ODK Research Memo(3):教育業務と証券・ほふり業務が主力。安定性の高いシステム運用の構成比が95.9%

配信元:フィスコ
投稿:2022/07/04 15:03
■事業概要

1. サービス概要
ODKソリューションズ<3839>は情報処理アウトソーシングサービスの単一セグメントであるため、事業別売上区分をシステム運用、システム開発及び保守、機械販売としている。2022年3月期の売上高構成比(単体ベース)はシステム運用が95.9%、システム開発・保守が2.2%、機械販売が1.9%となっており、システム運用が大半を占めている。

業務(サービス)別売上区分は、教育業務(教育関連サービス)、証券・ほふり業務(金融関連サービス)、一般業務(医療関連サービス、カスタマーサクセス・カスタマーサポート関連サービス)としている。大阪証券金融(現 日本証券金融)向け運用業務が2019年3月期に終了し、2020年3月期以降は教育業務(教育関連サービス)及び証券・ほふり業務(金融関連サービス)を主力に、一般業務(医療関連サービス、カスタマーサクセス・カスタマーサポート関連サービス)を第3の成長ドライバーと位置付けて事業拡大を図っている。なお、2022年3月期の業務別売上高構成比(単体ベース)は、教育業務が65.7%、証券・ほふり業務が20.3%、一般業務が14.0%となっている。

2. 教育業務(教育関連サービス)
教育業務は、入試に関わるすべての業務(入試広報、Web・郵送出願、受験票発送、入試実施、成績処理、合否判定・発表、入学手続、入試統計資料作成などの支援)を一括受託している。学校法人(4年制大学など)から業務を受託して受験生がサービスを利用する。1960年代から学校法人の入試センターとして入試関連システムを提供してノウハウを蓄積し、入試広報支援から入試後のリメディアル教育支援まで、一貫して担当している強みがある。

主力サービスは、2016年に開始した日本初の大学横断型受験ポータルサイト『UCARO(R)』である。大学間の垣根を越えて入試関連のWebシステムサービスを集約することで、大学と学生をつなぐ大学受験の共通プラットフォームとして事業展開している。大学の公式ホームページなどで出願時に登録するよう紹介されているサービスで、受験生は利用にあたって登録料や利用料を払う必要はない。このサービスを利用することで受験の各プロセスを大学間で共通化することができ、受験生の負荷軽減・利便性向上、大学の業務効率化・コスト削減を実現している。

なお、2022年3月期末時点のWeb出願システム受託校数(4年生大学向けネット出願システム、リクルートホールディングス<6098>との協業サービスであるWeb出願システム、『UCARO(R)』出願システムの合計)は68校、『UCARO(R)』の受託校数(4年制大学向け)は88校となった。入試関連業務は学内で処理することが一般的だったが、DXを背景にアウトソーシングの動きが活発化しているようだ。

また、大学入試アウトソーシング業務における志願者データ処理件数はおおむね約110万人で推移しており、14期連続で大学入学共通テスト(2020年3月期以前は大学入試センター試験)の志願者数を上回る水準となっている。処理件数シェアは民間企業トップを誇る。

2019年に開始した保護者向けサイト『UCARO(R) family』は、『UCARO(R)』と連携して保護者が子どものお気に入り大学、受験スケジュール、出願・受験情報、合否結果、手続状況など、受験に関する様々な情報を把握できる。2022年3月末時点の登録者数は、サービス開始後の2020年3月期末時点と比較して、約5.5倍と順調に増加している。

さらに新たなサービスとして、大学生のための「ガクチカ(学生時代に力をいれたこと)」充実SNSプラットフォーム『cataro(カタロ)』を開始した(2022年3月にβ版の提供を開始)。『UCARO(R)』とも連携しており、学生間の気軽なコミュニケーションの機会を創出し、充実した大学生生活を実現し、なりたい自分に近づけるキッカケを提供する。今後は、『UCARO(R)』をデータのプラットフォームと位置付けて、各事業領域をつなぐハブとして育成し、『cataro』を皮切りに新たなサービスの創出を推進する方針だ。

