明日の株式相場に向けて=コロナマネー相場の本音
きょう(11日)の東京株式市場は、日経平均株価が909円安の2万8608円と文字通り波乱安の展開となった。昨日のファーストリテイリング<9983.T>の下げが不自然で、その巻き戻しを考えれば日経平均3万円大台復帰も早晩実現する可能性があるとした矢先だったが、残念ながら真逆の展開となりきょうは全体相場のベクトルは一気に下向きに変わってしまった。
前週末に発表された4月の米雇用統計で、非農業部門の雇用者数は前月比26万6000人の増加と事前コンセンサスだった100万人増を大幅に下回った。しかし、株式市場はこの結果をFRBの金融緩和政策の長期化を担保するものとしてポジティブ材料として捉え、株価は上昇した。これまで主要メディアはワクチンの普及加速を背景に、アフターコロナを意識した景気回復期待が市場心理を強気に傾けているという論調で足並みを揃えていた。日本株が相対的に出遅れているのも、ワクチンの普及が遅々として進まないからで、全体の感染者数こそ少ないものの新型コロナ増勢に伴い景気回復が遅れることが嫌気されているという解釈であった。ところが、それは建前であって本当のところは、コロナまん延を背景としたジャブジャブの資金、いわゆる財政出動を伴う景気対策と空前の超金融緩和環境の継続を切望しているということになる。
しかし、その構図に揺らぎが生じている。米長期金利は、この見間違いかと一瞬思わせるような米雇用統計の結果を目の当たりにしたにも関わらず、低下するどころか直近再び1.6%台に乗せるなど上昇基調にある。「雇用者数の増加(が少なかったこと)は特殊事情であって、それは給付金など財政の大盤振る舞いによってもたらされたとの見方が強まった」(ネット証券アナリスト)という。つまり、雇用される側が給付金を当てにして働く意欲を欠いた結果という見方である。そしてこれ以上の給付金が見込めない以上、一過性のイレギュラーな数字に過ぎないという認識が広がっていることが米長期金利に反映された。
前日の米国株市場でナスダック総合指数が350ポイントの下げをみせたが、明らかにハイテク・グロース株をターゲットとした売り圧力が顕在化している。アフターコロナをにらんだバリューシフトといえば聞こえはいいが、「単なるポジション組み換えというような生易しいものではないという印象も受ける」(中堅証券ストラテジスト)という声がある。バイデン政権はやはり民主党だけあって富裕層にフレンドリーでないこともマーケットで警戒されている要因だ。
指標銘柄として注目されるのは米EV大手テスラの株価動向であろう。前日は6.4%安と急落したが、先月下旬から既にダッチロール的な下げ局面にあった。4月27日から数えて前日までの10営業日で株価を上昇させた日は2営業日しかなく、既に26週移動平均線を再び下回り、一部機関投資家の売り急ぎの動きも観測される。3月5日の安値539ドルまでまだ余裕があるが、ここを下回るようだと、コロナマネー相場の終焉を意味する可能性がある。給付金トレーダーとも呼ばれたロビンフッダーに人気のETFで米投資会社アークが運用するETFが急落していることが話題となったが、これは言うに及ばずテスラ株が上位に組み入れられている。ハイテクセクターにおける一連の下げは、その背景にある事象が一本の線でつながっているようにも見える。市場関係者の間では「あす12日発表予定の4月の米CPIが鬼門となる。仮に、ここで数値が市場予想を上回るようだとインフレ懸念から米長期金利の上昇が加速し、ハイテク株売りが勢いを増すケースも考えられる」(前出のネット証券アナリスト)という。
しかし、現状を全体相場の崩壊の序曲とみるのは早計だ。深い調整局面ではあっても長期トレンドの転換を示唆するには至っていない。嵐の中でも個別株に目を向けると、引き続き日本製鉄<5401.T>や日本冶金工業<5480.T>の強さが光った。材料株ではここ急速に戻り足に転じている宮越ホールディングス<6620.T>、小型株では海運セクター周辺の大運<9363.T>や、株価指標面で割安感が際立つ前澤工業<6489.T>などに注目してみたい。
