【来週の注目材料】今回もかなり深刻な数字に~米雇用統計

著者:MINKABU PRESS
投稿:2020/05/30 17:10
 新型コロナウイルスの感染拡大が多くの国で一服。日本では25日に緊急事態宣言が全国的に解除されましたが、世界的にもロックダウンの緩和に向けた動きが広がっています。
 感染拡大が世界で最も深刻な米国でも、かなりの地区で経済の再開に向けた動きが広がっています。米国の郡単位での新型コロナウイルスによる死者数は、TOP3がいずれもNY市(キングス郡、クイーンズ郡、ブロンクス群)となっており、NY市の被害が突出しています。そのNY市でも6月8日から経済を再開するとクオモNY州知事が発表するなど、ようやくアフターコロナに向けた動きが強まってきています。

 そうした中、市場の注目は新型コロナウイルスの感染被害により実体経済がどこまでの影響を受け、今後どのようなペースでどこまで回復していくのかということ。こうした中で、今週は米国の重要指標が目白押しとなっており、市場の注目を集めそうです。

 特に注目は1日の米ISM製造業景気指数、3日のADP雇用者数とISM非製造業景気指数、そして5日の米雇用統計です。

 中でも、前回2000万人を超える雇用減を記録した米雇用統計には注目が集まりそう。リーマンショック時どころか、第二次世界大戦終戦直後の水準をも超える雇用者の減少は、今回の新型コロナウイルスによるロックダウンでの、米雇用市場の厳しい状況が印象付けられました。

 前回の雇用統計、あらゆる業種で大きく雇用が減少しました。在宅勤務が難しい建設部門が97.5万人減となったこともあり、財生産部門は235.5万人の減少。多くの店舗が休業する中での小売業の210.7万人の減少。これらは数字的には大きいものの、ある程度は予想の範囲内といえました。しかし、医療・介護部門の208.7万人減や、レジャー部門の765.3万人減はかなりのインパクトでした。

 医療・介護部門は、日本でも介護関連の人手不足が見られるように、慢性的に人手不足で雇用が増えている部門。リーマンショック時の雇用が厳しい時でも同部門は雇用が増えて全体を下支えしていただけに、今回ここまで大きく減少したという状況は、深刻さを意識させる格好となりました。

 レジャー部門は、ロックダウンが広がる中で雇用減が見込まれる部門ではありますが、施設などの閉鎖が比較的早かったこともあり、前回3月分の時点ですでに49.9万人の減少となっていました。また、そもそも1600万人程度しか雇用者がいない部門だけに、765万という数字のインパクトは大きいものがありました(なお、3月時点での同部門雇用者数の実に47%が失業した格好です)。

 失業率も14.7%とリーマンショックやオイルショック時を超え、現行基準での水準としては過去最悪となりました(なお基準が違うため一概には比べられませんが、大恐慌時は20%を超えていたと見られます)。

 こうした状況を受けて今回の数字ですが、800万人減と、依然としてかなりの水準が見込まれています。1億5千万人を超えていた雇用者数は今や1億3100万人程度。ここからさらに6%超にあたる800万人減ですので、状況は依然深刻といえます。

失業率は19.5%への大幅な上昇が見込まれています。3月から4月にかけては雇用者数の減少に加えて、労働力人口自体も643.2万人減と大きく減りました。これは雇用市場の深刻な状況や、ロックダウンでステイホームの動きが広がっていることを受けて、高齢者層のリタイアメントや、専業主婦(主夫)への動きなどが強まり、雇用統計の元となる労働者としてもカウントされなくなるという状況です。失業率の計算は労働力人口が元となりますので、一般的には労働力人口の減少は失業率の改善要因ですが、その状況を受けても20%に近い水準は、こちらもインパクトがありそうです。

その後のロックダウン緩和での雇用市場のゆっくりとした改善が見込まれているだけに、予想通りの数字であれば影響は限定的とみられますが、そもそも前代未聞の事態ということもあり、予想自体が大きくぶれており、波乱含み。1000万の大台を超えるような雇用者の減少や、20%を超えるような失業率の悪化が見られると、リスク警戒の動きを誘う可能性がありそうです。

MINKABU PRESS 山岡和雅

このニュースはみんかぶ(FX/為替)から転載しています。

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