S&P500 月例レポート ― 9月不振のアノマリーの罠、一段の調整も(1) ―

配信元:株探
投稿:2021/10/14 13:30

S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

●THE S&P 500 MARKET:2021年9月
個人的見解:9月は辛うじて乗り切ったが、10月も新たな試練が待ち構えている

 月初の株式市場は好調で、9月2日には(今年に入って54回目となる)最高値を更新しました(4536.95、2020年11月以降、終値での最高値を更新した日が毎月あったことになります)。その後は、好調を維持したまま月末を迎え、四半期を締めくくるはずでした(与野党の対立が続く政治の紛糾を尻目に)。

 しかしながら、実際には全く異なる展開となりました。9月は年間でパフォーマンスが最も低い月だという伝統を株式市場は見事なまでに踏襲し(これまでの9月の平均騰落率はマイナス0.99%で、53.8%の確率で下落しています)、(控えめに言っても)月末まで厳しい展開が続きました。公平を期するために言えば(短期的には弱気相場でしたが、長期的には強気相場)、損失は制御可能なもので、売りも秩序立っていました(1日の下げ幅が最大となったのは9月28日で2.04%の下落)。結局、9月の下落率は4.76%となりました(月間の騰落率がマイナスになったのは2021年1月のマイナス1.11%以来。また、下落率は2020年3月のマイナス12.51%以来の大きさでした)。

 第3四半期はわずかに0.23%の上昇にとどまり(2020年第3四半期は8.47%上昇)、年初来では14.68%上昇(配当込みのトータルリターンはプラス15.92%)、コロナ危機前の2020年2月19日の終値での高値(3386.15)からは27.21%上昇(同プラス30.62%)、直近最安値となる2020年3月23日(2237.40)からは92.52%上昇(同プラス97.28%)となりました。

 再び、公平を期すために言えば(何度も同じ表現を使いたくはないのですが)、9月はのんびりとした夏季休暇を終えて市場が仕事モードに戻る月であり(これは疑わしいですが)、ワシントンの善人達も同様です。しかし、今年のワシントンでは年次予算以外にも対応しなければならない問題があったようでした。政府予算が期限切れとなる数時間前につなぎ予算案が議会で可決され、大統領による署名がなされました(債務上限問題やいくつかの景気刺激策に関しては与野党間での協議が続いています)。また、お決まりの政治ゲームは一段と激化しています(弊社のインデックス委員会に政治的緊張の市場への影響を計測するバックテストの実施を提案します)。

 米連邦制度準備理事会(FRB)は年内のテーバリング開始(終了時期は2022年半ば)に向けた(暫定)スケジュールを示すと同時に、(政策金利見通しをまとめたドットチャートと共に)2022年終盤か2023年初頭に利上げする可能性があることを示唆しました。当初の市場の反応は調整には至らず、わずかに下落した程度で、示されたスケジュールを受け入れていました。しかしその後、利上げに注目し、米国10年国債利回りは1.50%を突破しました(1.56%まで上昇し、1.49%で9月の取引を終えました。2020年9月末は0.68%、2019年9月末は1.68%、1981年9月末は1桁違って15.85%でした)。

 こうした利回り急騰の背景には、年初からの値上がりを受けて利益確定売りのタイミングを待ち構えていた市場参加者(8月末時点での市場の年初来リターンは20.41%)、変異株の影響(大半の市場関係者はその影響を彼らの言葉を借りれば「一過性」であると見ています)、そしてFRBの人員構成(2人の地区連銀総裁が辞任し、民主党のウォーレン上院議員がパウエル議長の再任に反対しています。なお、後者は俯瞰的に見れば、民主党内での意見対立と言えます)といった問題もありました。

