■業績動向
2. 2022年8月期のセグメント別業績動向
USEN-NEXT HOLDINGS<9418>の2022年8月期のセグメント別の業績は、コンテンツ配信事業が売上高71,432百万円(前期比19.1%増)、営業利益6,294百万円(同9.8%増)、店舗サービス事業が売上高58,172百万円(同3.7%増)、営業利益9,048百万円(同5.3%増)、通信事業が売上高50,764百万円(同5.4%増)、営業利益5,367百万円(同18.4%増)、業務用システム事業が売上高19,151百万円(同1.2%増)、営業利益3,277百万円(同13.1%増)、エネルギー事業が売上高41,626百万円(同49.1%増)、営業利益512百万円(同44.7%増)と、全セグメントにおいて増収増益となった。これは、コロナ禍においてもコンテンツ配信事業や店舗サービス事業を中心に積極投資を続けてきたこと、グループ経営によるシナジーと事業ポートフォリオ効果が顕在化したことが背景にあると思われる。
(1) コンテンツ配信事業
コロナ禍からウィズ/アフターコロナへとシフトするなかで、コンテンツ配信市場の環境は大きく3つの局面に分けられる。当初、コロナ禍の巣ごもり需要でのなかで乱立した動画配信サービサーの取捨選別が進んだが、「カバレッジ戦略」が評価され、同社は国内勢で抜きん出たポジションを得た。まもなく、NetflixやAmazonプライムといったグローバル企業によるサービスの攻勢が強まったが、彼らがPBを特徴としているのに対し、同社はアニメや旧作など豊富なラインアップと新作投入の早さに強みがあったため、補完関係になるグローバル企業と共存共栄の状態となった。ウィズ/アフターコロナでは、巣ごもり需要の反動やサブスクリプションサービスの見直しなどによりコンテンツ配信市場の成長が鈍化、グローバル企業も国内他社も縮小方向に戦略の見直しに入った。特にグローバル企業はPBや価格、注力エリアなど各種戦略で変更に迫られた。こうした環境激変のなか、豊富なラインアップなどに強みのある同社は逆に販促を強化、シェアを上昇することができた。
つまり同社は、「カバレッジ戦略」や「ONLY ON戦略」などを推進することでコンテンツサービサーとしての評価を上げる一方、業界の流れとは逆に様々な集客施策を講じて奏功したのである。具体的には、ライバルであるはずの映画館と相互送客による共存共栄を目指し、「U-NEXTポイント」で購入できる映画館を拡充、TOHOシネマズとはコラボキャンペーンをスタートさせた。テレビメーカー各社が新たに販売するテレビの付属リモコンに「U-NEXTボタン」を搭載することで、「U-NEXT」への集客を強める取り組みも進めた。安定した配信環境の品質向上を図り、米国Googleが提供を開始した新しいCDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)サービス「Media CDN」を採用した。こうした戦略を背景に巣ごもり需要の反動を跳ね返し、「U-NEXT」の課金ユーザー数は2023年8月期末に275万人と前期末比で36万人を超える高い伸びを示し、売上高の好調につながった。利益の伸びが売上高の伸びほど強くなかったのは、急激な円安による海外コンテンツの調達費用増と積極的に打った広告販促費が要因である。いずれも今後の売上高につながるものだが、調達原価に関しては、300万人に近づきつつある課金ユーザーという交渉力とコンテンツミックスの改善でカバーする意向である。
(2) 店舗サービス事業
ウィズ/アフターコロナにおいて経済活動が回復するなか、人流増加により一部交通機関や観光地で混雑が見られるなど、顧客である業務店や飲食店の事業環境は好転しつつある。また、入国規制緩和をはじめ「インバウンドの本格的な回復に向けた政策パッケージ」など政策的な後押しもあって、インバウンド需要の回復が始まっており、顧客のマインドも好転しつつある。しかし、原燃料費や生活必需品の値上げラッシュによって顧客も商品価格の見直しを余儀なくされており、消費意欲の減退や顧客離れが懸念される状況となっている。一方、人手不足が深刻化しており、運営自体に齟齬を生じる店も出てきたようだ。
こうした懸念や課題を解消するのが同社の役割で、主軸のPOSレジを中心に店舗DX商材・サービスなどクロスセル商材※による支援を強化した。その結果、2022年8月期末の店舗契約件数は95.7万件(前期末比4.9%増)と100万件に迫る水準となり、クロスセル商材も契約件数だけとると3年で2倍超の伸びとなった。なかでも人手不足対策として、急速にニーズが強まったデジタル技術を利用したデジタルサイネージや配膳ロボットをタイムリーに提供することができた。コロナ禍に新たな販路として確立された宅配に関しては、2022年9月に(株)バーチャルレストランをグループ化し、顧客の飲食店向けにウーバーイーツや出前館などの登録代行やコンサルティング、加工時間の短い商材の提供などを開始した。この結果、売上高はイニシャル収益、ランニング収益ともに順調に伸び、営業利益は一括償却資産の原価計上の影響を吸収して売上高を上回る伸びとなった。
※クロスセル商材:店舗向け音楽配信以外の機器・サービス。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
<SI>
2. 2022年8月期のセグメント別業績動向
