[資源・新興国通貨7/6~10の展望] 7日、豪中銀政策会合

著者:八代和也
投稿:2020/07/03 14:01

豪ドル、NZドル

豪ドルやNZドルは今週(6/26- )、対米ドルや対円で堅調に推移しました。堅調な米経済指標の結果を受けてリスクオフの動きが後退し、それが投資家のリスク意識の変化を反映しやすい豪ドルやNZドルの支援材料となりました。

欧州や米国など主要国の株価が上昇する、あるいは経済指標が堅調な結果になれば、リスクオフは一段と後退して、豪ドルやNZドルは上値を試す展開が想定されます。一方で米国における新型コロナウイルスの感染拡大や米中の対立など、リスクオフを再び強めかねない要因も存在します。市場が新型コロナウイルスの感染拡大などに着目した場合、豪ドルやNZドルは上値が重くなる、あるいは反落する可能性があります。

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豪ドルについては、7日のRBA(豪中銀)の政策会合にも注目です。政策金利(現行0.25%)と3年物豪国債の利回り目標(同0.25%前後)のいずれも据え置くとみられ、今回は声明で“豪経済についてどのような認識が示されるのか”が焦点になりそうです。

RBA当局者は最近、「豪経済は当初懸念していたよりもうまく新型コロナウイルスによる危機を切り抜けている」としつつも、「先行きにはかなりの不透明感がある」との見方を示しています。一方で、このところ米国で新型コロナウイルスの感染が拡大しており、また米中の関係は悪化しています。声明が豪経済の下振れリスクや先行きの不透明感のさらなる高まりを強調する内容になれば、豪ドルの上値を抑える材料になりそうです。

カナダドル

カナダドルは原油価格(米WTI原油先物など)の動向に影響を受けやすい状況となっており、その状況は当面続きそうです。

原油価格の代表的な指標である米WTI原油先物は足もとで1バレル=40ドル前後で推移しており、3月上旬以来の高値水準を維持しています。最近の米経済指標はおおむね良好な結果です。一方で、このところ米国で新型コロナウイルスの感染者が増加しており、一部の州は経済活動の再開を停止したり、再び営業制限措置を講じたりしています。WTI原油先物は“下値は堅いが、上値も重い”展開になる可能性があり、カナダドルには明確な方向感は生まれにくいかもしれません。

トルコリラ

トルコリラに対する重石のひとつとして、大幅なマイナスになっている実質金利(政策金利から前年比のCPI上昇率を引いたもの)が挙げられます。トルコの実質金利は2日時点でマイナス3.14%です。

3日、トルコの6月CPI(消費者物価指数)が発表されます。本稿執筆時点でその結果は発表されていませんが、5月の前年比11.39%を上回れば、実質金利のマイナス幅は拡大することになります。そのことが市場で改めて意識されれば、リラの上値は一段と重くなる可能性があります。

フランス外務省は1日、NATO(北大西洋条約機構)の作戦への参加を中断すると発表。“フランス軍の艦艇が6月にトルコ(トルコもNATO加盟国)の艦艇から妨害を受けたため”としています。リビア内戦をめぐり両国は対立。トルコが暫定政権を支持する一方、フランスは公式には認めていないもののLNA(リビア国民軍)を支持しているとされており、フランスはトルコがリビア内戦に軍事介入していることを強く非難しています。両国の対立が一段と激化した場合、リラに対して下押し圧力が加わるかもしれません。

南アフリカランド

南アフリカの1-3月期経常収支(7/2発表)は、市場予想(349億ランドの赤字)に反して697億ランドの黒字となりました。四半期ベースで経常収支が黒字となったのは17年ぶりです。経常収支の結果はランドの下支え材料になりそうです。

また、米国の堅調な経済指標を受けて市場でリスクオフが後退していることもランドにとってプラス材料です。リスクオフが一段と後退すれば、ランドは上値を試す展開になるかもしれません。一方で、米国での新型コロナウイルスの感染拡大や米中対立などリスクオフを再び強めかねない要因があり、そのことに注意する必要があります。

メキシコペソ

メキシコペソは今週(6/29- )、対米ドルや対円で堅調に推移しました。米国の堅調な経済指標を受けてリスクオフが後退したことや原油価格の上昇が、ペソの支援材料となりました。

来週(7/6- )のペソは引き続き、投資家のリスク意識の変化や原油価格(米WTI原油先物)の動向に反応しやすい地合いになりそうです。リスクオフが一段と後退し、原油価格がさらに上昇すれば、ペソは上値を試す展開になる可能性があります。ペソ/円は4.885円(6/16高値)が目先の上値メドになりそうです。

ロペスオブラドール・メキシコ大統領は8~9日に訪米し、トランプ大統領と8日に会談する予定です。両大統領の会談の内容次第ではペソが反応する可能性があります。

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7月1日、USMCA(米・メキシコ・カナダ協定)が発効しました。USMCAはNAFTA(北米自由貿易協定)に代わる新たな協定です。USMCAは「自動車の原産地規則」の厳格化が柱。域内の自動車部品の調達率を従来の62.5%からまずは66%へと変更し、1年後に69%、2年後に72%、3年後に75%へと段階的に引き上げます。また、「部品の40~45%を時給16米ドル以上の地域で生産する」、「自動車メーカーは鉄鋼とアルミの最低70%を域内で調達する」などの条件を満たせば、関税が免除されます。

USMCAの発効は長期的にみればメキシコ経済やペソにとってプラスになると考えられます。自動車の関税免除の条件が厳しくなったことで、自動車メーカーはアジアや欧州などから生産拠点をUSMCA域内へと一部移管する動きが出てくるかもしれません。その場合、メキシコは米国やカナダに比べて賃金やコスト面で優位にあるためです。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想