■業績動向
2. 事業セグメント別の動向
(1) オフィス事業
オフィス事業の売上高は前期比10.4%減の933百万円、営業利益は同68.8%減の65百万円となった。コロナ禍が長引くなかで民間企業における投資判断が慎重となり、明豊ファシリティワークス<1717>が得意とする大規模オフィスの竣工時同時入居プロジェクトが減少したことに加え、労務費の増加が減収減益要因となった。
ただ、DX導入に取り組む先進企業としての認知度が高まり、「働き方改革」をテーマにしたオフィスの再構築に関する引き合いが大企業や自治体等から増えているほか、大規模新築ビルへの竣工時同時入居プロジェクトについても、都心における高層ビルディングの新築プロジェクトが複数進むなかで今後増加するものと見込まれていることから、2023年3月期は増収増益に転じるものと予想される。
(2) CM事業
CM事業の売上高は前期比5.8%増の2,460百万円、営業利益は同18.8%増の561百万円と増収増益が続いた。CMの導入メリットが大企業や公共分野を中心に認識されはじめ、引き合いが増加している。公共分野では既述のとおり、国立大学からの学舎整備事業や研究施設等の新築・改修支援業務などの案件を受注し、増収要因となった。また、民間分野ではJR東日本の大規模プロジェクトに加えて、グローバル企業の大型研究施設や生産工場、商業施設及び私立学校施設の再構築案件などが増加した。
なお、第三者機関からの評価として、(一社)日本コンストラクション・マネジメント協会が主催する「CM選奨2022」において、同社がCM業務を行った「中野区 みなみの小学校他2校校舎新築工事に伴うCM業務」「(株)資生堂 那須工場新築工事 CM業務」「タカノフーズ(株) 水戸第三工場新築計画 CM業務」の3件で「CM選奨」を受賞し、6年連続の受賞となった。
「中野区 みなみの小学校他2校校舎新築工事に伴うCM業務」については、3校同時の整備事業を、品質の平準化と個別事業対応のバランスを取りながら、円滑かつ効率的に運営管理できた点が評価された。また、「(株)資生堂 那須工場新築工事 CM業務」については、資生堂にとって36年ぶりの国内新工場建設プロジェクトとなり、設計着手から工場稼働まで最短納期の実現を目標に掲げたプロジェクトであった。同社は意思決定を加速させるため、施主側との「協働プラットフォーム」の仕組みを提案すると同時に、日々変動するコストをタイムリーに可視化する予算進捗管理を行い、総工費で当初目標予算比22%減を達成し、プロジェクト期間25ヶ月という短納期を実現したことが評価された。「タカノフーズ(株) 水戸第三工場新築計画 CM業務」については、20年後を見据えたスマートファクトリーの建設をテーマとした基本構想段階からのプロジェクトとなり、品質だけでなくコスト及びスケジュール管理においてすべての関係者に納得感のあるプロジェクトを推進できたことが評価された。
(3) CREM事業
CREM事業の売上高は前期比11.2%減の731百万円、営業利益は同11.9%減の193百万円となった。コロナ禍の影響もあり、全国に拠点を多く持つ一部顧客企業からの受注が落ち込んだことが減収減益要因となった。ただ、公共インフラの維持保全や公共施設の老朽化対策関連業務については継続的に受注した。また、第2四半期から基幹設備のLCC・脱炭素化を考慮した機能最適化更新支援サービスを開始し、第3四半期からは脱炭素化支援コンストラクション・マネジメントサービスの専用窓口を設けるなど、新たな需要にも対応した。これらのサービスについては民間企業、自治体問わず多くの引き合いがきたようで、2023年3月期以降に売上貢献してくるものと期待される。
(4) DX支援事業
DX支援事業の売上高は前期比177.1%増の134百万円、営業利益は同663.3%増の43百万円となった。大手企業や官公庁に対して「MPS」「AMS」の導入が進んだ。これらは顧客要望に合わせて社内で自社開発するが、開発作業については外注している。2022年3月期は導入件数が拡大したため外注費も増加したが、増収効果により営業利益率は前期の11.9%から32.6%に上昇した。なお、これらのサービスはもともと社内用に開発したシステムで、10年以上の運用実績がある。自社開発のため、収益性の高い事業となっている。
