投資信託のパフォーマンス~アクティブ運用の課題

著者:鈴木 行生
投稿:2020/11/16 11:01

・個人的な例をあげてみよう。筆者は個人投資家として2本のポートフォリオを別々に運用している。1本は10年前にスタートし、現在は1.5倍になっている。もう1本は4年前に開始して2倍になっている。

・2年前まで各々の資金の6割を有価証券に投資し、4割をキャッシュとして待機していた。当時いずれトランプショックが来るとみて、1本目はキャッシュの比率を6割に上げ、2本目はキャッシュの比率を9割にして、リスク回避を図った。

・1本目はそのまま現在に至っているが、もう1本の方は、コロナショックを踏まえて、株式などの比率を6割にまで戻した。1本目のポートフォリオの有価証券のうち、8割が株式、2割が投資信託である。この投資信託のパフォーマスは元本を10%ほど下回っている。

・投信は海外株である。海外株については、個別銘柄の分析が日本株のようにはできないので、アジア株の投資信託など8本に投資している。プラスのリターンのものもあるが、全体としては現在マイナスである。

・2本のポートフォリオとも中長期投資が基本なので、ポートフォリオの見直し、銘柄の入れ替えは年に1~2回行うだけである。ポートフォリオの銘柄は各々10社前後で、金額も個人投資家のレベルなので売買(流動性)には何ら問題ない。経験上10銘柄でもかなり分散投資が効いてくる。

・パフォーマンスが相対的によい理由は、自分なりに銘柄研究をして、中長期で投資すると決めていることにあろう。銘柄はよく選んでいる。銘柄を決めても、すぐには売買しない。1~2年の間にタイミングをみて投資する。

・ベースは等金額投資で、たまにリバランスを図ることもある。個別銘柄をみると、半値になったものもあるが、5倍以上になったものもある。中長期の見方が変わったものははずし、新しくピンときた銘柄に入れて替えていく。極めてシンプルであるが、重要なのは個別銘柄との出会いである。

・では、投信はなぜ儲からないのか。6月に金融庁から「資産運用業高度化プログレスレポート2020」というレポートが出された。プログレスとは、目標に向かって絶え間なく進歩・発展していくことを意味する。現状にはかなり不満があるとみられる。

・国内で提供される公募投信について、過去5年間のパフォーマスをみると、アクティブ投信の信託報酬控除後のシャープレミオは平均0.20で、パッシブ投信の平均0.40を下回っている。信託報酬控除前でもアクティブ0.29に対してパッシブ0.42であるから、市場平均を下回る超過収益しか上げられていない。

・意味するところは、プロのファンドマネージャーに任せて、成果の上がりそうなポートフォリオを作っても、そのパフォーマスが市場平均を下回っている。市場平均のポートフォリオに特別の腕はいらない。システムできちんと対応してもらえばよい。

・シャープレシオとは、リターン(収益)をリスク(分散・バラツキ)で割ったもので、リターンは高い方がよく、リスクは低い方がよいので、ポートフォリオのパフォーマンスを見るときによく使われる。

・アクティブの方が通常リスクが高い。でも、それに見合ったリターンが出ていない。ということは、ファンドマネージャーの腕が今1つであるとみられてもしかたがないが、実はもっと深い要因がある。

・世界的にみてもパッシブ投信が伸びるという傾向がみられる。米国のミューチュアルファンドのパフォーマスをみると、同じ5年間のシャープレシオで、アクティブ0.67、パッシブ0.71であった。

・アクティブがパッシブに負けているのは同じだが、両者ともパフォーマスの水準が高い。米国では、アクティブがパッシブを上回っているファンド数が日本より多い。日本でもアクティブパフォーマスがパッシブを凌ぐファンドはあるが、その運用機関をみると、そもそも取扱ファンドの数が少なく、しかも独立系の運用会社である。

・日本の公募投信は、ファンド数が極めて多く、しかも少額である。また、販売会社を1社のみとする専売を商慣行としてきた。この専売本数の比率が、全体の3割を占めている。運用金額が10億円以下の専売投信の多い販社は、大手証券会社、大手信託銀行である。

・大手金融機関のグループに属する運用会社は、業務運営体制がグループリーダー格である証券会社や銀行のマーケティング方針に沿った商品開発を行ってきたのではないか。そういう面があるとすれば、いかに修正していくか。

・本レポートでは、4つの対応が必要であると指摘する。第1はガバナンスで、運用会社の経営及びファンド運営に対して、顧客利益の観点から、より牽制機能を発揮させるようにする。販売優先、親会社の利益優先にならないような組織、人材を配置して機能させる。

・第2は経営体制で、トップマネジメントが運用経験豊富な人材で構成され、長期間在任できるようにする。そして何よりもプロとしての能力が発揮できるように、キャリア開発を実行する。

・第3は目指す姿や強みを明確にして、その実現に向けた取り組みを実行する。国内で成長している独立系運用会社や海外の大手機関はここがはっきりしている。

・第4は、それらを実行する業務運営体制作りとして、少額投信の償還や併合、パフォーマス確保のためのキャパシティコントロール(運用上限管理)、パフォーマスに見合った報酬制度(成功報酬型信託報酬)なども一層取り入れるべきである。アクティブ運用において、新しいテクノロジーに基づくリサーチを一段と充実してほしい。

・運用は常にポートフォリオである。パッシブ運用といっても、どの国にどのくらい投資するかによって、パフォーマンスは違ってくる。国内の株式型アクティブファンドの課題をみると、実は日本企業の経営課題と何ら変わらない。

・① 顧客の利益を優先するガバナンス体制を作る、②ビジョンを掲げて強みを磨く、③トップマネジメントに優秀な人材を選び、プロの人材育成とそれに見合った報酬体系を作る、④事業再編を行って、常に新しいテクノロジーを活用しつつ、リサーチベースのイノベーションを行う、ということになる。

・運用において、その継続性は最も重要である。一方で、サステナビリティを確保していくには変革が求められる。運用機関は、グローバルな視点にたって、中長期に儲かる投資信託を開発し、実績(トラックレコード)を作ってほしい。その時には、自らのポートフォリオにもっと投信を組み入れたいと思う。

日本ベル投資研究所の過去レポートはこちらから

配信元: みんかぶマガジン
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