを作り出すことを念頭に技術開発を行っており、知財を獲得し保有する戦略を推進してきた。一例を挙げると、2011年に日米で特許取得された通称「Tiger」は、デバイスの特定精度を飛躍的に向上させる検知技術として傑出したものである。また、2018年に特許取得した「ピンポイント農薬散布テクノロジー」は、令和元年度九州地方発明表彰において「文部科学大臣賞」を、2018年に特許取得した「契約書AI解析・管理システム」は、令和3年度九州地方発明表彰において「文部科学大臣賞」を受賞した。このほか、パテント・リザルトが発表する情報通信分野の個人特許資産規模ランキングでは、同社代表取締役の菅谷氏が1位を獲得している(1993年から2020年)。これらの知財は、新規事業分野での参入障壁を構築するだけでなく、大企業が安心して同社と提携関係を構築できるメリットもある。
5. 販売・チャネル戦略(Corporate DX)
同社は、販売・チャネルにおいても強固な基盤を保持している。累計18万社のサービス利用者を開拓してきたのは、主にパートナー企業である。大手通信キャリア、複合機メーカー、ISP、SIer、携帯販売会社など、いずれも多くの顧客企業を抱えており、全国的な販売網が確立されている。特に、KDDIグループやNTTグループとは合弁会社の設立なども行っており、つながりが強い。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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(5) 「〇〇×IT」(Industrial DX)
オプティム<3694>は、プラットフォーマーのためのプラットフォームである「OPTiM Cloud IoT OS」を活用し、各産業とIT(AI・IoTなど)を組み合わせる「○○×IT」によりすべての産業を第4次産業革命型産業へと再発明していく。この取り組みは、実証実験から始まり、特定の顧客企業向けの正式な事業やサービスとして育てていく。先行する業界は、「建設×IT」「農業×IT」「医療×IT」であり、既に事業として立ち上がっているものもある。
a) 建設×IT
建設×IT分野は最もAI・IoT活用が進んだ分野の1つである。コマツが主導する建設・土木における新プラットフォーム「LANDLOG」に対して「OPTiM Cloud IoT OS」を提供し、安全で生産性の高い未来の現場の実現を目指す。建設生産プロセス全体のあらゆる「モノ」のデータを収集(ショベルカー、ダンプカー、ドローンなどの管理・解析が可能)し、適切な権限管理のもとに様々なプロバイダーが、そのデータを建築現場を支える多くのユーザーに提供する。また、2020年には、建設DXとICT(情報通信技術)施工を推進する「(株)ランドログマーケティング」を設立し、スマートコンストラクション・レトロフィットキット※の販売や、建設向けDXソリューションのマーケティングを行っている。
※今使用している使い慣れた油圧ショベルに、最新のデジタル機器を“後付け”することで、ICTによる高機能化を実現する。
業界注目のアプリケーションとしては「OPTiM Geo Scan」がある。LiDARセンサー付きスマホやタブレットで土構造物等の測量対象物をスキャンするだけで、高精度な3次元データが取得できる。ドローンやレーザースキャナなどの利用が難しい小規模現場でも優位性を発揮し、従来の光波測量と比較すると、測量時間を最大6割削減することができる。また、測量には専門知識は不要で、一人で手軽に測量を行うことが可能であるため、人手不足や技術者不足解消にも役立つ。世界に先駆けて開発し、2021年の販売開始以来、様々なオプションや周辺機器を開発しており、利便性はさらに向上している。
b) 農業×IT
農業×ITの分野においては、世界初の「ピンポイント農薬散布テクノロジー」をはじめとしたAI・IoT・Roboticsの技術・プラットフォーム(農業DXサービス)を総合的に整備し、農業の省力化と高収益化を支援している。同社が開発したサービスには、ピンポイント農薬散布以外にも、ドローンを使った「播種テクノロジー」、圃場をAIやIoT機器より取得したデータを用いて解析するサービス「Agri Field Manager」、グライダー型ドローンを使った「広域圃場管理システム」などがあり、いずれも最先端のスマート農業を支える技術となっている。また、これまで培ってきた生育予測技術や病害虫発生予察技術とドローン防除の知見を組み合わせ、最小限の農薬で最大の防除効果の実現を目指す「ピンポイントタイム散布」サービスも開始。生産者のコスト低減や消費者の安心安全な食生活に貢献すると同時に、環境負荷も軽減する取り組みを積極的に進めている。
