[資源・新興国通貨8/24~28の展望] トルコリラは下落傾向が続く!?

著者:八代和也
投稿:2020/08/21 18:35

豪ドル

RBA(豪中銀)は18日、8月4日の政策会合の議事録を公表。4日の会合では「政策金利」と「3年物豪国債の利回り目標」のいずれも0.25%に据え置くことが決定されました。

議事録は、「豪景気の下振れは当初に予想したほど深刻ではなく、国内の大部分の地域で景気回復が進んでいる」と指摘。一方で、「ビクトリア州での新型コロナウイルス感染拡大の影響によって景気回復のペースは当初の予想よりも鈍くなる」との見通しを示しました。

議事録はまた、「正当化されるならば、現在の政策措置を調整する(=追加緩和)ことを排除しない」としながらも、「現在の環境において措置を調整する必要はない」と表明しました。

RBAはかねてより、「マイナス金利を導入する可能性は非常に低い」と明言。それが豪ドルの支援材料となってきました。議事録で「追加緩和は現時点で必要ない」との姿勢が改めて示されたことで、豪ドルは底堅さを増す可能性があります。

NZドル

NZドルは20日、対米ドルや対円で約1カ月半ぶりの安値をつけました。NZドルが軟調な背景として、「RBNZ(NZ中銀)が将来的にマイナス金利を導入する可能性を示している」ことが挙げられます。RBNZが12日の会合時の声明で「NZドルの上昇によって輸出業者の利益が一部相殺されている」と指摘したことも、NZドルの重石です。

24日にNZの4-6月期小売売上高が発表されます。コロナの感染拡大を抑えるためにロックダウン(都市封鎖)の影響によって小売売上高は4-6月期に大きく落ち込んだとみられ、その通りの結果になればNZドルへの下押し圧力は一段と強まる可能性があります。目先の下値メドとして、NZドル/米ドルは0.63805米ドル(6/15安値)、NZドル/円は66.000円(3月半ば~5月下旬にかけての高値水準)が挙げられます。

カナダドル

カナダドルは19日、対米ドルで約6カ月半ぶりの高値を記録。米ドルが全般的に弱含んだことや約5カ月半ぶりの高値圏で推移するWTI原油先物(原油価格の代表的な指標)が、カナダドルにとって支援材料となりました。一方、対円(カナダドル/円)は米ドル/円の下落が重石となって伸び悩んでいます。

WTI原油先物については、米国などでのコロナ感染拡大を受けて原油需要の回復が遅れるとの懸念が上値を抑える一方、「“OPEC(石油輸出機構)プラス”の協調減産参加国の7月の減産順守率が高かった」との報道(17日)が下値を支えるとみられます。WTI原油先物が高値圏を維持すれば、カナダドルは底堅い展開になりそうです。

カナダの経済指標では、28日発表の4-6月期GDP(国内総生産)に注目です。市場予想は、前期比年率マイナス37.8%と、コロナの影響によって大きく落ち込むとみられています。仮にマイナス成長になれば、2四半期連続(1-3月期はマイナス8.2%)です。ただ、4-6月期に大幅なマイナス成長になることは市場にある程度織り込まれていると考えられます。市場予想と比べてよほど弱い結果にならなければ、カナダドルはそれほど下がらないかもしれません。

トルコリラ

TCMB(トルコ中銀)は20日、政策金利(1週間物レポ金利)を8.25%に据え置くことを決定。声明では、インフレについて「新型コロナウイルスの感染拡大の制約による供給側の要因は、次第に軽減する」との見方を示す一方、「為替レート(=トルコリラ)や信用動向によって需要側のディスインフレの効果は抑制される」と指摘。「流動性措置を継続しつつ、政策金利を据え置くことを決定した」と表明しました。

政策金利の発表から約30分後、TCMBは「預金準備率を引き上げる(市場の流動性を絞る措置)」と発表しました。
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トルコリラが下落し続けるなか、TCMBは「流動性措置」や「国営銀行などに対して個人や企業向け融資の金利の引き上げを指示する」ことで対応しています。流動性措置については、1週間物レポ金利を通じた銀行への資金供給を7日に中止し、市場金利をより高水準の翌日物貸出金利や後期流動性貸出金利へと誘導。翌日物貸出金利と後期流動性貸出金利は今回、いずれも9.75%と11.25%に据え置かれました。

エルドアン大統領はかねてより利上げに反対しており、その中で利上げをするのは簡単ではないと考えられます。TCMBは当面、利上げではなく流動性措置の強化などでリラ安に対応していくとみられます。

21日のエルドアン大統領の発表内容次第では、トルコリラはいったん反発するかもしれません。エルドアン大統領は19日、「トルコの新たな時代を開く“良いニュース”を21日に発表する」と表明。「黒海でエネルギー資源が発見された」との報道があります。

ただ、トルコリラの下落傾向に歯止めがかかるには、利上げ(1週間物レポ金利の引き上げ)を行うことによってTCMBが政府から独立していることを示す必要があると考えられます。

南アフリカランド

南アフリカランドは19日、対米ドルで約2週間ぶりの高値を記録しました。これはランドにとってプラス材料が出てというよりは、米ドルが全般的に弱含んだことが大きいとみられます。ランド/円が6円近辺で推移していることがそれを示していると言えそうです。

エスコム(南アフリカの国営電力会社)が20日まで3日連続で計画停電を行いました。計画停電の実施は景気にとって悪影響を与え、それが長期化するほど景気に対する下押し圧力が増すことになります。市場は今のところ計画停電に対してほとんど反応していません。ただ今後、市場の関心が向いた場合にはランドに対して下押し圧力が加わる可能性があり、要注意です。

メキシコペソ

メキシコペソは今週(8/17- )、対米ドルで22ペソ近辺、対円では4.800円近辺で推移しており、比較的落ち着いた展開です。

25日発表のメキシコの8月前半のCPI(消費者物価指数)の結果がペソの動向に影響を与える可能性があります。BOM(メキシコ中銀)は13日の政策会合で0.50%の利下げを決定。政策金利を5.00%から4.50%へと引き下げました。ただ、会合で5人の政策メンバーのうち1人がより小幅な利下げ(0.25%)を主張していたことで、市場では「BOMの利下げペースは今後鈍化する」との観測があります。8月前半のCPI上昇率が前月(7月前半)の前年比3.59%から加速した場合、利下げ観測が市場で後退してペソが堅調に推移する可能性があります。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想