リスクへの挑戦~バイタリティの継承はいかに

著者:鈴木 行生
投稿:2021/01/12 10:38

・シーメンスのジョー・ケーザー社長(CEO)は、社歴40年以上の生え抜きだが2013年に社長に就任して以来、家電を売却、医療機器をIPOしたのに続き、発電機などのエネルギー部門を分離上場させた。ソフト企業の買収を続けて、本体のデジタル化を推進している。日立より一足早く重電会社から脱皮しつつある。

・ケーザー社長は、半導体などを担当した後、CFOも務めた。経営のスピードアップに向けて、医療機器、エネルギー、デジタルの3つの事業領域をグループとしてではなく、各々がオーナーシップをもってブランドを作っていってほしいと考え、3つの会社に分けた。これを2年前から実行していたので、今回のコロナショックも乗り切れると話した。

・フォーカスを重視し、規模よりスピードを大事にした。3社は独立して、経営を行っている。DXも水素エコノミーも、カーボンニュートラルもチャンスと捉えている。リモートワークは働き方がフレキシブルになって、創造性も生産性も発揮できるという。今後のカギはデジタルツインにあると強調した。

・そして、未来のモデルはイノベーションを追求しつつ、インクルーシブ(包摂的)な資本主義に進むことになると明言した。人々は、自分の会社のこととして働くことが大切になる。自らの評判と重なるオーナー的なふるまいが求められる。

・オーナーシップカルチャーをいかに作るか。シーメンス38.8万人中30万人が自社株を持っている。CEOの役割は、1)危機管理は他にまかせられない。自ら先行して進めるしかない、次に、2)コロナが終わった後、どう進むかをはっきりさせておくことである、と語った。

・マイクロソフトのブラッド・スミス社長は法務出身である。ソフトウエアがプラットフォームとなる時、独占的競争法、技術の倫理的対応、プライバシー保護という点で、絶えず矢面に立たされる。

・スミス氏は、IT大手企業のプロとして、テックの光と影について手腕を発揮している。1)どんな時も法を超えてはならない、2)常に新しいルールができてくる、3)民主主義は脆弱で、ハッキングや誤情報を防ぐには、皆で守るという共通認識が必要である、と強調する。

・そのために、ITセクターの責任者として、あるべき道を作っていく。同時に、政府にはルールとしてのもう1つの道を作ってほしいと要求する。この2つの道の建設に、常に努力すると強調した。この10年が大事になる。

・政府やIT大手に、プライバシー情報を預けて大丈夫か。マイクロソフトは透明性に関するレポートを出している。1)知る権利を守り、2)個人の情報は個人のものという基本を公開し、3)透明性と説明責任を果たしていく。

・もう1つは、ダイバーシティとインクルージョンを含めて、世界のためにITを使う。マルチナショナル、マイノリティ、女性、障害のある人々にも貢献する。格差を少なくすることにいかに貢献したかも、スミス社長の報酬の評価に入っている。

・ネットフリックスのリード・ヘイスティングCEOは、1997年の創業時から、いずれ配信の時代がくると読んだ。DVDの郵送レンタルからスタートして、2007年からはストリーミング配信を開始した。世界で2億人、日本でも500万人が会員として利用している。年間3000万人以上のペースで会員が増えている。

・成長戦略は、ストリーミングに加えてスタジオを持ち、オリジナル作品を創って世界に提供している。コンテンツは制作国だけでなく、世界に配信する。韓国もの、日本ものも世界190カ国で見ることができる。

・ネットフリックスの企業文化は、ノールールにある。各国の文化によって価値観は異なる。それをグローバルに統一して運営をすることは難しい。工場なら命令と管理が必要だが、新しいアイデアで作品を作っていくには、ルールで型をはめることはできない。

・多くの人々からアイデアを出してもらうには、各国で優秀な人材を集め、彼らに任せてしまう。カオスの際(きわ)で人々に上手く働いてもらう。才能のある人に任せて、自由にやってもらう。うまくいくと一体感が生まれ、各人が自分の任をさっさと果たして、能力を発揮する。

