ガバナンスと価値創造のあり方~もう1歩突っ込むには

著者:鈴木 行生
投稿:2020/01/14 15:32

・11月にWICI(World Intellectual Capital Initiative:世界知的資本推進構想)のシンポジウムが催された。テーマは「見えない資産の時代におけるガバナンスと価値創造のあり方~これからの統合報告」であった。印象に残った論点をいくつか取り上げてみたい。

・まず「ガバナンス総選挙」が面白かった。参加者に、ガバナンスのネーミングを考えてもらうというゲームである。事前の申込者に、ガバナンスとは何かを自由に記入してもらった。WICIのシンポジウムに来る人々だから、もともと意識は高い。

・ガバナンス(コーポレートガバナンス:CG)は、企業統治と和訳され、使われていることは誰でも知っている。その人たちに自分の言葉でネーミングすれば、要は何のことか、と聞いたのである。

・WICIの事務局で、多様な表現を4つにまとめた。その候補は、①指揮監督システム、②舵取り、③羽交い絞めと後押し、時々伴走、④企業協奏、であった。

・指揮監督システムとは、長期的な価値向上を目的として、会社が向かう方向を指し示すとともに、会社組織の規律を維持するという意味である。

・舵取りとは、目的、ゴールを定め、そこに向かえるように、経営をデザインし、実践し、常にチェックし、修正しながら進むという意味を込めている。

・「羽交い絞めと後押し、時々伴走」は、会社がステークホルダーとエンゲージ(対話)しながら、社会に価値を生み出すことで、企業価値を正しく高め、それを次の社会価値を生み出すことにつなげる仕組みを担保する。

・企業協奏とは、会社が透明・公正かつ迅速・果敢な意思決定を行う上で、会社の各部門やグループ全体がステークホルダーと共に、美しいハーモニー(共創)を奏でる行いであると考える。

・この4つは、ガバナンスの意味するところを、参加者がどのように受けとめるか、という視点で要約したものである。したがって、重複した意味づけも含んでいる。

・筆者は、指揮監督システムに投票した。みなさんは、いかがでしょうか。当日シンポジウムに参加して投票した人は161人、その結果は、1位:舵取り(投票率33%)、2位:企業協奏(同30%)、3位:指揮監督(同21%)、4位:羽交い絞め(同17%)であった。この比率は、私にとって意外であった。

・もっとどれかに集中するかと思ったら、4つともそれぞれ票を得ている。ということは、ガバナンスと聴いて、あるいは、ガバナンスという言葉を使う時、その人にとっての意味合いはそれぞれで、結構ばらついている。

・ガバナンスについて話し合う時には、それとなく、どんな意味を込めているのかを、互いに確認した方がよい。そうでないと、会話や議論の途中で、かみ合わないことが起きてこよう。

・まして、社外取締役として企業のガバナンスを担う時には、その企業のカルチャーを踏まえて、ガバナンスの仕組みを理解し、行動していかないと、ガバナンスの効かせ方がうまくいかないことになりかねない。

・では、コーポレートガバナンス(CG)をよくしたら、企業価値は上がるのか。成長力や収益力が高まって、株価は上がるのか。ここがいつも議論になる。

・一般論としてはそうなるはずであるが、そんなうまい話をあまり見たり聞いたりしたことがない。攻めのガバナンスの成功例よりも、CGが不十分で不祥事を起こしてしまった企業の方が目立っている。

・CGは、コーポレートガバナンスコードの見直しを踏まえて、各企業において形は整ってきた。それでも成果が十分みえていない。そこで、形式から実質へ、という中身の実践が問われている。

・CGは、企業が変な方向に暴走するのを食い止めるために役立つ。確かに、暴走を止めることは望ましい。もし変な方向に行くのを抑えてたとしても、外部からみると、その意思決定がみえないことも多い。都合の悪いことは押しとどめたとして、それを公表することはあまりない。

・では、CGを整えた企業から、目の覚めるような成長戦略が打ち出されているだろうか。CGは、価値創造を行うビジネスモデルの重要な枠組みであるが、成長戦略をどう練っていくかは、執行サイドの力量にかなり依存する。社長1人だけではないが、社長の経営能力が本当に十分かが問われる。

・そこで、CGが社長の力量を選択するところまで入り込めれば素晴らしいが、日本の多くの企業では、まだそこまでいっていない。

・ビジネスモデルはどこまで進化させられるのか。現在の価値創造の仕組みであるBM1を、将来のありたい価値創造に向けて、BM2を作り上げていく。そのために、足らないキャピタル(人的資本、知的資本、組織資本、財務資本など)をいかに仕込んでいくのか。

・取り組んでいる企業は多い。もっと大胆に、もっと速く、走ってほしいと思う。そこにガバナンスを効かせてほしい。確かに、ガバナンス改革が成果に結び付くには少し時間がかかる。よって、じっくり評価する必要があろう。一方で、形だけで実質が伴っていないとすれば、いくら待っても効果は出てこない。

・企業評価に当たっては、CGがBM2の創出に向けて、本当に機能しているか。ここを定性的に深く分析していく必要がある。そのためのエンゲージメント(対話)が一段と重要になろう。

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配信元: みんかぶマガジン
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