NYの視点:パウエルFRB議長は数回の追加利下げにオープンである姿勢明確化か=ジャクソンホール

配信元:フィスコ
投稿:2019/08/20 07:37
中国が金利システムの見直しを発表し、ドイツが万が一、景気後退が深刻化した場合に財政措置に踏み切る計画を発表する中、米国のトランプ大統領は「連邦準備制度理事会(FRB)は短期間の間に、少なくとも100ベーシスポイントの利下げ、量的緩和(QE)を再開すべき。そうなれば経済はより改善、世界経済も速やかに強まる」と、引き続きFRBに強く利下げを促した。

一方で、ほぼ10年ぶりとなる利下げを決定した7月の連邦公開市場委員会(FOMC)では2名のメンバーが経済が依然健全で利下げの必要性はないとして、決定に反対、政策金利の据え置きを主張した。7月FOMCで利下げに反対したメンバーのひとり、ボストン連銀のローゼングレン総裁は19日インタビューに応え、現在の金利水準がすでに緩和的であり、現状では利下げの必要性は見当たらないとした。さらに、追加利下げには、経済の成長が減速している明確な証拠が必要になるとした。最新の雇用統計、小売売上など重要指標は依然、米国経済の強さを確認する内容となっている。このため、ローゼングレン総裁が次回会合でも反対票に投じる可能性はいまのところ強い。クドロー国家経済会議(NEC)委員長も週末に行われたTVインタビューで、「リセッションは差し迫っていない」ことを認めた。

パウエル議長は今週23日にジャクソンホールでの演説で、貿易政策の不透明性、世界経済の減速が米国経済の成長を抑制するとの見方から、必要とあれば数回にわたる利下げ実施にもオープンである姿勢を示すことが期待されている。7月FOMCではFRBが市場の予想通り利下げに踏み切ったことは好感されたものの、利下げサイクルの始まりでなく、「継続している軌道の中間的な修正」との議長の説明を受けて、利下げは「1度で打ち止め」との懸念が広がり、株安に拍車をかけた。

ジャクソンホールの演説では景気後退リスクは見られないものの、1回の利下げで終了することはなく、必要とあれば将来の数回にわたる利下げの選択肢もあることを明確に示す必要があると見られている。さもなければ、再び株安、リスクオフの展開になる危険がある。

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配信元: フィスコ