とれんど捕物帳 リスク選好の中、やや不思議な現象も
今週のドル円は109円台を回復し200日線を上回って終えている。米中貿易協議への期待感が急速に高まり、リスク選好の動きがドル円の上げを支援した。ドル高の反応と円安がドル円を上に押し上げた。
ただ、やや不思議な現象も見られている。10月まではリスク回避のドル買いだったはず。それが今度はリスク選好のドル買いが見られている。どっちにしてもドル買いに反応している。恐らく、先週のFOMCと米雇用統計が市場のセンチメントに影響しているものと思われる。FRBは利下げを一旦中断したい意向を強く滲ませて来た。今週伝わっていたFOMCメンバーの発言からも、その意向は確かなものであろう。
それにもかかわらず、米株式市場は最高値を更新している。株式市場の場合、米中貿易協議の進展期待はもちろんだが、米企業決算が意外に底堅かったことが下支えしたものと思われる。S&P500採用銘柄で今回決算を発表している企業のうち約75%が予想を上回る利益を計上している。もっとも、2016年以来の減益決算になるとの見方から、事前に予想自体が下方修正されていたことも、それに繋がっている面もあるであろう。
いずれにしろ、それら複合的な要因がドル相場をサポートしたものと考えている。先週も言及したが、FRBは利下げを一旦中断したい意向を強く滲ませたものの、市場フレンドリーになっている面もあり、雲行きが怪しくなれば、直ぐにサポートに動くとの思惑も投資家心理に影響しているのかもしれない。
それにしても俯瞰で見ると、経済面ではトランプ大統領の思惑通りに事は動いているような印象を持っている。ツイッターでパウエルFRB議長を直接名指しし口撃するなど前代未聞の大統領ではあるが、大統領の思惑通りに利下げは実施されている。なお且つ、犠牲を払いながらも中国を攻撃し、きっちり取る物を取っている。それにもかかわらず、米株式市場を最高値に押し上げ、雇用も力強く、個人消費も堅調だ。破天荒である種、下品と見ているエスタブリッシュも少なくないかもしれないが、景気後退の足音が聞こえつつも、きっちり結果を出しており、経済政策の面では意外に希代の大統領なのかもしれない。
さて来週だが、米経済指標では消費者物価指数(CPI)や小売売上高などが予定されているが、引き続き米中貿易協議の行方が相場の焦点となろう。今週の段階では米中首脳会談は場所や条件の面で折り合わず、12月にずれ込みそうな気配だが、両国は段階的な関税撤廃で合意との中国側からの発表も出ている。ただ、トランプ大統領はいまのところ否定。米政権内で反発も大きいようだ。
中国側はトランプ政権が9月に導入した1250億ドルの中国製品への関税の即時撤廃を求めていたようだが、“約束をするのと守るのは別”という中国独特の雰囲気を考慮すれば、米国側も慎重になっているのであろう。ただ、第1段階の部分的合意で、ひとまず落とし処は見つかったのかもしれない。
そのほか、13、14日にパウエルFRB議長が議会証言を行う。先週のFOMCでは、一旦追加利下げを見送りたい意向を強調しており、議長もそれを踏襲するものと思われる。ただ、既に市場は十分に織り込んでおり、CMEのFEDウォッチでは、12月利下げの確率は5%しかない。少なくとも、ドル安方向へのサプライズはないものと思われ、ドル円への影響は限定的と思われる。
ドル円は200日線を回復してきたが、心理的節目の110円を試す気配まではまだ出ていない。ただ、下値は堅そうで、引き続きリバウンド相場が続くことを期待したい。来週のドル円の予想レンジとしては、108.50~110.50円を想定。スタンスは「やや強気」を継続。
()は前週
◆ドル円(USD/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑(↑↑)
◆ユーロ円(EUR/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑(↑↑↑)
◆ポンド円(GBP/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑(↑↑↑)
◆豪ドル円(AUD/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑(↑↑)
◆ユーロドル(EUR/USD)
中期 上げトレンド継続
短期 →(↑↑↑)
◆ポンドドル(GBP/USD)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑(↑↑↑)
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
ただ、やや不思議な現象も見られている。10月まではリスク回避のドル買いだったはず。それが今度はリスク選好のドル買いが見られている。どっちにしてもドル買いに反応している。恐らく、先週のFOMCと米雇用統計が市場のセンチメントに影響しているものと思われる。FRBは利下げを一旦中断したい意向を強く滲ませて来た。今週伝わっていたFOMCメンバーの発言からも、その意向は確かなものであろう。
それにもかかわらず、米株式市場は最高値を更新している。株式市場の場合、米中貿易協議の進展期待はもちろんだが、米企業決算が意外に底堅かったことが下支えしたものと思われる。S&P500採用銘柄で今回決算を発表している企業のうち約75%が予想を上回る利益を計上している。もっとも、2016年以来の減益決算になるとの見方から、事前に予想自体が下方修正されていたことも、それに繋がっている面もあるであろう。
いずれにしろ、それら複合的な要因がドル相場をサポートしたものと考えている。先週も言及したが、FRBは利下げを一旦中断したい意向を強く滲ませたものの、市場フレンドリーになっている面もあり、雲行きが怪しくなれば、直ぐにサポートに動くとの思惑も投資家心理に影響しているのかもしれない。
それにしても俯瞰で見ると、経済面ではトランプ大統領の思惑通りに事は動いているような印象を持っている。ツイッターでパウエルFRB議長を直接名指しし口撃するなど前代未聞の大統領ではあるが、大統領の思惑通りに利下げは実施されている。なお且つ、犠牲を払いながらも中国を攻撃し、きっちり取る物を取っている。それにもかかわらず、米株式市場を最高値に押し上げ、雇用も力強く、個人消費も堅調だ。破天荒である種、下品と見ているエスタブリッシュも少なくないかもしれないが、景気後退の足音が聞こえつつも、きっちり結果を出しており、経済政策の面では意外に希代の大統領なのかもしれない。
さて来週だが、米経済指標では消費者物価指数(CPI)や小売売上高などが予定されているが、引き続き米中貿易協議の行方が相場の焦点となろう。今週の段階では米中首脳会談は場所や条件の面で折り合わず、12月にずれ込みそうな気配だが、両国は段階的な関税撤廃で合意との中国側からの発表も出ている。ただ、トランプ大統領はいまのところ否定。米政権内で反発も大きいようだ。
中国側はトランプ政権が9月に導入した1250億ドルの中国製品への関税の即時撤廃を求めていたようだが、“約束をするのと守るのは別”という中国独特の雰囲気を考慮すれば、米国側も慎重になっているのであろう。ただ、第1段階の部分的合意で、ひとまず落とし処は見つかったのかもしれない。
そのほか、13、14日にパウエルFRB議長が議会証言を行う。先週のFOMCでは、一旦追加利下げを見送りたい意向を強調しており、議長もそれを踏襲するものと思われる。ただ、既に市場は十分に織り込んでおり、CMEのFEDウォッチでは、12月利下げの確率は5%しかない。少なくとも、ドル安方向へのサプライズはないものと思われ、ドル円への影響は限定的と思われる。
ドル円は200日線を回復してきたが、心理的節目の110円を試す気配まではまだ出ていない。ただ、下値は堅そうで、引き続きリバウンド相場が続くことを期待したい。来週のドル円の予想レンジとしては、108.50~110.50円を想定。スタンスは「やや強気」を継続。
()は前週
◆ドル円(USD/JPY)
中期 上げトレンド継続
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◆ユーロ円(EUR/JPY)
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MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
このニュースはみんかぶ(FX/為替)から転載しています。
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