■決算動向
2. 2021年3月期上期決算の概要
エムアップホールディングス<3661>の2021年3月期上期の業績は、売上高が前年同期比11.1%増の5,902百万円、営業利益が同63.2%増の554百万円、経常利益が同69.7%増の583百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同88.9%増の357百万円とコロナ禍の影響を受けながらも大幅な増収増益を実現した。また、通期計画に対しても順調に進捗している。
コロナ禍の影響により音楽ライブやイベントが軒並み中止・延期となったことで、「コンテンツ事業」における会員数の伸び悩みや、「電子チケット事業」における電子チケット及びチケットトレードの取り扱いの大幅な落ち込みを招いたものの、開催が中止・延期されたコンサートグッズ等の取り扱いが増加したことで「EC事業」が大きく拡大し、業績の伸びをけん引した。もっとも、「コンテンツ事業」及び「電子ケチット事業」についても、コロナ禍に対応するサービス提供等により、両事業ともに増収を確保しており、コロナ禍の影響を一定の範囲内で抑えることができたと評価できる。
利益面でも、増収効果や利益率の高い「EC事業」※の伸びにより、「電子チケット事業」の先行費用や各種サービスの導入費用、コロナ禍に係る費用等を吸収し、大幅な営業増益を実現することができた。営業利益率も9.4%(前年同期は6.4%)に大きく改善している。
※「EC事業」の売上高は販売手数料で構成されるため、原価率は極めて低く、売上高の伸びが利益の伸びに大きく貢献する。
財政状態については、「現金及び預金」の増加や「投資有価証券」の取得等により、資産合計は前期末比13.4%増の12,090百万円に拡大した。また、自己資本については内部留保を積み増した一方、配当金の支払い等により同0.3%減の4,657百万円とほぼ横ばいで推移したことから、自己資本比率は38.5%(前期末は43.2%)と若干低下した。ただ、有利子負債残高はゼロの状態が続いているうえ、流動比率も127.5%を確保していることから財務の安全性に懸念はない。
主なセグメント別の業績は以下のとおりである。
(1)コンテンツ事業
売上高は前年同期比7.9%増の4,767百万円、セグメント利益は同11.3%増の568百万円と増収増益となった。アーティスト等の獲得による新規ファンクラブの開設(12サイト)のほか、ファンクラブのアプリ化(5アプリ)の推進等により収益力の強化に取り組んだ。ただ、コロナ禍の影響により、音楽ライブやイベントが軒並み中止・延期となったことから有料会員の獲得が伸び悩み、計画に対しての下振れ要因となったようだ。もっとも、コロナ禍の新たなオンライン配信サービスへの対応として、コメントや投げ銭機能を搭載した生配信視聴専用アプリ「FanStream」(詳細は後述)や、これまで研究開発を進めてきたVR映像配信プラットフォーム「VR MODE」(詳細は後述)のサービス開始等により、増収増益を確保することができた。
(2)EC事業
売上高は前年同期比92.6%増の557百万円、セグメント利益は同223.0%増の407百万円と大幅な増収増益となった。コロナ禍の影響により中止・延期となった音楽ライブ、イベントにて販売予定であった商品のeコマースでの取り扱いが増加し、想定を上回る業績の伸びを実現した。ライブツアーグッズや配信ライブグッズなどを幅広く販売し、新規ストア(8ストア)の立ち上げも順調であった。
(3)電子チケット事業
売上高は前年同期比2.3%増の547百万円、セグメント損失が146百万円(前年同期は93百万円の損失)となった。コロナ禍の影響により、2020年2月以降、ほとんどの公演が開催中止や延期となり、電子チケットの取り扱いが大きく落ち込むとともに、チケットトレード成立件数も激減した。電子チケットの取扱枚数は14万枚(前年同期比88%減)、チケットトレード成立枚数は0.9万枚(同81%減)にとどまっている。