【来週の注目材料】トルコ中銀は連続利下げへ~トルコ中銀金融政策委員会

著者:MINKABU PRESS
投稿:2021/10/16 17:10
 先月のトルコ中銀金融政策理事会では、市場予想に反して政策金利である1週間物レポ金利がそれまでの19%から18%に1%ポイント引き下げられました。利下げは2020年5月以来1年4カ月ぶりとなります。

 トルコの消費者物価指数は9月3日に発表された8月分の時点で19.25%となっており、政策金利を超える水準となっていました。利下げにより実質金利がより大きなマイナスとなった形です。今月4日に発表された9月の消費者物価指数は19.58%とさらに上昇しており、一般的な中銀の対応としては利下げ局面ではありません。

 ただ、今回トルコ中銀は利下げを実施してくると見られています。同国のエルドアン大統領は低金利志向が強く、金利を上げるから物価が上昇するという自身の独特の主張をたびたび表明しています。自身の意向に合わない中銀関係者をたびたび解任しており、中銀総裁はこの2年ほどで3回も変わりました。特に元財務相でもあったアーバル前総裁は昨年11月に就任して以降、インフレに厳しく対応するため、就任する前の10.25%から19%まで、5か月弱で8.75%の利上げを実施。リラ安に歯止めがかかるなど市場からの信任の厚い総裁となりましたが、大統領の低金利志向と相反する対応に就任わずか5か月足らずでの解任となっています。

 アーバル氏の後を受けたカブジュオール現総裁ですが、政権寄りのコラムニストという経歴で、以前にエルドアン大統領の低金利が物価を引き下げるという主張に賛同する姿勢を示していました。

 そのため就任後すぐの利下げ実施が懸念されましたが、就任発表に対して市場が大きなリラ売りで反応したこともあり、姿勢を後退させ当面金利を据え置くと発表。政策金利をインフレ率より高く保つという方針を示していました。

 それだけに前回の利下げ実施は市場のサプライズとなりました。総裁は物価を見るにあたって、これまでの消費者物価指数から食品などを除いたコアを重視することが適切という発言をしており、微妙な軌道修正で利下げを正当化した形です。

 そしてここにきてエルドアン大統領は中銀への介入姿勢を強化してきました。14日付の官報で2名の中銀副総裁を含む3名の中銀金融政策委員会委員の解任が発表され、新たに二名の委員(副総裁1名と委員一名)が任命されました。

 この発表の前には大統領がカブジュオール総裁と会談したとの発表があり、中銀への圧力を強めていると見込まれています。

 そうした中、21日に結果が発表される今回の金融政策委員会でも利下げが確実視されるところとなっています。エルドアン大統領としては一気の利下げを望みたいところだと思われますが、コアインフレを重視するという姿勢を示した後だけに、同指標の水準を割り込むのは難しいと見られます。

 4日に発表されたトルコの消費者物価指数は前年比19.58%と、8月の19.25%から上昇し、政策金利である18.0%とのギャップが広がる状況。ただ、同国のCPIは食料品が約1/4を占めており、同項目が前年比+28.79%となった影響が大きいです。9月のコアインフレは前年比16.98%と8月の16.76%から上昇も、政策金利よりは低い水準。今回の委員会で17%もしくは17.5%への利下げが見込まれます。

 ただ、対ドルでのリラの史上最安値を更新する状況が続く中で、利下げを実施した場合のインパクトがどこまで大きくなるか。もう一段のリラ安が進むと、輸入物価の上昇にもつながります。

 総裁はコアインフレを重視すると発言していますが、食料品の多くを輸入に頼るトルコにとって、リラ安による輸入インフレでの食料品価格の上昇は、生活にまともに反映する厳しいものとなります。トルコ経済に対する警戒感が強まると、リラ安が加速する可能性も意識されます。

 結果発表は日本時間21日20時です。

MINKABU PRESS 山岡和雅

このニュースはみんかぶ(FX/為替)から転載しています。

配信元: みんかぶ(FX/為替)