S&P500 月例レポート ― 9月不振のアノマリーの罠、一段の調整も (2) ―

配信元:株探
投稿:2021/10/14 13:30

●主なポイント

 ○S&P 500指数 は9月に最高値を1回更新しました(8月は12回)。年初来の最高値更新は54回となり、2020年11月以降、終値での最高値を更新した日が毎月あったことになります(2020年10月はありませんでしたが、その前の9月と8月は最高値を更新)。

  ⇒S&P 500指数は9月に4.76%下落しました(配当込みのトータルリターンはマイナス4.65%)。月間の騰落率がマイナスとなったのは2021年1月のマイナス1.11%(同マイナス1.01%)以来です。8月は2.90%上昇(同プラス3.04%)、7月は2.27%上昇(同プラス2.38%)、過去3ヵ月では0.23%上昇(同プラス0.58%)、年初来では14.68%上昇(同プラス15.92%)、過去1年間では28.09%上昇(同プラス30.00%)しました。

  ⇒同指数は9月に1回最高値を更新しました。8月の最高値更新は12回、7月は7回でした(6月は8回、5月は1回、4月は10回、3月、2月、1月は5回)。

  ⇒コロナ危機前の2020年2月19日の終値での高値からは27.21%上昇し(同プラス30.62%)、その期間に終値ベースで73回、最高値を更新しました。

  ⇒バイデン大統領が勝利した2020年11月3日の米大統領選挙以降では、同指数は27.85%上昇(同プラス29.62%)しました(バイデン大統領就任後に52回、最高値を更新しています)。

  ⇒2020年3月23日の底値からの強気相場では92.52%上昇しています(同プラス97.28%)。

  ⇒同指数は(2021年9月2日に記録した)9月の終値での高値となる4536.95から5.06%下落して月を終えました。

 ○2021年第2四半期の決算発表を見ると、431銘柄(86.2%)で利益が予想を上回り、53銘柄で予想を下回り、16銘柄で予想通りとなりました。また、売上高では436銘柄(87.4%)が予想を上回りました。

  ⇒第3四半期については、決算時期がずれている16銘柄が決算発表を終え、12銘柄で利益が予想を上回り、2銘柄で予想を下回り、2銘柄で予想通りとなりました。売上高では15銘柄中11銘柄が予想を上回りました。

 ○政治関連では、議会は何とか債務と予算で妥協点を見いだして政府機関の閉鎖を回避しようと奮闘し、1兆ドル規模のインフラ法案と3.5兆ドルの教育・環境・医療関連予算案を巡る交渉は継続となりました。

  ⇒議会は2021年12月3日までのつなぎ予算案を可決し、バイデン大統領は予算が期限切れとなる数時間前に署名しました。

 ○市場関係者のS&P 500指数の1年後の目標値はこの1ヵ月間で上昇し(同指数は9月に下落しましたが)、現在値から16.5%上昇(前月は10.4%上昇)の5018(かなり強気な予想)と、初めて5000を突破しました(8月末の目標値は4993、7月末の目標値は4905)。ダウ平均の目標値は現在値から16.0%上昇(前月は10.8%上昇)の3万9270ドル(かなり強気な予想)となっています(同3万9166ドル、同3万8796ドル)。

●バイデン大統領と政府高官

 ○3.5兆ドルの医療・教育・気候変動関連予算案が具体化し始め、上場企業の自社株買いに2%を課税する案が浮上するなど、議論が続いています。

 ○議会は2021年12月3日までのつなぎ予算案を可決し、バイデン大統領は予算が期限切れとなる数時間前に署名しました。

 ○1兆ドルのインフラ法案を巡っては、議論が続く中で採決は10月に先送りされ、急進派は3.5兆ドルの気候変動・教育・社会関連法案とセットで成立させたい意向です。

●新型コロナウイルス関連

 ○バイデン大統領は、全ての連邦政府職員および業務上の関係者にワクチン接種を義務付けることを発表したほか、労働省の労働安全衛生局(OSHA)に対し、従業員100人以上の全ての企業にワクチン接種または週1回のウイルス検査を義務化するよう要請する意向を明らかにしました。

 ○ロサンゼルスは、12歳以上で学校に通う全ての子供にワクチン接種を義務化しました。

 ○学校再開の動きにはばらつきがあり、幼稚園から高校までの国内13万2000校のうち2000校以上が、新型コロナウイルスによる休校を続けています。

 ○米食品医薬品局(FDA)はファイザー製の新型コロナワクチンについて、65歳以上と高リスク層を対象にブースター接種(追加接種)を認め、その後、米疾病対策センター(CDC)も承認しました。ブースター接種は近いうちに始まる見通しです。

 ○ファイザーは、同社製ワクチンで5~11歳の子供にも有効性と安全性が確認されたため、緊急使用許可を申請する意向であると明らかにしました。

 ○ジョンソン・エンド・ジョンソンは、同社が開発した1回接種型の新型コロナウイルスワクチンについて、初回接種から2ヵ月後にブースター接種を行うと抗体レベルが大幅に増加するとの治験結果が得られたことを公表しました。

 ○新型コロナウイルスの治療薬と治療法、そして夢の万能薬:

  ⇒世界全体で62億5000万人が少なくとも1回のワクチン接種を受けました(8月末時点では52億6000万人)。

   →米国では、現時点で3億9200万人が1回以上のワクチン接種を受けました(同3億7000万人)。

    ・人口の64.5%(同61.7%)が少なくとも1回は接種したことになり、人口の55.9%(同52.4%)が2回の接種を終えました。

   →米国の1日当たり接種回数の7日平均は70万7000回に低下しましたが(同90万回)、デルタ変異株の蔓延により接種回数は増加しています。

●各国中央銀行の動き(および関連ニュース)

 ○欧州中央銀行(ECB)は、インフレ率を理由に、新型コロナウイルス危機に対応した債券買い入れプログラム(現在は月額950億ドル)をやや縮小すると発表し、概ね好調な見通しを示しました。

 ○レポートによれば、ECBはユーロ圏のインフレ率が2025年までに2%に達すると見ており、この予測に基づくと2023年末に利上げを行う可能性もあるとのことです。

 ○中国人民銀行は、中国恒大集団を巡る問題が波及するのを避けるため、銀行システムに4600億元(710億ドル)の短期資金を注入しました。

 ○ブラジル中央銀行は、政策金利を1%ポイント引き上げて6.25%としました(年初時点では2%)。高進するインフレに対応するため、10月にさらに1%ポイントの利上げを行う可能性も示唆しています。

 ○ノルウェー中央銀行は、政策金利をゼロから引き上げて0.25%としました。さらに、12月に追加の利上げを行い、2022年には1.25%まで引き上げる可能性があることを示唆しました。

 ○FOMCが開かれ、強気な成長見通しが発表されました。2021年11月にテーパリング(量的緩和の縮小)が開始され、約8ヵ月かけて段階的に縮小し、また2022年の後半に利上げを行う可能性が示唆されました。

 ※しかし、FOMCメンバーの予想を表すドット・プロットでは、利上げのタイミングは2022年と2023年で9人対9人と完全に割れています。市場は、FOMCのメッセージと暫定的なスケジュールを好感し、株価は上昇しました。

※「9月不振のアノマリーの罠、一段の調整も (3)」へ続く

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