明日の株式相場に向けて=躍進する半導体、裏街道に量子コンピューター
きょう(19日)の東京株式市場は大きく買い優勢に傾き、日経平均株価が391円高の2万8633円と急反発に転じた。前日の米国株市場がキング牧師誕生日の祝日に伴い休場だったことから手掛かり材料に乏しく、自律反発はあっても目立ったリバウンドは見込めないだろうというのが事前の見方だったが、さにあらず日経平均の上げ幅は一時470円を超えた。
全体相場の牽引役は半導体、そして電子部品株だ。AI売買の影響もあって、インデックス買いなどを交え主力銘柄への資金流入が顕著となっている。半導体製造装置御三家ともいえる東京エレクトロン<8035.T>、レーザーテック<6920.T>、アドバンテスト<6857.T>のほか、電子部品セクターでTDK<6762.T>、ローム<6963.T>、太陽誘電<6976.T>、村田製作所<6981.T>といったアップルサプライヤーの上値追いが鮮烈だった。
バイデン新政権では景気敏感株が復権しハイテク株が沈むという見方があったが、ここにきての半導体や電子部品株上昇は、市場がこれらのセクターをハイテクとは見なしていないことを物語る。半導体も電子部品も「物資」という位置づけで人気化し、むしろそれを製造する会社は金の卵を産む鶏のごとし、株式争奪戦のムードが漂う。国内ではコロナ禍の初期段階でマスクやアルコール除菌剤が払底したが、その時の買い占めを想起させるような投資マネーの流入だ。米中摩擦を背景とした半導体の調達難が需給逼迫効果を生み出し、足もとでは台湾勢に漁夫の利をもたらしている。そして、この流れはそのまま東京市場にも及んでいる。
ただ、個人投資家は難しい投資スタンスを強いられる状況にある。市場関係者は「ここから東エレクやレーザーテック、村田製の株価が更に上がると思っても、高値つかみの恐怖感から投資家心理として手は出しにくい」(国内証券マーケットアナリスト)と指摘する。また、早期に大型株を拾い資金を中長期で寝かせていた向きは、予想以上のキャピタルゲインを獲得した。しかし、それも既に売ってしまったケースは多い。「ここから売値より上で買い戻すのは心情的にも困難を極める」(同)という。結果として、“生身の”投資家を乗せないまま、指数連動型の無人エレベーター相場が繰り広げられることになる。
きょうは日経平均が大引け伸び悩んだとはいえ400円近い上昇で取引を終えたが、日経平均の上げ幅と相場の実態は大きく遊離している。TOPIXベースでは10ポイント高とたいしたことがなく、日経平均に引き直して160円高程度にとどまる。更に東証1部の値上がり銘柄数は1000を切り、値下がり数の方が270銘柄以上多いという異例の展開。日経平均が400円高くても今の相場はこういうことが起こり得る。AIによる先物仕掛けによって、いかに日経平均寄与度の高い大型株が偏って買われたかを示している。
主力株への投資は、日経平均が早晩3万円を回復するという観点に立てばここからでも買いで対処して報われる公算は大きい。ただ、バイデン新政権離陸後は一時的に相場がエアポケットに入る局面も想定され、先物絡みの揺れに備えておく必要はある。
他方、大型株の“天辺買い”よりは相対的に踏み込みやすい中小型株では、半導体関連の出遅れでミナトホールディングス<6862.T>、炭素繊維複合材ケーブルで材料性を内包する東京製綱<5981.T>、5G関連では世界最小クラスのATカット水晶振動子や音叉型水晶振動子を手掛けるリバーエレテック<6666.T>、パワーエレクトロニクス技術に強みを持ち新エネ関連として活躍余地の高い正興電機製作所<6653.T>などが挙げられる。
また、今の地合いからは少し離れたテーマではあるが、ここにきて量子コンピューター関連に静かに資金が流れ動兆の気配がある。シグマ光機<7713.T>のほか、常連組のフィックスターズ<3687.T>、エヌエフホールディングス<6864.T>などをマークしておきたい。
あすのスケジュールでは、日銀の金融政策決定会合(~21日)、20年の訪日外国人消費動向調査、20年12月の主要コンビニエンスストア売上高など。海外では、バイデン次期米大統領の就任式、マレーシア中銀、カナダ中銀、ブラジル中銀の金融政策決定会合(政策金利発表)など。(銀)