USEN-NEXT HOLDINGS<9418>の2022年8月期のセグメント別の業績は、コンテンツ配信事業が売上高71,432百万円(前期比19.1%増)、営業利益6,294百万円(同9.8%増)、店舗サービス事業が売上高58,172百万円(同3.7%増)、営業利益9,048百万円(同5.3%増)、通信事業が売上高50,764百万円(同5.4%増)、営業利益5,367百万円(同18.4%増)、業務用システム事業が売上高19,151百万円(同1.2%増)、営業利益3,277百万円(同13.1%増)、エネルギー事業が売上高41,626百万円(同49.1%増)、営業利益512百万円(同44.7%増)と、全セグメントにおいて増収増益となった。これは、コロナ禍においてもコンテンツ配信事業や店舗サービス事業を中心に積極投資を続けてきたこと、グループ経営によるシナジーと事業ポートフォリオ効果が顕在化したことが背景にあると思われる。
(1) コンテンツ配信事業
コロナ禍からウィズ/アフターコロナへとシフトするなかで、コンテンツ配信市場の環境は大きく3つの局面に分けられる。当初、コロナ禍の巣ごもり需要でのなかで乱立した動画配信サービサーの取捨選別が進んだが、「カバレッジ戦略」が評価され、同社は国内勢で抜きん出たポジションを得た。まもなく、NetflixやAmazonプライムといったグローバル企業によるサービスの攻勢が強まったが、彼らがPBを特徴としているのに対し、同社はアニメや旧作など豊富なラインアップと新作投入の早さに強みがあったため、補完関係になるグローバル企業と共存共栄の状態となった。ウィズ/アフターコロナでは、巣ごもり需要の反動やサブスクリプションサービスの見直しなどによりコンテンツ配信市場の成長が鈍化、グローバル企業も国内他社も縮小方向に戦略の見直しに入った。特にグローバル企業はPBや価格、注力エリアなど各種戦略で変更に迫られた。こうした環境激変のなか、豊富なラインアップなどに強みのある同社は逆に販促を強化、シェアを上昇することができた。
つまり同社は、「カバレッジ戦略」や「ONLY ON戦略」などを推進することでコンテンツサービサーとしての評価を上げる一方、業界の流れとは逆に様々な集客施策を講じて奏功したのである。具体的には、ライバルであるはずの映画館と相互送客による共存共栄を目指し、「U-NEXTポイント」で購入できる映画館を拡充、TOHOシネマズとはコラボキャンペーンをスタートさせた。テレビメーカー各社が新たに販売するテレビの付属リモコンに「U-NEXTボタン」を搭載することで、「U-NEXT」への集客を強める取り組みも進めた。安定した配信環境の品質向上を図り、米国Googleが提供を開始した新しいCDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)サービス「Media CDN」を採用した。こうした戦略を背景に巣ごもり需要の反動を跳ね返し、「U-NEXT」の課金ユーザー数は2023年8月期末に275万人と前期末比で36万人を超える高い伸びを示し、売上高の好調につながった。利益の伸びが売上高の伸びほど強くなかったのは、急激な円安による海外コンテンツの調達費用増と積極的に打った広告販促費が要因である。いずれも今後の売上高につながるものだが、調達原価に関しては、300万人に近づきつつある課金ユーザーという交渉力とコンテンツミックスの改善でカバーする意向である。
(2) 店舗サービス事業
ウィズ/アフターコロナにおいて経済活動が回復するなか、人流増加により一部交通機関や観光地で混雑が見られるなど、顧客である業務店や飲食店の事業環境は好転しつつある。また、入国規制緩和をはじめ「インバウンドの本格的な回復に向けた政策パッケージ」など政策的な後押しもあって、インバウンド需要の回復が始まっており、顧客のマインドも好転しつつある。しかし、原燃料費や生活必需品の値上げラッシュによって顧客も商品価格の見直しを余儀なくされており、消費意欲の減退や顧客離れが懸念される状況となっている。一方、人手不足が深刻化しており、運営自体に齟齬を生じる店も出てきたようだ。
こうした懸念や課題を解消するのが同社の役割で、主軸のPOSレジを中心に店舗DX商材・サービスなどクロスセル商材※による支援を強化した。その結果、2022年8月期末の店舗契約件数は95.7万件(前期末比4.9%増)と100万件に迫る水準となり、クロスセル商材も契約件数だけとると3年で2倍超の伸びとなった。なかでも人手不足対策として、急速にニーズが強まったデジタル技術を利用したデジタルサイネージや配膳ロボットをタイムリーに提供することができた。コロナ禍に新たな販路として確立された宅配に関しては、2022年9月に(株)バーチャルレストランをグループ化し、顧客の飲食店向けにウーバーイーツや出前館などの登録代行やコンサルティング、加工時間の短い商材の提供などを開始した。この結果、売上高はイニシャル収益、ランニング収益ともに順調に伸び、営業利益は一括償却資産の原価計上の影響を吸収して売上高を上回る伸びとなった。
※クロスセル商材:店舗向け音楽配信以外の機器・サービス。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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