 2021年の第2四半期の企業業績は、利益(前期比9.7%増、新型コロナの影響を受けた2020年第2四半期からは94.2%増)、売上高(前期比5.5%増、前年同期比21.7%増)、営業利益率(13.55%、1993年第1四半期以降の平均は8.07%)と記録更新が続きました。自社株買いと配当金支払いも極めて好調でした(第3四半期の配当支払いは過去最高となりました。来週には関連のリリースを公表する予定です。第2四半期の自社株買いは過去最高額を11%下回りました)。

 現時点では、相場が健全な調整を迎えることはかなり前から予想されていたことで、実際に調整局面入りしたとしても驚きはほとんどないでしょう(とはいえ、多少の動揺はあるでしょうが)。金利の上昇、(願わくは)短期的な新型コロナウイルスの感染拡大、供給不足、不安定な米国の経済的優位性、これら全てが株価下落を正当化する可能性があります。とはいえ結局のところ、調整局面は訪れるものです(買いが止まればそうなるでしょう)。要するに9月の株式市場に関しては、4.76%の下落が調整だとすれば(そんなはずはなく、更に大幅な調整が予想されます)、もう一段の調整が入るということです(新型コロナウイルスが収束した状況で)。

 1928年以降で1日の株価の下落率が7.5%以上を記録した営業日は25日ありましたが、そのうちの8日は10月となっています。また、1日の上昇率が7.5%以上となった営業日は29日ありましたが、そのうちの6日が10月でした。

  ⇒1日の株価の変動率が7.5%以上となった全日数の25.9%を10月が占めており、さらに株価が10%以上変動した10日のうちの7日(10%以上の上昇が4営業日、10%以上の下落が3営業日)が10月となっています。

日付       終値  変化率
1987年10月19日  224.84 -20.47%
1929年10月28日  22.74 -12.34%
1929年10月29日  20.43 -10.16%
1937年10月18日  10.76  -9.27%
2008年10月15日  907.84  -9.04%
1987年10月26日  227.67  -8.28%
1932年10月05日   7.39  -8.20%
2008年10月09日  909.92  -7.62%

日付       終値  変化率
1929年10月30日  22.99  12.53%
1931年10月06日   9.91  12.36%
2008年10月13日 1003.35  11.58%
2008年10月28日  940.51  10.79%
1987年10月21日  258.38  9.10%
1931年10月08日  10.62  8.59%

 過去の実績を見ると、9月は45.2%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は3.28%、下落した月の平均下落率は4.60%、全体の平均騰落率は0.99%の下落となっています。2021年9月のS&P株価指数は4.76%の下落でした(9月としては、マイナス7.18%を記録した2011年以来の下落率)。

 10月は57.0%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は4.13%、下落した月の平均下落率は4.67%、全体の平均騰落率は0.39%の上昇となっています。

 今後の米連邦公開市場委員会(FOMC)のスケジュールは、11月2日-3日、12月14日-15日、2022年1月25日-26日、3月15日-16日、5月3日-4日、6月14日-15日、7月26日-27日、9月20日-21日、11月1日-2日、12月13日-14日となっています。

 S&P 500指数は9月に4.76%下落して4307.54で月を終えました(配当込みのトータルリターンはマイナス4.65%)。8月は4522.68で終え、2.90%の上昇(同プラス3.04%)となり、7月は4395.26で終え、2.27%の上昇でした(同プラス2.38%)。過去3ヵ月では0.23%上昇(同プラス0.58%)、年初来では14.68%上昇(同プラス15.92%)、過去1年間では28.09%上昇(同プラス30.00%)、コロナ危機前の2月19日の終値での高値からは27.21%上昇(同プラス30.62%)して月を終えました。

ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は4.29%下落の3万3843.93ドルで月を終えました(配当込みのトータルリターンはマイナス4.20%)。なお、8月は3万5360.73ドルで終え、1.22%の上昇(同プラス1.50%)、過去3ヵ月では1.91%下落(同マイナス1.46%)、年初来では10.58%上昇(同プラス12.12%)、過去1年間では21.82%上昇(同プラス24.15%)しました。

※「9月不振のアノマリーの罠、一段の調整も (2)」へ続く

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