あすのスケジュールでは、4月上中旬の貿易統計、3月の景気動向指数など。海外では、3月のユーロ圏鉱工業生産、4月の米消費者物価指数(CPI)、4月の米財政収支など。なお、マレーシア、インドネシア市場は休場となる。(銀)
出所:MINKABU PRESS
前週末に発表された4月の米雇用統計で、非農業部門の雇用者数は前月比26万6000人の増加と事前コンセンサスだった100万人増を大幅に下回った。しかし、株式市場はこの結果をFRBの金融緩和政策の長期化を担保するものとしてポジティブ材料として捉え、株価は上昇した。これまで主要メディアはワクチンの普及加速を背景に、アフターコロナを意識した景気回復期待が市場心理を強気に傾けているという論調で足並みを揃えていた。日本株が相対的に出遅れているのも、ワクチンの普及が遅々として進まないからで、全体の感染者数こそ少ないものの新型コロナ増勢に伴い景気回復が遅れることが嫌気されているという解釈であった。ところが、それは建前であって本当のところは、コロナまん延を背景としたジャブジャブの資金、いわゆる財政出動を伴う景気対策と空前の超金融緩和環境の継続を切望しているということになる。
しかし、その構図に揺らぎが生じている。米長期金利は、この見間違いかと一瞬思わせるような米雇用統計の結果を目の当たりにしたにも関わらず、低下するどころか直近再び1.6%台に乗せるなど上昇基調にある。「雇用者数の増加(が少なかったこと)は特殊事情であって、それは給付金など財政の大盤振る舞いによってもたらされたとの見方が強まった」(ネット証券アナリスト)という。つまり、雇用される側が給付金を当てにして働く意欲を欠いた結果という見方である。そしてこれ以上の給付金が見込めない以上、一過性のイレギュラーな数字に過ぎないという認識が広がっていることが米長期金利に反映された。
前日の米国株市場でナスダック総合指数が350ポイントの下げをみせたが、明らかにハイテク・グロース株をターゲットとした売り圧力が顕在化している。アフターコロナをにらんだバリューシフトといえば聞こえはいいが、「単なるポジション組み換えというような生易しいものではないという印象も受ける」(中堅証券ストラテジスト)という声がある。バイデン政権はやはり民主党だけあって富裕層にフレンドリーでないこともマーケットで警戒されている要因だ。
指標銘柄として注目されるのは米EV大手テスラの株価動向であろう。前日は6.4%安と急落したが、先月下旬から既にダッチロール的な下げ局面にあった。4月27日から数えて前日までの10営業日で株価を上昇させた日は2営業日しかなく、既に26週移動平均線を再び下回り、一部機関投資家の売り急ぎの動きも観測される。3月5日の安値539ドルまでまだ余裕があるが、ここを下回るようだと、コロナマネー相場の終焉を意味する可能性がある。給付金トレーダーとも呼ばれたロビンフッダーに人気のETFで米投資会社アークが運用するETFが急落していることが話題となったが、これは言うに及ばずテスラ株が上位に組み入れられている。ハイテクセクターにおける一連の下げは、その背景にある事象が一本の線でつながっているようにも見える。市場関係者の間では「あす12日発表予定の4月の米CPIが鬼門となる。仮に、ここで数値が市場予想を上回るようだとインフレ懸念から米長期金利の上昇が加速し、ハイテク株売りが勢いを増すケースも考えられる」(前出のネット証券アナリスト)という。
しかし、現状を全体相場の崩壊の序曲とみるのは早計だ。深い調整局面ではあっても長期トレンドの転換を示唆するには至っていない。嵐の中でも個別株に目を向けると、引き続き日本製鉄<5401.T>や日本冶金工業<5480.T>の強さが光った。材料株ではここ急速に戻り足に転じている宮越ホールディングス<6620.T>、小型株では海運セクター周辺の大運<9363.T>や、株価指標面で割安感が際立つ前澤工業<6489.T>などに注目してみたい。
あすのスケジュールでは、4月上中旬の貿易統計、3月の景気動向指数など。海外では、3月のユーロ圏鉱工業生産、4月の米消費者物価指数(CPI)、4月の米財政収支など。なお、マレーシア、インドネシア市場は休場となる。(銀)
出所:MINKABU PRESS
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