ただ、コロナ禍の新たなオンライン配信サービスへの対応として、同年6月に生配信販売プラットフォーム「StreamPass」(詳細は後述)を開始すると、「コンテンツ事業」との連携によりオンラインライブ(2D及びVR)の視聴券を販売(6月から9月のチケット取扱枚数23万枚)したほか、9月にはファンとアイドル(及びアーティスト)が交流する握手会やお渡し会などをオンラインサービス化した「Meet Pass」(詳細は後述)を開始(9月単月でのチケット取扱枚数5万枚)し、従来のチケット事業の落ち込みをカバーした。もっとも、リアル(実会場)のイベントについても、8月下旬~9月頃より収容人数を制限(50%未満)する形で徐々に再開傾向にあり、電子チケット及びチケットトレードともに2021年3月期下期は一定の回復を見込んでいる。また、周辺領域のサービスとして提供しているプロ野球等のカードコレクションアプリについても、プロ野球開幕の延期により第1四半期は落ち込んだものの、第2四半期に回復し、単月過去最高売上を記録したほか、前述の「StreamPass」との連携により、新たなスポーツ観戦やエンタテインメントのスタイル提案にも取り組んでいる。一方、利益面では、新たなサービスの開発・導入など、先行費用の増加により損失幅が拡大したが、足元では単月黒字化も見えているようだ。
3. 2021年3月期上期の総括
以上から、2021年3月期上期を総括すると、業績面ではコロナ禍によるマイナス要因をプラス要因で打ち消し、全体で見ると大幅な増収増益を実現したところは、同社の複合的な事業展開や収益基盤の強さを実証したものとして評価することができる。特に、コロナ禍の下、StayHOMEに対応するサービスの拡充や「EC事業」の強化を機動的に図ったことで、新たな代替需要を取り込んだほか、今後の戦略の目玉であるVRを含むオンライン配信サービスを開始し、順調な立ち上がりを確認できたところは、2022年3月期以降の事業拡大に向けて大きな成果と言えよう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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2. 2021年3月期上期決算の概要
エムアップホールディングス<3661>の2021年3月期上期の業績は、売上高が前年同期比11.1%増の5,902百万円、営業利益が同63.2%増の554百万円、経常利益が同69.7%増の583百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同88.9%増の357百万円とコロナ禍の影響を受けながらも大幅な増収増益を実現した。また、通期計画に対しても順調に進捗している。
コロナ禍の影響により音楽ライブやイベントが軒並み中止・延期となったことで、「コンテンツ事業」における会員数の伸び悩みや、「電子チケット事業」における電子チケット及びチケットトレードの取り扱いの大幅な落ち込みを招いたものの、開催が中止・延期されたコンサートグッズ等の取り扱いが増加したことで「EC事業」が大きく拡大し、業績の伸びをけん引した。もっとも、「コンテンツ事業」及び「電子ケチット事業」についても、コロナ禍に対応するサービス提供等により、両事業ともに増収を確保しており、コロナ禍の影響を一定の範囲内で抑えることができたと評価できる。
利益面でも、増収効果や利益率の高い「EC事業」※の伸びにより、「電子チケット事業」の先行費用や各種サービスの導入費用、コロナ禍に係る費用等を吸収し、大幅な営業増益を実現することができた。営業利益率も9.4%(前年同期は6.4%)に大きく改善している。
※「EC事業」の売上高は販売手数料で構成されるため、原価率は極めて低く、売上高の伸びが利益の伸びに大きく貢献する。
財政状態については、「現金及び預金」の増加や「投資有価証券」の取得等により、資産合計は前期末比13.4%増の12,090百万円に拡大した。また、自己資本については内部留保を積み増した一方、配当金の支払い等により同0.3%減の4,657百万円とほぼ横ばいで推移したことから、自己資本比率は38.5%(前期末は43.2%)と若干低下した。ただ、有利子負債残高はゼロの状態が続いているうえ、流動比率も127.5%を確保していることから財務の安全性に懸念はない。
