明日の株式相場戦略=顔認証、半導体関連に妙味株あり
きょう(10日)の東京市場では日経平均が73円高で6日続伸と上値追い基調を継続した。昨年11月下旬から12月初旬に7連騰の記録があるが、それ以来ということになる。しかし、証券会社の現場の声を聞く限り「新たな実需買いが入ってきた感触はない」と口を揃える。ここまで6営業日で770円あまり上昇したが、その実態は何か。投資家の歓喜の声が聞こえない静かなる上昇相場。レンジは切り上がったが、売り方が作っている相場の領域は出ていない。四つ相撲で買い方が売り方を投げ飛ばすような、踏み上げ相場とはニュアンスが違う。日米欧の中央銀行が揃って緩和の方向に舵を切ろうとしているところで、空売り筋がとりあえずポジションをたたんでいる、その動きが反映されている。
ご存知の方も多いと思うが、有名な相場格言である「セル・イン・メイ(5月に売れ)」には続きがあって、「9月の第2土曜日を過ぎるまで戻ってくるな」で完結する。つまり、第3月曜日に戻って来いというご託宣であるが、それを日本のマーケットに当てはめた場合、9月のメジャーSQ(13日)通過後に参戦すべしということになる。強気が闊歩するよりも懐疑の念にとらわれた地合いの方が上昇相場を形成しやすい。9月相場はここまで“懐疑の森”を抜けてきたが、各国中央銀行の金融会合通過後にどうなるかが最大の関心事だ。10月は米中協議、中国の建国70周年、ブレグジット、国内では消費税引き上げが待つ。市場では「10月決戦」という言葉もちらほら聞かれるなか、トランプ米大統領を横目に神経質な相場は続く。東京市場では、これまで積み上げてはご破算にするというシーンが何回も繰り返されてきただけに用心は必要となる。
差し当たっては、9月の12日のECB理事会。マイナス金利の深掘りはともかく、QE(量的緩和)の再開があるのかどうか。10月で任期を終えるドラギ総裁が道筋をつけて辞めるのか、それともラガルド新総裁が新たなレールを引く形でQEを行うのかは予測しにくいが、「ドイツの景気の現状を考えると遅かれ早かれQEの再開は必然となる」(国内証券ストラテジスト)という指摘がある。であれば、早い方がいいというのはマーケットの本音だろう。一方、18日のFOMCでは25ベーシスポイントの利下げはほぼ確実視されているが、年内あと1回は利下げのトリガーが引かれると市場は見ている。これが、トランプ砲の影響で更にもう1回というコンセンサスが生まれれば、良い悪いは別としてマーケットは好感することになる。
あとは、19日の日銀金融政策決定会合。黒田総裁はマイナス金利深掘りも辞さずの姿勢を示すが、仮にここに踏み込んでも株式市場は英断として称えるような形とはなりそうもない。もっと分かりやすく、イールドカーブ・コントロールのような金利誘導ではなく、国債買い入れのテーパリングを取りやめ、更にETF買い入れ強化のような政策を明示すれば相場は上げ潮に変わる。
個別ではウィルグループ<6089.T>が中長期波動の分水嶺である75日移動平均線超えにチャレンジする形。5日・25日移動平均線のゴールデンクロスが目前となっていることもあり、要注目。人手不足の解消は企業の死活問題であり、コスト増加はある程度許容せざるを得ない。「同一労働同一賃金」による派遣単価の上昇が、人材サービス会社にとって収益へのフォローウィンドとして改めて意識されている。同社は家電量販店向けスマートフォン販売支援やコールセンター向け人材派遣などが主力。海外に向けた布石も積極的で足もとの業績も好調に推移、人材サービス業界では勝ち組に位置している。PERも割安で、いったん人気化すれば上値余地は大きそうだ。
顔認証関連では直近(前週木曜日)に取り上げたネクストウェア<4814.T>が動意含みとなってきた。顔認証は人工知能(AI)関連の切り口にも乗る成長分野であり、同社株は200円台に位置する株価そのものが魅力。テクニカル的にはウィルグループと似ていて、5日・25日移動平均線のゴールデンクロスとセットで株価の75日線クリアを意識する局面に入っている。
このほか、ここ動意する銘柄が相次いでいる半導体関連の中低位株から、その75日線を抜けてきた日本電子材料<6855.T>はどうか。同社は半導体検査用プローブカードを手掛けるが、いうまでもなく今目に見えている業績は悪い。19年4~6月期は営業利益段階で75%減益だった。しかし全般論として、半導体関連は、市況の底入れが近いとの思惑から足もとの業績については不問とするムードが今のマーケットにはある。19年4~6月期営業利益が前年同期比71%減だった栄電子<7567.T>が値動きは荒いものの強烈な上げ足を披露しているのは、そういったコンセンサスが底流にある。日本電子材料は有配企業にも関わらずPBR0.4倍台と解散価値の半値以下に位置していることも株高への思惑となる。
