日本調剤 Research Memo(3):計画対比では売上高・利益ともに未達も、前期比では増収を達成

配信元:フィスコ
投稿:2019/06/10 15:03
日本調剤<3341>の業績の動向

2.調剤薬局事業の動向
調剤薬局事業は、売上高208,622百万円(前期比1.7%増)、営業利益8,707百万円(同29.8%減)と微増収・大幅減益となった。期初計画との比較では売上高は2.1%(4,511百万円)、営業利益は7.7%(729百万円)、それぞれ未達だった。

2018年4月の調剤報酬改定では、特定の医療機関からの処方箋集中率が高い、いわゆる門前薬局にとってことさら厳しい形での調剤基本料引き下げが行われた。また新設された地域支援体制加算についてはその算定要件が厳しく、調剤基本料の低下を補うことが容易ではない状況にあった。

こうしたなかで同社は、処方箋応需枚数が14,192千枚と前期比3.3%の増加を実現し、改定の影響を受けて処方箋単価が14,458円へと同1.9%低下したことのマイナス影響を吸収して売上高の前期比増収を確保した。直接的な増収要因分析はこのとおりだが、そもそものベースとして、同社が、“堅実”を旨とする店舗の新規出店のスタンスと、国が掲げる『患者のための薬局ビジョン』に沿った、すなわち将来性のある店づくりの2つを徹底したことが大きく貢献していると弊社では考えている。この2つは相互に作用しあっていて完全には分ち難いが、分析の都合上それぞれの項目ごとに詳述すると以下のようになる。

(1) 店舗異動の状況
2019年3月期は32店舗を新規出店する一方、19店舗を閉店し、期末の店舗数は598店(物販2店舗を含む)となった。新規出店を業態別に分けると門前型16店舗、ハイブリッド型16店舗となっている。新規出店の原因別の分類では自力出店が26店舗、M&A6店舗となっており、M&Aに頼らない成長戦略を徹底していることがうかがえる。

同社は店づくり(それは出店戦略にも通じるが)において、1店舗当たり売上高を重要な指標においている。2019年3月期は352百万円となり、従来からの高い水準を維持した。

店舗について詳細に見ると、同社は期初計画では2019年3月期に前期末比50店舗純増の期末635店舗体制を計画していた。結果は前述のように598店舗で、この出店計画の未達こそが売上高の計画未達の主因のようにも見える。しかしながら店舗数ありきで出店を進めた場合、同社が追求する店づくりと、その結果として高レベルの1店舗当たり売上高を確保できたかはわからない。計画比未達をネガティブに捉えるのではなく、同社が出店に際しての社内基準を堅持したことと、そうした厳しい環境の中でも増収を確保したことを素直に評価すべきと弊社では考えている。

(2) 処方箋応需枚数と処方箋単価の状況
前述のように2019年3月期は処方箋応需枚数が14,192千枚(前期比3.3%増)、処方箋単価が14,458円(同1.9%減)となった。

処方箋をめぐる状況を出店期別に見ると、既存店の処方箋単価が前期比99.5%と、ほぼ改定影響を跳ね返して前期並みとなっている点が注目される。同社は『患者のための薬局ビジョン』に沿った店づくりやジェネリック医薬品の使用促進、1店舗当たり売上高の高さが象徴する高効率の店づくり、といった施策に取り組んできたが、それが結果的に薬価・調剤報酬改定の影響を最小限に抑制し処方箋単価の低下を最小限にとどめることにつながったと弊社ではみている。

利益面では営業利益が前期比約37億円の減益となった。その要因分析は、調剤報酬改定による技術料単価の低下(約12億円)、人件費を始めとする経費の増加(約25億円)となっている。期初計画との比較では、約7億円の未達となった。処方箋応需枚数の未達の影響(約20億円)を技術料単価の上振れ(約7億円)と経費節減等(約6億円)で吸収しきれなったという構図だ。処方箋応需枚数の未達は直接的には出店数が計画を下回ったことが要因だが、前述のように無理な出店は処方箋単価に影響を与えるため単純な話ではなく、むしろ厳格な出店基準を堅持している点をポジティブに評価すべきと弊社では考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)


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