企業が抱える売掛債権の保証を手掛けるイー・ギャランティ<8771>。売掛金が回収できなくなるリスクを回避したい企業の需要をつかみ、コロナ禍で高成長を続けています。
15年間連続配当の優良企業であり、3年間で株価2倍以上に。この成長を支える根底にあるのは、江藤社長の『経済を回すためにみんなが信用を相手に与え合うこと』だという考えと、長年かけて『人的資本を大切にしている』企業姿勢だ。高成長を続ける、同社の今後の展開について江藤公則(えとうまさのり)社長にお話を伺います。
◆経済再開に向かうが、倒産確率高まる懸念あり
馬渕 経済が再開に向かい、やっとの思いの企業も多いと思います。今後は、倒産企業も少なくなるのでしょうか?
江藤 コロナ禍で多くの企業の売掛債権の保証を手掛けて、日本経済を下支えしてきました。しかし、倒産件数とういう意味ではこの先、増加する可能性があります。
馬渕 と、いいますと。
江藤 21年10月~22年3月の倒産件数は減少しています。コロナ以降の倒産件数は、コロナ前よりも低い水準で抑えられています。これは政府の補助金や支援金などもあり、平常時よりも倒産件数が抑えられていたからです。経済が正常化に向かうなかで、倒産件数もあるいみ正常化に向かうことを予想しています。
馬渕 倒産件数で考えれば、コロナの影響は「これから始まる」ということですね。
江藤 そうです。そこで、弊社は倒産件数の増加傾向を見込んで「優良なリスク引き受け」を積極的に行っています。例えば、運送業、飲食、サービス、畜産関係、ウクライナ関連には注視しています。リスクが高いのゾーンについては、保証から外す選択も行います。
馬渕 倒産件数が増えると、御社の業績にはプラスになりますね。
江藤 倒産件数が増えることは望ましくないことですが、弊社は倒産が起きても信用不安が拡大しないように、経済を一番根底で支えています。ビジネスモデルは「保証債務残高×保証料率」で決まる『ストック型のビジネスモデル』です。経済再開により、経済のパイが拡大すれば、売掛債権は増えますよね。一方で、倒産件数などが増えてリスクが高まると「保証料率」が上がります。なので、売上高を分解した要素「保証債務残高」も「保証料率」も基本的に増加傾向です。
馬渕 なるほど。ただ、保証料率に関しては短期ではそこまで大きく変動しないそうですから、投資家として、御社の業績動向を確認する時には「保証債務残高」に注目していたら良いですか?
江藤 そうです。「保証債務残高」の積み上がりが、売上高成長の鍵を握ることになるわけです。
◆更なる成長に向けて「営業人員の増員」と「新規拠点の開設」
馬渕 23年3月期第2四半期決算では、「保証債務残高」6,188億円(前年同期末比39.7%増)と拡大傾向で、成長の一途をたどっています。成長の背景には何があるのでしょうか。
江藤 営業人員の増員です。ウクライナ情勢による不透明さや、物価上昇による債権額の増加に対するニーズに対応するために営業体制を強化しました。具体的には上期に営業人員を70名から110名へと30%増加させました。当初は費用がかかっても、人材は資産です。下期は、「稼ぐ力」としての資源となります。
馬渕 「人的資本」の重要性が謳われていますが、御社は以前から「人的資本」を大切にされています。人材教育に力を入れておられますね。
江藤 以前から人材教育に力を入れてきましたし、直近の取り組みでは営業人材への「集中的な研修の実施」を行っています。人材教育により、売上を拡大させながら利益率も高める理由になっています。10年前の2012年の営業利益率は24.6%でしたが、2022年の同利益率は47.2%です。業務の効率化を進めながら事業を拡大してきたかをお分かりいただけるでしょう。
馬渕 営業人員を30%も増加させたいま、即戦力化するまでの「期間」が重要だと思います。
江藤 研修により若手の営業の成約率を上げることに成功しています。今回、営業人員を30%増加させましたが、これまでの研修実績とノウハウをもって、即戦力に育てます。そのことが、社員のモチベーションアップに繋がりますし、やりがいを感じて働いてもらえることが、私自身嬉しいです。具体的には、営業の際の、説明の仕方など丁寧に研修で教えることで、今では、1年半では戦力化できるようになりました。人材の質を全体的に上げることに成功しています。
馬渕 拠点の拡大も進めていますね。
江藤 東北・北陸などで支店を開設、拠点化を進めています。これまでは、東京からの出張で訪問していましたが、地方顧客のニーズをきめ細やかにサポートするために支店の開設を決めました。22年5月に東北支店、同年6月に北陸支店を開設しています。従来からある地方拠点も含めて、拠点の人員は6割増加しています。