出所:MINKABU PRESS
全体相場の牽引役は半導体、そして電子部品株だ。AI売買の影響もあって、インデックス買いなどを交え主力銘柄への資金流入が顕著となっている。半導体製造装置御三家ともいえる東京エレクトロン<8035.T>、レーザーテック<6920.T>、アドバンテスト<6857.T>のほか、電子部品セクターでTDK<6762.T>、ローム<6963.T>、太陽誘電<6976.T>、村田製作所<6981.T>といったアップルサプライヤーの上値追いが鮮烈だった。
バイデン新政権では景気敏感株が復権しハイテク株が沈むという見方があったが、ここにきての半導体や電子部品株上昇は、市場がこれらのセクターをハイテクとは見なしていないことを物語る。半導体も電子部品も「物資」という位置づけで人気化し、むしろそれを製造する会社は金の卵を産む鶏のごとし、株式争奪戦のムードが漂う。国内ではコロナ禍の初期段階でマスクやアルコール除菌剤が払底したが、その時の買い占めを想起させるような投資マネーの流入だ。米中摩擦を背景とした半導体の調達難が需給逼迫効果を生み出し、足もとでは台湾勢に漁夫の利をもたらしている。そして、この流れはそのまま東京市場にも及んでいる。
ただ、個人投資家は難しい投資スタンスを強いられる状況にある。市場関係者は「ここから東エレクやレーザーテック、村田製の株価が更に上がると思っても、高値つかみの恐怖感から投資家心理として手は出しにくい」(国内証券マーケットアナリスト)と指摘する。また、早期に大型株を拾い資金を中長期で寝かせていた向きは、予想以上のキャピタルゲインを獲得した。しかし、それも既に売ってしまったケースは多い。「ここから売値より上で買い戻すのは心情的にも困難を極める」(同)という。結果として、“生身の”投資家を乗せないまま、指数連動型の無人エレベーター相場が繰り広げられることになる。
きょうは日経平均が大引け伸び悩んだとはいえ400円近い上昇で取引を終えたが、日経平均の上げ幅と相場の実態は大きく遊離している。TOPIXベースでは10ポイント高とたいしたことがなく、日経平均に引き直して160円高程度にとどまる。更に東証1部の値上がり銘柄数は1000を切り、値下がり数の方が270銘柄以上多いという異例の展開。日経平均が400円高くても今の相場はこういうことが起こり得る。AIによる先物仕掛けによって、いかに日経平均寄与度の高い大型株が偏って買われたかを示している。
主力株への投資は、日経平均が早晩3万円を回復するという観点に立てばここからでも買いで対処して報われる公算は大きい。ただ、バイデン新政権離陸後は一時的に相場がエアポケットに入る局面も想定され、先物絡みの揺れに備えておく必要はある。
他方、大型株の“天辺買い”よりは相対的に踏み込みやすい中小型株では、半導体関連の出遅れでミナトホールディングス<6862.T>、炭素繊維複合材ケーブルで材料性を内包する東京製綱<5981.T>、5G関連では世界最小クラスのATカット水晶振動子や音叉型水晶振動子を手掛けるリバーエレテック<6666.T>、パワーエレクトロニクス技術に強みを持ち新エネ関連として活躍余地の高い正興電機製作所<6653.T>などが挙げられる。
また、今の地合いからは少し離れたテーマではあるが、ここにきて量子コンピューター関連に静かに資金が流れ動兆の気配がある。シグマ光機<7713.T>のほか、常連組のフィックスターズ<3687.T>、エヌエフホールディングス<6864.T>などをマークしておきたい。
あすのスケジュールでは、日銀の金融政策決定会合(~21日)、20年の訪日外国人消費動向調査、20年12月の主要コンビニエンスストア売上高など。海外では、バイデン次期米大統領の就任式、マレーシア中銀、カナダ中銀、ブラジル中銀の金融政策決定会合(政策金利発表)など。(銀)
出所:MINKABU PRESS
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