・例えば、米国人はストレートだが、日本人は行間を読む。このギャップを埋めていくことは大事で、シリコンバレーの文化を世界で広げることはできない、と強調した。

・日本のチームを、スポーツのチームと同じようにみればよい、と例えた。スポーツチームがベストのパフォーマスを追求するのは当然である。メンバーが不十分であれば交替してもらう。そのための退職パッケージも用意している。

・革新的なことをやろうとすると、ミスも出る。クリエイティブな仕事のイノベーションにはミスもありうる。これを許容していく。他の産業では、例えば製造業やエアラインでは安全第一なので、こうしたことはできない。

・これからも競争は激しくなるが、ネットフリックスの強みはオリジナルコンテンツにある。わくわく感を増やしていけば、勝負に勝っていけると自信を見せた。

・楽天の三木谷社長は、リスクをとるのが仕事であると明言する。ECなど、この20年の楽天エコシステム作りは、スマホで5Gの世界に打って出る準備のようなものであったという。5Gで2980円という価格は、後発ながら通信ネットワークのイノベーションの賜物で、楽天独自の仕組みとして開発した。

・社内の公用語を英語にするといった時、そんなことは無理といわれた。しかし、英語の点数は、TOEICの520点がいまや870点に上がっている。経営会議も英語でやっている。外国人が2割いるが、エンジニアでは8割が外人である。

・英語で仕事ができるから、能力のある人材が入ってくる。5Gのイノベーションも英語圏だからできたという。今、海外売上比率は2割であるが、楽天の5Gテクノロジーを活かせば、海外比率を5割で上げることもできるとみている。

・楽天の挑戦は続く。自分がアントレプレナーとして実践している楽天から、起業家がどんどん出ている。ロールモデルとなって人材を育てて、飛び出ていく人がいてもよい。ネットはまだこれからで、ワクワクしていると三木谷氏は語った。

・ニトリホールディングスの似鳥会長(CEO)は、リスクがないと生きている気がしないとまで言う。ニトリは家具屋ではない。ホームファッションがすでに6割を占める。1か所で何でも揃うデスティネーションストア(欠くことのできない店)となっており、コロナ禍でも売上が伸びている。

・SPA(製造小売り)を追求して、海外で生産し輸入してきた。95%は海外から調達し、在庫を持つ。よって、物流を強くする必要があった。コンテナの取り扱いは日本一で、物流量としてはヤマトに次いで2位である。

・ニトリカードの保有者は4000万人、そのうちアプリを有する人が900万人になろうとしている。アプリを利用する人は、通常の顧客の2倍以上購入する。7000億円の売上高の10%はアプリを有する人で、このアプリ会員の7割は店にも来ている。つまり使い分けている。

・経営は常に逆算でやってきた。1000店、1兆円を目標にしてきたが、ここ数年で達成できよう。次は、3000店で3兆円という目標になろうが、そのためには常に新しいやり方が必要である。

・未来からの逆算とは、顧客がほしいもの実現すべく、5年先を行くことである。店にも寿命があり、似鳥社長は20年とみている。人に例えれば80歳である。現在、店舗の平均年齢は8~9年。10年は人でいえば40歳である。伸び盛りは5~8年で、10~15年過ぎると下降に入る。主因は、顧客が移動していくからで、店舗のスクラップ&ビルドが必要となる。

・似鳥社長は自らに発達障害があったことを公言し、それをむしろバネにして事業を大きくしてきた。米国で起きたことは、いずれ日本で起きるとみている。米国のウォルマートとアマゾン、日本ではユニクロ、ニトリ、しまむらがリード役で、今後、業界での淘汰はさらに起きると予想する。

・コロナはいつか終わる。その時経済にも反動が起きて、株のバブルも終わりがこよう。この時がニトリにはチャンスであると語った。来年新たな5か年計画を作る方針である。

・このように創業者は面白い。このバイタリティをいかに受け継いでいくか。これは次なる課題である。同時に、創業家の時代を終えた大企業が経営革新を持続するには何が本質なのか。ここもさらにつきつめる必要があろう。

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配信元: みんかぶマガジン
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