日程面では、あすは内閣改造と自民党役員人事。7~9月の法人企業景気予測調査。海外では8月の米PPIが発表される。(中村潤一)
出所:minkabuPRESS
ご存知の方も多いと思うが、有名な相場格言である「セル・イン・メイ(5月に売れ)」には続きがあって、「9月の第2土曜日を過ぎるまで戻ってくるな」で完結する。つまり、第3月曜日に戻って来いというご託宣であるが、それを日本のマーケットに当てはめた場合、9月のメジャーSQ(13日)通過後に参戦すべしということになる。強気が闊歩するよりも懐疑の念にとらわれた地合いの方が上昇相場を形成しやすい。9月相場はここまで“懐疑の森”を抜けてきたが、各国中央銀行の金融会合通過後にどうなるかが最大の関心事だ。10月は米中協議、中国の建国70周年、ブレグジット、国内では消費税引き上げが待つ。市場では「10月決戦」という言葉もちらほら聞かれるなか、トランプ米大統領を横目に神経質な相場は続く。東京市場では、これまで積み上げてはご破算にするというシーンが何回も繰り返されてきただけに用心は必要となる。
差し当たっては、9月の12日のECB理事会。マイナス金利の深掘りはともかく、QE(量的緩和)の再開があるのかどうか。10月で任期を終えるドラギ総裁が道筋をつけて辞めるのか、それともラガルド新総裁が新たなレールを引く形でQEを行うのかは予測しにくいが、「ドイツの景気の現状を考えると遅かれ早かれQEの再開は必然となる」(国内証券ストラテジスト)という指摘がある。であれば、早い方がいいというのはマーケットの本音だろう。一方、18日のFOMCでは25ベーシスポイントの利下げはほぼ確実視されているが、年内あと1回は利下げのトリガーが引かれると市場は見ている。これが、トランプ砲の影響で更にもう1回というコンセンサスが生まれれば、良い悪いは別としてマーケットは好感することになる。
あとは、19日の日銀金融政策決定会合。黒田総裁はマイナス金利深掘りも辞さずの姿勢を示すが、仮にここに踏み込んでも株式市場は英断として称えるような形とはなりそうもない。もっと分かりやすく、イールドカーブ・コントロールのような金利誘導ではなく、国債買い入れのテーパリングを取りやめ、更にETF買い入れ強化のような政策を明示すれば相場は上げ潮に変わる。
個別ではウィルグループ<6089.T>が中長期波動の分水嶺である75日移動平均線超えにチャレンジする形。5日・25日移動平均線のゴールデンクロスが目前となっていることもあり、要注目。人手不足の解消は企業の死活問題であり、コスト増加はある程度許容せざるを得ない。「同一労働同一賃金」による派遣単価の上昇が、人材サービス会社にとって収益へのフォローウィンドとして改めて意識されている。同社は家電量販店向けスマートフォン販売支援やコールセンター向け人材派遣などが主力。海外に向けた布石も積極的で足もとの業績も好調に推移、人材サービス業界では勝ち組に位置している。PERも割安で、いったん人気化すれば上値余地は大きそうだ。
顔認証関連では直近(前週木曜日)に取り上げたネクストウェア<4814.T>が動意含みとなってきた。顔認証は人工知能(AI)関連の切り口にも乗る成長分野であり、同社株は200円台に位置する株価そのものが魅力。テクニカル的にはウィルグループと似ていて、5日・25日移動平均線のゴールデンクロスとセットで株価の75日線クリアを意識する局面に入っている。
このほか、ここ動意する銘柄が相次いでいる半導体関連の中低位株から、その75日線を抜けてきた日本電子材料<6855.T>はどうか。同社は半導体検査用プローブカードを手掛けるが、いうまでもなく今目に見えている業績は悪い。19年4~6月期は営業利益段階で75%減益だった。しかし全般論として、半導体関連は、市況の底入れが近いとの思惑から足もとの業績については不問とするムードが今のマーケットにはある。19年4~6月期営業利益が前年同期比71%減だった栄電子<7567.T>が値動きは荒いものの強烈な上げ足を披露しているのは、そういったコンセンサスが底流にある。日本電子材料は有配企業にも関わらずPBR0.4倍台と解散価値の半値以下に位置していることも株高への思惑となる。
日程面では、あすは内閣改造と自民党役員人事。7~9月の法人企業景気予測調査。海外では8月の米PPIが発表される。(中村潤一)
出所:minkabuPRESS
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