同社では、スマート農業を普及させ、“楽しく、かっこよく、稼げる農業”を実現するために、ビジネスモデル面でも革新的な取り組みを行ってきた。その1つが“スマートアグリフード”である。同社は生産者に対して最新のテクノロジーを無償提供し、付加価値の高い農作物を生産してもらう。それらを同社が全量買い取り、ブランドをつけて販売し、生産者とレベニューシェアをする。米については、「スマート米2023」(2022年度新米、7県11品種)として、自社オンラインストア「スマートアグリフード(愛称:スマ直)」や「Amazon」「楽天市場」などでインターネット販売されている。
c) 医療×IT
同社は、医療分野においてもIoT・AIを組み合わせ、医療が抱える様々な課題の解決に取り組んでいる。一例を挙げると、2016年に遠隔診療サービス「ポケットドクター」を発表し、経済産業省主催「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト2016」でグランプリを受賞した。2020年には、オンライン診療システムを手軽かつスピーディーに開発することができる「オンライン診療プラットフォーム」のOEM提供を開始している。さらに同年には、メディカロイドが開発した国産初の手術支援ロボットシステム「hinotoriTM サージカルロボットシステム」の運用支援、安全・効率的な手術室の活用支援及び手技の伝承・継承支援を目的としたネットワークサポートシステムのプラットフォーム「MINS(マインズ:Medicaroid Intelligent Network System)」の共同開発を行っている。「MINS」は、「hinotoriTM サージカルロボットシステム」に搭載された各種センサー情報や内視鏡映像、手術室全体の映像等の情報をリアルタイムで収集・解析・提供するオープンプラットフォームであり、同社の「OPTiM Cloud IoT OS」をベースに開発されている。「hinotoriTM サージカルロボットシステム」及び「MINS」は既に複数の病院で導入が進んでおり、神戸大学医学部附属病院国際がん医療・研究センター、武蔵野徳洲会病院などで前立腺がん全摘除術に利用されている。
同社の産業別での取り組みの成果は、AIソリューション市場シェアとして顕著に現れている。デロイト トーマツ ミック経済研究所(株)による2021年度版の市場調査では、同社のAIソリューションは8部門(2020年度提供形態別売上高動向のSaaS市場動向「SaaS売上高(2019~2021年度)」「SaaS利用料売上高(同)」「SaaS関連サービス売上高(同)」、業種別売上高動向の「農林水産業売上高(同)」「医療売上高(同)」、従業員規模別売上高動向の「300名未満売上高(同)」、用途別売上高動向の「保守・点検売上高(同)」「診断補助売上高(同)」)で市場シェア1位を獲得した。
3. 同社の強み
同社は、知財戦略に基づく豊富な技術力及び事業創造力を背景に、常に革新的なサービスを提供し新しい市場を開拓してきた。国内市場ではシェア1位のサービスを多数擁し、豊富なライセンス収益を基盤としたビジネスモデルを確立している。また、近年ではAI・IoT・ビッグデータのマーケットリーダーとして、各産業のトッププレイヤーと強固なビジネスディベロップメントを推進している。なお、同社の強みは1) 豊富な技術的発想力、2) 高度な技術力、3) サービス企画・開発・運用力、4) 強固なライセンス収益、5) 豊富な顧客基盤、6) 事業創造力、の6点に整理することができる。
4. 知財戦略
同社は、設立当初から世の中にないサービスを作り出すことを念頭に技術開発を行っており、知財を獲得し保有する戦略を推進してきた。一例を挙げると、2011年に日米で特許取得された通称「Tiger」は、デバイスの特定精度を飛躍的に向上させる検知技術として傑出したものである。また、2018年に特許取得した「ピンポイント農薬散布テクノロジー」は、令和元年度九州地方発明表彰において「文部科学大臣賞」を、2018年に特許取得した「契約書AI解析・管理システム」は、令和3年度九州地方発明表彰において「文部科学大臣賞」を受賞した。このほか、パテント・リザルトが発表する情報通信分野の個人特許資産規模ランキングでは、同社代表取締役の菅谷氏が1位を獲得している(1993年から2020年)。これらの知財は、新規事業分野での参入障壁を構築するだけでなく、大企業が安心して同社と提携関係を構築できるメリットもある。
5. 販売・チャネル戦略(Corporate DX)
同社は、販売・チャネルにおいても強固な基盤を保持している。累計18万社のサービス利用者を開拓してきたのは、主にパートナー企業である。大手通信キャリア、複合機メーカー、ISP、SIer、携帯販売会社など、いずれも多くの顧客企業を抱えており、全国的な販売網が確立されている。特に、KDDIグループやNTTグループとは合弁会社の設立なども行っており、つながりが強い。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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