「MPS」についてはCREM事業のプロジェクトで利用するため、新規顧客が増えれば「MPS」の導入も連動して増えることが見込まれる。従来はCREM事業として売上計上していたが、今後はそれぞれの事業ごとに売上計上していくことも考えているようだ。一方、「AMS」についてはオフィス事業での営業活動と合わせて行うことが多く、同事業の多くの新規顧客は、「AMS」を仮導入している。これは、「働き方改革」をテーマにしたオフィスの再構築の際には、生産性の可視化や効果検証を行える同システムの利用価値が高いためだ。このほか、既存事業とは関係なく個別で提案するケースもあるようだ。
自己資本比率は70%台で推移、無借金経営を継続しており財務の健全性は高い
3. 財務状況と経営指標
2022年3月期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比214百万円増加の5,718百万円となった。主な増減要因を見ると、流動資産では現金及び預金が496百万円増加した一方で、売上債権が399百万円減少した。固定資産については、有形固定資産が15百万円、無形固定資産が4百万円それぞれ減少した一方で、「東京グリーンボンド」「ソーシャルボンド」の購入により投資有価証券が120百万円増加した。
負債合計は前期末比102百万円減少の1,435百万円となった。流動負債において未払金が20百万円、未払費用が15百万円増加した一方で、未払法人税等が90百万円、賞与引当金が58百万円減少した。また、固定負債では退職給付引当金が48百万円増加した。純資産合計は同317百万円増加の4,283百万円となった。当期純利益606百万円を計上した一方で、配当金308百万円を支出したことによる。
経営指標を見ると、経営の安全性を示す自己資本比率は74.7%と高水準を維持しており、有利子負債もなく財務内容は健全な状態にあると判断される。また、収益性に関してはROAで15.4%、ROEで14.8%といずれも前期比で1ポイント前後低下したものの10%台と安定した水準を維持している。また、ROIC(投下資本利益率)についても14.6%とWACC(加重平均資本コスト、7.18%)を上回っているほか、同社の属するサービス業平均の10.4%※を上回るなど高い収益力を維持していることが窺える。
※法人企業統計調査、その他のサービス業2020年度1,238社平均値。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2. 事業セグメント別の動向
(1) オフィス事業
オフィス事業の売上高は前期比10.4%減の933百万円、営業利益は同68.8%減の65百万円となった。コロナ禍が長引くなかで民間企業における投資判断が慎重となり、明豊ファシリティワークス<1717>が得意とする大規模オフィスの竣工時同時入居プロジェクトが減少したことに加え、労務費の増加が減収減益要因となった。
ただ、DX導入に取り組む先進企業としての認知度が高まり、「働き方改革」をテーマにしたオフィスの再構築に関する引き合いが大企業や自治体等から増えているほか、大規模新築ビルへの竣工時同時入居プロジェクトについても、都心における高層ビルディングの新築プロジェクトが複数進むなかで今後増加するものと見込まれていることから、2023年3月期は増収増益に転じるものと予想される。
(2) CM事業
CM事業の売上高は前期比5.8%増の2,460百万円、営業利益は同18.8%増の561百万円と増収増益が続いた。CMの導入メリットが大企業や公共分野を中心に認識されはじめ、引き合いが増加している。公共分野では既述のとおり、国立大学からの学舎整備事業や研究施設等の新築・改修支援業務などの案件を受注し、増収要因となった。また、民間分野ではJR東日本の大規模プロジェクトに加えて、グローバル企業の大型研究施設や生産工場、商業施設及び私立学校施設の再構築案件などが増加した。
なお、第三者機関からの評価として、(一社)日本コンストラクション・マネジメント協会が主催する「CM選奨2022」において、同社がCM業務を行った「中野区 みなみの小学校他2校校舎新築工事に伴うCM業務」「(株)資生堂 那須工場新築工事 CM業務」「タカノフーズ(株) 水戸第三工場新築計画 CM業務」の3件で「CM選奨」を受賞し、6年連続の受賞となった。