馬渕 出張ベースでの訪問より、グッと営業体制が強化するのですね。
江藤 弊社は地方銀行との連携が強みです。拠点を設けることで、地方銀行への訪問も丁寧に行えます。今後はこの強みをより一層、強化していきます。保証ニーズは全国的に、高まっていますが、十分に対応しきれていなかった首都圏以外の地域に、人員を増加させ、拠点を配置し日本全国のリスクヘッジニーズを支えて行きます。
◆15年以上継続配当とサスティナビリティの取組み
馬渕 業績について、23年3月期は21期連続の増収増益の見通しですね。さらに、株主還元である配当は15年連続の配当ですね。
江藤 2007年に上場して以来、ずっと配当を継続しています。2022年3月期の年間配当金は26円で、今後も増配を続ける予定です。
馬渕 さらに、金融業界ならではの切り口で「サスティナビリティ」の取組みをされていますね。
江藤 弊社は、成長を続けていますが、経済を支えている立場でもあり持続可能な社会に貢献することが求められています。金融業界からできることとしては、環境問題(E)、社会問題(S)、地方創生(S)、ベンチャー企業(S)に関わる保証をすることが、弊社が果たすESGの役割となります。
馬渕 いま、御社が手掛ける、ESGに関わる保証はどれくらいの規模でしょう。
江藤 環境問題解決に関する保証は153億円、社会問題に関する保証は44億円、地方創生に関わる保証は2,156億円、ベンチャー企業等に関わる保証は597億円です。特に、産業と技術基盤に関わる地方創生とベンチャー企業のサポートが多いです。
馬渕 トータルで、約3,000億円ものESGに関わる保証により、企業が安心して存続し続ける基盤を作っているのですね。
江藤 年間30万件の企業の審査依頼、累計14万超えの信用保証をし、1日あたり260万項目を超える信用情報データを持ちます。蓄積されたデータを生かして、データビジネスも拡大させています。その方、企業間取引における、データ収集の強化を継続することで、請求書発行・決済サービス債権買取サービス少額債権保証サービスなど周辺領域に事業を拡大させています。人員を強化しましたので、売上・利益ともに着実に拡大成長させていきます。
馬渕 ありがとうございました。
<聞き手・構成/ 経済アナリスト 馬渕磨理子>
————
江藤公則
イー・ギャランティ代表取締役社長
1998年、伊藤忠商事に入社。入社2年目に社内ベンチャー制度を活用し、金融債権の保証ビジネスを立ち上げる。2000年にイー・ギャランティを設立。2007年にジャスダック市場に上場し、ジャスダック上場企業の社長としては最年少記録(当時)を打ち立てた。2011年には東証2部、翌2012年には東証1部への鞍替え上場を果たしたほか、信用リスクに関するファンドの組成、ベンチャー出資を保証するサービスの販売、新型コロナウイルスの感染拡大にあわせた商品開発をするなど順調に業容を拡大させている。
馬渕磨理子
一般社団法人 日本金融経済研究所 代表理事/経済アナリスト
京都大学公共政策大学院 修士課程を修了。トレーダーとして法人の資産運用を担う。その後、金融メディアのシニアアナリスト、コメンテーター、連載を通してメディア活動を行う。フジテレビ「LiveNEWSα」、読売テレビ「そこまで言って委員会NP」「ウェークアップ」など出演。プレジデント、ダイヤモンド、日経クロストレンド、Forbes JAPAN、SPA!、週刊ポストなど多数掲載。投資家と企業とのコミュニケーション(IR)の課題に直面し、シンクタンクを設立活動。
・フジテレビ「LiveNEWSα」レギュラー出演中
・東京FM「馬渕・渡辺の#ビジトピ」冠番組
・書籍『5万円からでも始められる! 黒字転換2倍株で勝つ投資術』(ダイヤモンド社)、『京大院卒経済アナリストが開発! 収入10倍アップ高速勉強法』(PHP研究所)
<SI>
15年間連続配当の優良企業であり、3年間で株価2倍以上に。この成長を支える根底にあるのは、江藤社長の『経済を回すためにみんなが信用を相手に与え合うこと』だという考えと、長年かけて『人的資本を大切にしている』企業姿勢だ。高成長を続ける、同社の今後の展開について江藤公則(えとうまさのり)社長にお話を伺います。
◆経済再開に向かうが、倒産確率高まる懸念あり
馬渕 経済が再開に向かい、やっとの思いの企業も多いと思います。今後は、倒産企業も少なくなるのでしょうか?
