エヴィクサー Research Memo(1):積極的な先行投資を実行しながらもトップラインは順調に伸長

配信元:フィスコ
投稿:2022/11/30 16:41
■要約

エヴィクサー<4257>は、音の信号処理に基づくソフトウェアの研究開発に取り組み、音響通信ソリューションを提供することで社会課題解決を目指すテック・ベンチャーである。スピーカー等からの音に情報を載せ、伝達を行う音響通信技術や、音声を活用した認証技術について研究開発や実証実験を実施し、その成果を社会に還元することで価値を生み出す。具体的には、同社独自の要素技術※であるAudio Fingerprint(以下、音声フィンガープリント)技術及びAudio Watermark(以下、音響透かし)技術を、映画を中心としたエンターテイメント、テレビ(以下、TV)視聴測定、IoT/M2M、地方DX(デジタルトランスフォーメーション)(防災等)といった領域で活用することで、様々なソリューションを提供している。加えて、協力企業や行政と連携しながら実証実験を積極的に行うことで、独自の要素技術を活用できる領域の開拓を進めている。

※他社との差別化を図る上で必須となる基幹技術のこと。


1. 2022年12月期中間期業績の概要
2022年12月期中間期(2022年1月~6月)の業績は、売上高が前年同期比39.8%増の101百万円、営業損失が38百万円(前年同期は27百万円の損失)、経常損失が37百万円(同19百万円の損失)、中間純損失が37百万円(同20百万円の損失)となった。新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)による外部環境の影響を一定程度受けるなか、オンライン配信ライブ等のWithコロナ(新型コロナウイルスとの併存)の環境下における新たな需要や既存サービスのDXへの取り組み機運の高まりが寄与し、映画を中心としたエンターテイメント関連が順調に推移した。一方、将来的な成長に向けた投資を積極的に行ったほか、特許関連の一時費用を計上したことが影響し、損失幅が拡大した。

2. 2022年12月期業績の見通し
2022年12月期業績見通しについて同社は、外部環境並びに事業フェーズを踏まえ、中長期的な事業成長を見据えた機動的な投資判断を重視する観点から、レンジ形式とした。売上高が前期比96.3~112.0%増の250~270百万円、営業損失が35~9百万円(前期は93百万円の損失)、経常損失が29~3百万円(同122百万円の損失)、当期純損失が29~3百万円(同107百万円の損失)を見込んでいる。2022年12月期中間期に、特許及び商標の国際展開に関する各国における許可査定や当局対応に伴う関連費用が想定以上に集中的に発生したことに加え、積極的な投資を行ったことを踏まえ、2022年7月に業績予想を下方修正した。引き続きコロナ禍による外部環境の影響を一定程度受けているものの、映画を中心としたエンターテイメント関連が復調傾向で順調に推移するとともに、収益型ペンライト・グッズ開発による用途追求やWebブラウザ対応等、Withコロナの環境下に対応した既存事業の梃入れによる取り組みが奏功しつつあり、売上高及び売上総利益は全体として堅調に推移している。また、WebAPIの業績貢献も期待できる。以上のことから、中期的に黒字転換する可能性も高いと弊社では見ている。

3. 成長戦略
同社は、音声フィンガープリント技術及び音響透かし技術に関連する研究開発・実証実験を自社または協力企業・行政と行い、自社技術(取得した特許を含む)をパートナー企業や顧客企業にライセンスすることによって、ライセンス収入やレベニューシェアによる収入を得ることを主なビジネスモデルとしている。今後の事業構想としては、「収益基盤の構築・安定化」「新事業の創造とスケーラビリティの加速」「海外への展開」を基本的な方針とし、年度ごとに「新技術・事業開花(2023年12月期)」「海外事業展開・地方DX(2024年12月期)」「自社プラットフォーム化(2025年12月期)」「標準化(2026年12月期)」というテーマを設定している。

「収益基盤の構築・安定化」については、SDGsトレンドを追い風に映画・エンターテイメントでオーガニック成長による裾野の拡大により安定化を図る。「新事業の創造とスケーラビリティの加速」については、Withコロナの幅広いニーズを背景に新技術の拡大を目指すとともに、WebAPIやクラウド経由での提供により成長加速を目指す。「海外への展開」については、映画・エンターテイメントで米国ハリウッド映画会社等との「HELLO! MOVIE(ハロームービー)」副音声及び字幕ガイドサービスの契約締結を目指す。

■Key Points
・音響分野の技術開発に取り組み、音響通信ソリューションを提供
・2022年12月期中間期は積極的な先行投資により損失計上となるも、映画を中心としたエンターテイメント関連は順調に推移
・今後の事業構想として、「収益基盤の構築・安定化」「新事業の創造とスケーラビリティの加速」「海外への展開」を基本的な方針とする

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)

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配信元: フィスコ