「中野区 みなみの小学校他2校校舎新築工事に伴うCM業務」については、3校同時の整備事業を、品質の平準化と個別事業対応のバランスを取りながら、円滑かつ効率的に運営管理できた点が評価された。また、「(株)資生堂 那須工場新築工事 CM業務」については、資生堂にとって36年ぶりの国内新工場建設プロジェクトとなり、設計着手から工場稼働まで最短納期の実現を目標に掲げたプロジェクトであった。同社は意思決定を加速させるため、施主側との「協働プラットフォーム」の仕組みを提案すると同時に、日々変動するコストをタイムリーに可視化する予算進捗管理を行い、総工費で当初目標予算比22%減を達成し、プロジェクト期間25ヶ月という短納期を実現したことが評価された。「タカノフーズ(株) 水戸第三工場新築計画 CM業務」については、20年後を見据えたスマートファクトリーの建設をテーマとした基本構想段階からのプロジェクトとなり、品質だけでなくコスト及びスケジュール管理においてすべての関係者に納得感のあるプロジェクトを推進できたことが評価された。
(3) CREM事業
CREM事業の売上高は前期比11.2%減の731百万円、営業利益は同11.9%減の193百万円となった。コロナ禍の影響もあり、全国に拠点を多く持つ一部顧客企業からの受注が落ち込んだことが減収減益要因となった。ただ、公共インフラの維持保全や公共施設の老朽化対策関連業務については継続的に受注した。また、第2四半期から基幹設備のLCC・脱炭素化を考慮した機能最適化更新支援サービスを開始し、第3四半期からは脱炭素化支援コンストラクション・マネジメントサービスの専用窓口を設けるなど、新たな需要にも対応した。これらのサービスについては民間企業、自治体問わず多くの引き合いがきたようで、2023年3月期以降に売上貢献してくるものと期待される。
(4) DX支援事業
DX支援事業の売上高は前期比177.1%増の134百万円、営業利益は同663.3%増の43百万円となった。大手企業や官公庁に対して「MPS」「AMS」の導入が進んだ。これらは顧客要望に合わせて社内で自社開発するが、開発作業については外注している。2022年3月期は導入件数が拡大したため外注費も増加したが、増収効果により営業利益率は前期の11.9%から32.6%に上昇した。なお、これらのサービスはもともと社内用に開発したシステムで、10年以上の運用実績がある。自社開発のため、収益性の高い事業となっている。
「MPS」についてはCREM事業のプロジェクトで利用するため、新規顧客が増えれば「MPS」の導入も連動して増えることが見込まれる。従来はCREM事業として売上計上していたが、今後はそれぞれの事業ごとに売上計上していくことも考えているようだ。一方、「AMS」についてはオフィス事業での営業活動と合わせて行うことが多く、同事業の多くの新規顧客は、「AMS」を仮導入している。これは、「働き方改革」をテーマにしたオフィスの再構築の際には、生産性の可視化や効果検証を行える同システムの利用価値が高いためだ。このほか、既存事業とは関係なく個別で提案するケースもあるようだ。
自己資本比率は70%台で推移、無借金経営を継続しており財務の健全性は高い
3. 財務状況と経営指標
2022年3月期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比214百万円増加の5,718百万円となった。主な増減要因を見ると、流動資産では現金及び預金が496百万円増加した一方で、売上債権が399百万円減少した。固定資産については、有形固定資産が15百万円、無形固定資産が4百万円それぞれ減少した一方で、「東京グリーンボンド」「ソーシャルボンド」の購入により投資有価証券が120百万円増加した。
負債合計は前期末比102百万円減少の1,435百万円となった。流動負債において未払金が20百万円、未払費用が15百万円増加した一方で、未払法人税等が90百万円、賞与引当金が58百万円減少した。また、固定負債では退職給付引当金が48百万円増加した。純資産合計は同317百万円増加の4,283百万円となった。当期純利益606百万円を計上した一方で、配当金308百万円を支出したことによる。
経営指標を見ると、経営の安全性を示す自己資本比率は74.7%と高水準を維持しており、有利子負債もなく財務内容は健全な状態にあると判断される。また、収益性に関してはROAで15.4%、ROEで14.8%といずれも前期比で1ポイント前後低下したものの10%台と安定した水準を維持している。また、ROIC(投下資本利益率)についても14.6%とWACC(加重平均資本コスト、7.18%)を上回っているほか、同社の属するサービス業平均の10.4%※を上回るなど高い収益力を維持していることが窺える。
※法人企業統計調査、その他のサービス業2020年度1,238社平均値。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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