江藤 コロナ禍で多くの企業の売掛債権の保証を手掛けて、日本経済を下支えしてきました。しかし、倒産件数とういう意味ではこの先、増加する可能性があります。
馬渕 と、いいますと。
江藤 21年10月~22年3月の倒産件数は減少しています。コロナ以降の倒産件数は、コロナ前よりも低い水準で抑えられています。これは政府の補助金や支援金などもあり、平常時よりも倒産件数が抑えられていたからです。経済が正常化に向かうなかで、倒産件数もあるいみ正常化に向かうことを予想しています。
馬渕 倒産件数で考えれば、コロナの影響は「これから始まる」ということですね。
江藤 そうです。そこで、弊社は倒産件数の増加傾向を見込んで「優良なリスク引き受け」を積極的に行っています。例えば、運送業、飲食、サービス、畜産関係、ウクライナ関連には注視しています。リスクが高いのゾーンについては、保証から外す選択も行います。
馬渕 倒産件数が増えると、御社の業績にはプラスになりますね。
江藤 倒産件数が増えることは望ましくないことですが、弊社は倒産が起きても信用不安が拡大しないように、経済を一番根底で支えています。ビジネスモデルは「保証債務残高×保証料率」で決まる『ストック型のビジネスモデル』です。経済再開により、経済のパイが拡大すれば、売掛債権は増えますよね。一方で、倒産件数などが増えてリスクが高まると「保証料率」が上がります。なので、売上高を分解した要素「保証債務残高」も「保証料率」も基本的に増加傾向です。
馬渕 なるほど。ただ、保証料率に関しては短期ではそこまで大きく変動しないそうですから、投資家として、御社の業績動向を確認する時には「保証債務残高」に注目していたら良いですか?
江藤 そうです。「保証債務残高」の積み上がりが、売上高成長の鍵を握ることになるわけです。
◆更なる成長に向けて「営業人員の増員」と「新規拠点の開設」
馬渕 23年3月期第2四半期決算では、「保証債務残高」6,188億円(前年同期末比39.7%増)と拡大傾向で、成長の一途をたどっています。成長の背景には何があるのでしょうか。
江藤 営業人員の増員です。ウクライナ情勢による不透明さや、物価上昇による債権額の増加に対するニーズに対応するために営業体制を強化しました。具体的には上期に営業人員を70名から110名へと30%増加させました。当初は費用がかかっても、人材は資産です。下期は、「稼ぐ力」としての資源となります。
馬渕 「人的資本」の重要性が謳われていますが、御社は以前から「人的資本」を大切にされています。人材教育に力を入れておられますね。
江藤 以前から人材教育に力を入れてきましたし、直近の取り組みでは営業人材への「集中的な研修の実施」を行っています。人材教育により、売上を拡大させながら利益率も高める理由になっています。10年前の2012年の営業利益率は24.6%でしたが、2022年の同利益率は47.2%です。業務の効率化を進めながら事業を拡大してきたかをお分かりいただけるでしょう。
馬渕 営業人員を30%も増加させたいま、即戦力化するまでの「期間」が重要だと思います。
江藤 研修により若手の営業の成約率を上げることに成功しています。今回、営業人員を30%増加させましたが、これまでの研修実績とノウハウをもって、即戦力に育てます。そのことが、社員のモチベーションアップに繋がりますし、やりがいを感じて働いてもらえることが、私自身嬉しいです。具体的には、営業の際の、説明の仕方など丁寧に研修で教えることで、今では、1年半では戦力化できるようになりました。人材の質を全体的に上げることに成功しています。
馬渕 拠点の拡大も進めていますね。
江藤 東北・北陸などで支店を開設、拠点化を進めています。これまでは、東京からの出張で訪問していましたが、地方顧客のニーズをきめ細やかにサポートするために支店の開設を決めました。22年5月に東北支店、同年6月に北陸支店を開設しています。従来からある地方拠点も含めて、拠点の人員は6割増加しています。
馬渕 出張ベースでの訪問より、グッと営業体制が強化するのですね。