主なセグメント別の業績は以下のとおりである。
(1)コンテンツ事業
売上高は前年同期比7.9%増の4,767百万円、セグメント利益は同11.3%増の568百万円と増収増益となった。アーティスト等の獲得による新規ファンクラブの開設(12サイト)のほか、ファンクラブのアプリ化(5アプリ)の推進等により収益力の強化に取り組んだ。ただ、コロナ禍の影響により、音楽ライブやイベントが軒並み中止・延期となったことから有料会員の獲得が伸び悩み、計画に対しての下振れ要因となったようだ。もっとも、コロナ禍の新たなオンライン配信サービスへの対応として、コメントや投げ銭機能を搭載した生配信視聴専用アプリ「FanStream」(詳細は後述)や、これまで研究開発を進めてきたVR映像配信プラットフォーム「VR MODE」(詳細は後述)のサービス開始等により、増収増益を確保することができた。
(2)EC事業
売上高は前年同期比92.6%増の557百万円、セグメント利益は同223.0%増の407百万円と大幅な増収増益となった。コロナ禍の影響により中止・延期となった音楽ライブ、イベントにて販売予定であった商品のeコマースでの取り扱いが増加し、想定を上回る業績の伸びを実現した。ライブツアーグッズや配信ライブグッズなどを幅広く販売し、新規ストア(8ストア)の立ち上げも順調であった。
(3)電子チケット事業
売上高は前年同期比2.3%増の547百万円、セグメント損失が146百万円(前年同期は93百万円の損失)となった。コロナ禍の影響により、2020年2月以降、ほとんどの公演が開催中止や延期となり、電子チケットの取り扱いが大きく落ち込むとともに、チケットトレード成立件数も激減した。電子チケットの取扱枚数は14万枚(前年同期比88%減)、チケットトレード成立枚数は0.9万枚(同81%減)にとどまっている。ただ、コロナ禍の新たなオンライン配信サービスへの対応として、同年6月に生配信販売プラットフォーム「StreamPass」(詳細は後述)を開始すると、「コンテンツ事業」との連携によりオンラインライブ(2D及びVR)の視聴券を販売(6月から9月のチケット取扱枚数23万枚)したほか、9月にはファンとアイドル(及びアーティスト)が交流する握手会やお渡し会などをオンラインサービス化した「Meet Pass」(詳細は後述)を開始(9月単月でのチケット取扱枚数5万枚)し、従来のチケット事業の落ち込みをカバーした。もっとも、リアル(実会場)のイベントについても、8月下旬~9月頃より収容人数を制限(50%未満)する形で徐々に再開傾向にあり、電子チケット及びチケットトレードともに2021年3月期下期は一定の回復を見込んでいる。また、周辺領域のサービスとして提供しているプロ野球等のカードコレクションアプリについても、プロ野球開幕の延期により第1四半期は落ち込んだものの、第2四半期に回復し、単月過去最高売上を記録したほか、前述の「StreamPass」との連携により、新たなスポーツ観戦やエンタテインメントのスタイル提案にも取り組んでいる。一方、利益面では、新たなサービスの開発・導入など、先行費用の増加により損失幅が拡大したが、足元では単月黒字化も見えているようだ。
3. 2021年3月期上期の総括
以上から、2021年3月期上期を総括すると、業績面ではコロナ禍によるマイナス要因をプラス要因で打ち消し、全体で見ると大幅な増収増益を実現したところは、同社の複合的な事業展開や収益基盤の強さを実証したものとして評価することができる。特に、コロナ禍の下、StayHOMEに対応するサービスの拡充や「EC事業」の強化を機動的に図ったことで、新たな代替需要を取り込んだほか、今後の戦略の目玉であるVRを含むオンライン配信サービスを開始し、順調な立ち上がりを確認できたところは、2022年3月期以降の事業拡大に向けて大きな成果と言えよう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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