3. 証券・ほふり業務(金融関連サービス)
証券・ほふり業務は、証券会社・金融機関向けに投資家情報管理、注文約定管理、取引結果管理、代金精算に至る業務などに関連して、独自開発の証券総合システム『SENS21』、不公正売買監視システム『Watch21』、ほふり接続システム(証券会社等と証券保管振替機構(ほふり)との接続業務等に関するシステム)、マイナンバー関連サービスなどを提供している。

証券総合システム『SENS21』は、創業以来培ってきた証券業務に関わる知識と技術ノウハウを駆使して独自開発されたシステムである。注文から決済に至る証券取引のデータ処理を行い、証券会社のバックオフィス業務をトータルにサポートする。不公正売買監視システム『Watch21』は、商品先物取引に対応し、抽出基準に基づく該当事案を自動抽出・継続監視して再発防止につなげる。ほふり接続システムは、約定データを受けて残高更新管理・ほふり向け指図・ほふり向け報告を代行する。マイナンバー関連サービスは、SBI-BSと協業して、マイナンバーネット収集システムや管理システムなどによってトータルにサポートする。

大阪証券金融(現 日本証券金融)とだいこう証券ビジネスのシステム開発・運用を約半世紀にわたり手掛けて蓄積した証券バックオフィス業務・証券代行事務のノウハウを活用し、高セキュリティ環境下で大規模かつ長期的なシステム運用や大量データを処理していることや、ユーザーニーズに対応できる機動性と事務代行(BPO)サービス支援ができることなどが強みだ。なお、2022年3月期末時点の受託数は、証券総合システム『SENS21』が4社、不公正売買監視システム『Watch21』が3社、ほふり接続システムが22社、周辺システムが12社、マイナンバー関連サービスが27社となっている。

4. 一般業務(医療関連サービス、カスタマーサクセス関連サービス)
一般業務は、これまで培ってきたデータ処理ノウハウを生かした新規分野のサービスである。医療関連サービスは、(株)ファルコバイオシステムズ(2016年8月に業務・資本提携したファルコホールディングスの事業会社)の臨床検査関連システム運用業務、医療システム用タブレット製品の販売やアプリ開発などを展開している。カスタマーサクセス関連サービスは、SaaS提供事業者向けに、カスタマーサクセスオートメーションツール『pottos(R)』を提供している。既存ユーザーのヘルス状況(サービス利用状況)をとおして解約予兆の把握が可能になるほか、カスタマーサクセス担当者の業務進捗を管理する機能や、ヘルス状況に応じて既存ユーザーにメールやポップアップ通知を配信して自動アプローチできるなどの機能がある。SaaS市場は拡大基調であることから、早期のポジション獲得に向けて拡販に注力する方針で、2021年1月には『Salesforce Sales Cloud』とのデータ連携をノーコードでの設定が可能となる新機能を開始した。2022年4月にはカスタマーサクセス関連の新サービスとして『collabble(コラブル)』β版の提供を開始した。SNSのような気軽なコミュニケーションによって情報価値を高め、プロダクト価値の共感・共創や顧客ロイヤリティの向上を実現するコラボレーションツールである。なお、『pottos(R)』事業は分社化し、2022年7月に子会社ポトスに承継した。

5. リスク要因・収益特性
情報システム産業における一般的なリスク要因としては、企業のIT投資抑制、受託開発案件の不採算化、技術革新への対応遅れなどがあるが、同社の場合はシステム運用(情報処理システムのアウトソーシング)を主力としているため、受託開発の不採算化リスクが小さい。一方で、情報セキュリティ、個人情報保護、品質管理などへの対応がリスク要因となるが、国際認証規格制度「ISO/IEC27001」などを取得して、セキュリティマネジメントに取り組んでいる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)


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