江藤 弊社は地方銀行との連携が強みです。拠点を設けることで、地方銀行への訪問も丁寧に行えます。今後はこの強みをより一層、強化していきます。保証ニーズは全国的に、高まっていますが、十分に対応しきれていなかった首都圏以外の地域に、人員を増加させ、拠点を配置し日本全国のリスクヘッジニーズを支えて行きます。
◆15年以上継続配当とサスティナビリティの取組み
馬渕 業績について、23年3月期は21期連続の増収増益の見通しですね。さらに、株主還元である配当は15年連続の配当ですね。
江藤 2007年に上場して以来、ずっと配当を継続しています。2022年3月期の年間配当金は26円で、今後も増配を続ける予定です。
馬渕 さらに、金融業界ならではの切り口で「サスティナビリティ」の取組みをされていますね。
江藤 弊社は、成長を続けていますが、経済を支えている立場でもあり持続可能な社会に貢献することが求められています。金融業界からできることとしては、環境問題(E)、社会問題(S)、地方創生(S)、ベンチャー企業(S)に関わる保証をすることが、弊社が果たすESGの役割となります。
馬渕 いま、御社が手掛ける、ESGに関わる保証はどれくらいの規模でしょう。
江藤 環境問題解決に関する保証は153億円、社会問題に関する保証は44億円、地方創生に関わる保証は2,156億円、ベンチャー企業等に関わる保証は597億円です。特に、産業と技術基盤に関わる地方創生とベンチャー企業のサポートが多いです。
馬渕 トータルで、約3,000億円ものESGに関わる保証により、企業が安心して存続し続ける基盤を作っているのですね。
江藤 年間30万件の企業の審査依頼、累計14万超えの信用保証をし、1日あたり260万項目を超える信用情報データを持ちます。蓄積されたデータを生かして、データビジネスも拡大させています。その方、企業間取引における、データ収集の強化を継続することで、請求書発行・決済サービス債権買取サービス少額債権保証サービスなど周辺領域に事業を拡大させています。人員を強化しましたので、売上・利益ともに着実に拡大成長させていきます。
馬渕 ありがとうございました。
<聞き手・構成/ 経済アナリスト 馬渕磨理子>
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江藤公則
イー・ギャランティ代表取締役社長
1998年、伊藤忠商事に入社。入社2年目に社内ベンチャー制度を活用し、金融債権の保証ビジネスを立ち上げる。2000年にイー・ギャランティを設立。2007年にジャスダック市場に上場し、ジャスダック上場企業の社長としては最年少記録(当時)を打ち立てた。2011年には東証2部、翌2012年には東証1部への鞍替え上場を果たしたほか、信用リスクに関するファンドの組成、ベンチャー出資を保証するサービスの販売、新型コロナウイルスの感染拡大にあわせた商品開発をするなど順調に業容を拡大させている。
馬渕磨理子
一般社団法人 日本金融経済研究所 代表理事/経済アナリスト
京都大学公共政策大学院 修士課程を修了。トレーダーとして法人の資産運用を担う。その後、金融メディアのシニアアナリスト、コメンテーター、連載を通してメディア活動を行う。フジテレビ「LiveNEWSα」、読売テレビ「そこまで言って委員会NP」「ウェークアップ」など出演。プレジデント、ダイヤモンド、日経クロストレンド、Forbes JAPAN、SPA!、週刊ポストなど多数掲載。投資家と企業とのコミュニケーション(IR)の課題に直面し、シンクタンクを設立活動。
・フジテレビ「LiveNEWSα」レギュラー出演中
・東京FM「馬渕・渡辺の#ビジトピ」冠番組
・書籍『5万円からでも始められる! 黒字転換2倍株で勝つ投資術』(ダイヤモンド社)、『京大院卒経済アナリストが開発! 収入10倍アップ高速勉強法』(PHP研究所)
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