アクセル Research Memo(5):LSI開発販売関連は2ケタ増収増益、新規事業関連はAI領域のビジネスが拡大

配信元:フィスコ
投稿:2022/07/22 15:15
■業績動向

2. 事業セグメント別の動向
(1) LSI開発販売関連
LSI開発販売関連セグメントの売上高は前期比18.2%増の10,144百万円、セグメント利益は同21.3%増の2,007百万円となった。売上高については7期ぶりに100億円の大台に回復したことになる。パチンコ・パチスロ機の出荷台数回復を受けて、G-LSIの販売数量が前期の約40万個から約44万個に増加したほか、メモリモジュールも約71万個から約77万個に増加したこと、メモリモジュールに関しては搭載メモリ容量の増加により平均単価が上昇したことも増収要因となった。アクセル<6730>が開示している売上構成比で試算すると、G-LSIは前期比8%増の32億円、メモリモジュールを含む周辺LSIは同24%増の69億円になったと見られる。

パチンコ・パチスロ機の出荷台数が前期比45%増となったのに対して、G-LSI販売個数の伸び率が10%増と小幅にとどまったのはリユース率が前期の25%から35%に上昇したことが要因だ。パチンコ・パチスロ機メーカーも経営環境が厳しいなか、原価低減を図るためリユース率の向上に取り組んだものと考えられる。同様の理由で品種構成比についても「AG6」へのシフトがあまり進まなかったようだ。「AG6」を使って新機種を開発するためには開発環境も新たに整える必要があるためだ(=投資が必要)。

(2) 新規事業関連
新規事業関連セグメントの売上高は前期比25.3%増の522百万円と拡大した一方で、セグメント損失は545百万円(前期は495百万円の損失)となった。まだ先行投資段階にあり、人員体制の強化なども含めて費用が増加していることが要因だ。なお、営業外収益として計上している助成金収入を含めたベースで見ると、損失額は406百万円(前期は375百万円の損失)となる。

売上高の増収要因は主に、機械学習/AI領域における開発案件の増加や「ailia SDK」のロイヤリティ収入の増加等による。「ailia」がクロスプラットフォームに対応している(=使い勝手が良い)ことに加え、推論処理スピードで世界最高水準の性能であること、学習から推論、実装までをワンストップソリューションで提供できることなどが徐々に認知され、開発の引き合いが増加している。一方、ミドルウェア製品の「AXIP」シリーズやセキュリティ製品、ブロックチェーン領域についてはリソースを機械学習/AI領域に傾注していることもあり、目立った伸びは無かったとみられる。そのほか、組込み機器用G-LSIの販売数量については前期の3.5万個から5.1万個と3期ぶりの増加に転じた。


無借金経営、手元キャッシュも豊富で財務内容は良好
3. 財務状況と経営指標
2022年3月期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比1,142百万円増加の12,274百万円となった。流動資産では半導体需給ひっ迫の影響で在庫が312百万円減少した一方で、現金及び預金が1,184百万円、売掛金及び契約資産が114百万円増加した。固定資産では投資有価証券が51百万円、繰延税金資産が45百万円それぞれ増加した。

負債合計は前期末比583百万円増加の1,645百万円となった。買掛金が337百万円、未払法人税等が87百万円、未払消費税等が72百万円それぞれ増加した。また、純資産合計は同558百万円増加の10,629百万円となった。配当金支出が334百万円あった一方で、親会社株主に帰属する当期純利益865百万円の計上により利益剰余金が532百万円増加した。

経営指標を見ると、安全性を示す自己資本比率は負債が増加したことにより、前期末の90.1%から86.0%に低下したものの、現金及び預金の水準が90億円強と事業規模からすれば潤沢であり、無借金経営を続けていることから、財務の健全性は極めて高いと判断される。一方で、収益性に関しては売上高営業利益率で7.9%、ROEで8.4%、ROAで8.6%とそれぞれ3期連続で上昇するなど回復傾向が続いた。現状は新規事業関連の先行投資を行っているため、まだ1ケタ台の水準にとどまっているが、新規事業関連が収益化ステージに入ってくれば、再び10%以上の水準に乗せてくるものと予想される。同社ではROEを10%台の水準まで戻すことを当面の目標として掲げている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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配信元: フィスコ

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